身柄拘束中に在留期間が満了するとき ご家族が今から進められる準備
2026/09/09
「夫が逮捕されたまま、在留期間の満了日が来てしまう」「息子の在留カードの期限が翌月なのに、面会の予約さえ取れない」。こうしたご相談を、日本にお住まいのご家族からも、中国のご実家からもお受けします。刑事手続と在留の手続は、別々の役所が別々の法律で動かしています。一方が止まっている間に、もう一方の期限だけが静かに進む。本稿では、身柄拘束中に在留期間が満了する場面で何が起きるのか、ご家族が今から進められる準備を順に整理します。
本記事の要点
- 在留期間更新許可申請(入管法21条)は原則としてご本人の出頭を前提とし、勾留中や受刑中は事実上申請が難しくなります。
- 在留期間を経過したまま日本に残ると、不法残留(入管法24条4号ロ)に当たり得ます。
- 刑事手続の終了後、収容令書(入管法39条)による収容を経て退去強制手続に移る場合があります。
- 在留カードと旅券の所在確認、中国側の公証書の取寄せ、身元引受書の用意が急がれます。
- 刑事段階で不起訴処分を得られるかどうかが、その後の在留の見通しを大きく左右します。
刑事手続の流れと、在留期間との関係
逮捕から起訴・不起訴の判断まで、身柄拘束の期間は短くありません。逮捕後、警察の手持ち時間は48時間以内で、検察官は身柄を受け取ってからさらに24時間以内に、勾留を請求するかどうかを判断します(刑事訴訟法203条、205条)。裁判官が勾留を認めれば原則10日、やむを得ない事由があれば延長によりさらに最大10日となります(同法207条、208条)。逮捕から判決まで数か月を要する事案は珍しくなく、その間に在留期間の満了日が来る事態は例外ではありません。
在留期間の更新は、身柄拘束中には事実上難しい
在留期間更新許可申請(入管法21条)は、地方出入国在留管理官署に対して行う手続で、原則としてご本人が出頭して申請することが前提です。勾留中・受刑中のご本人は窓口に足を運べません。一定の場合には受入機関の職員や届出済みの行政書士等が申請を取り次ぐ仕組みもありますが、ご本人の意思と必要書類がそろっていることが前提であり、身柄拘束中は意思の確認も署名の取得も容易ではありません。
在留期間を過ぎるとどうなるか
満了日を過ぎて日本に残っている状態は、不法残留に当たり得ます(入管法24条4号ロ)。刑事施設や留置施設にいることは、期間の進行を止めてはくれません。ご本人が自らの意思で出国できない状況でも、期間の計算はそのまま進みます。また、在留資格を失えば在留カードの効力も問題となり、住居地の届出(入管法19条の9等)といった義務も果たせなくなります。この不履行が後に不利に評価されることを避けるため、弁護人から入管に事情を説明しておく意味があります。
刑事手続の終了後、入管の手続へ引き継がれる流れ
不起訴で釈放される場合も、刑期を終えて出所する場合も、在留資格を失っている方については、入国警備官による違反調査が行われ、収容令書(入管法39条)が発付されることがあります。刑事施設の門を出たところで身柄が引き継がれ、そのまま入管の収容施設へ移されるという流れです。その後は、入国審査官の審査、特別審理官の口頭審理、法務大臣への異議の申出を経て、退去強制令書の発付に至るか、在留特別許可が与えられるかが決まります(入管法24条以下)。
ご家族が今から進められる準備
- 委任状の取得。ご本人の署名がある委任状は、書類の取寄せや手続の代行の前提になります。
- 在留カードと旅券の所在確認。押収されているのか、ご自宅か勤務先にあるのかを確かめ、旅券の有効期間も見ておきます。
- 勤務先・学校との連絡。雇用が続くのか、復職の可能性があるのかは、在留特別許可の判断にも影響します。
- 住居の維持。退去に至ると釈放後の生活基盤が失われ、生活の実態を示す資料も乏しくなります。
- 中国側の書類の取寄せ。結婚公証書、出生公証書、戸口簿の写しなどは取得と翻訳に時間を要します。
- 身元引受書の準備。日本人配偶者や正規在留の親族など、監督と支援を約束できる方にお願いします。
外国人事件特有のリスク
刑事事件の結論は、そのまま在留の結論に跳ね返ります。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由と定めますが、全部執行猶予が付された場合はここから除かれます。他方、同条4号チは、薬物に関する罪、旅券法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反など一定の罪について、刑の重さを問わず退去強制事由となり得る構造です。罪名によっては執行猶予でも退去強制の対象となりますので、当該事件がどの号に関わるのかの特定が出発点です。
なお、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた入管実務について、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を提起し、現在も係争中です。確立した解釈ではなく、今後の議論に委ねられた論点として申し上げます。
不起訴処分の獲得を最優先の目標に置く理由
在留を守るという観点からは、執行猶予判決の獲得を最終目標に置くべきではありません。多くの罪名では執行猶予でも退去強制の対象となり得るからです。前科の付かない不起訴処分を得られれば、素行の評価は大きく変わります。そこで当事務所は、起訴・不起訴の判断前の段階に弁護活動の重心を置き、被害者対応、供述内容の整理、証拠関係の検討、検察官への意見書提出を集中的に行います。
初動対応で押さえておきたい3つのポイント
- 黙秘権。憲法38条1項は、自己に不利益な供述を強要されないことを定めています。話すかどうかは弁護人と相談してから決めて構いません。
- 早期の弁護人選任。勾留の要否が判断されるまでの時間は短く、この間の活動が結論を左右します。
- 通訳の質。捜査機関が手配する通訳とは別に、ご本人のために動く通訳を確保できるかで供述の正確さは変わります。当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が常駐しています。
当事務所のご案内と解決事例
刑事弁護と入管手続は、本来ひとつの図面の上で設計されるべきものです。当事務所では勾留の段階から在留期間の満了日を確認し、更新申請の可否や釈放時に想定される収容の有無を整理したうえで、必要に応じて入管との連絡・調整を並行して進めます。松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。刑事手続終了後の在留資格については提携の行政書士と連携します。
D-1 在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された方の事案です。婚姻および認知の手続を実現させたうえで、入管当局の過去の許可事例を分析し、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
D-2 冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機にあった女性の事案です。退去強制事由に故意・過失は不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。
B-2 特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案です。取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得しました。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
結語
面会もままならないまま期限だけが迫る時間は、ご家族にとってたいへん心細いものと思います。けれども、その間にできることは確かにあります。書類を集め、住まいを守り、受入れの体制を整えておくことは、後の入管の判断において意味を持ちます。どこから手をつければよいか分からない段階で構いませんので、お早めにご相談ください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):羁押期间在留期间届满时 家属从现在起可以推进的准备
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