「示談さえすれば必ず不起訴になる」という誤解|示談の効果と限界を正しく理解する
2026/09/07
外国人の刑事事件のご相談で、しばしば伺うのが「お金を払って示談すれば、それで終わりですよね」という言葉です。示談が極めて重要であることは間違いありません。しかし、示談が万能というわけではなく、罪名によっては示談が成立しても起訴される類型が確かに存在します。この誤解を放置したまま手続が進むと、在留資格を失う場面に直面しかねません。誤解の構造を整理してまいります。
本記事の要点
- 示談は、起訴・不起訴の判断における有力な事情の一つであり、決定的な一事ではありません。
- 被害者が特定の個人である犯罪(暴行、傷害、窃盗、器物損壊など)では、示談の効果が大きく働きます。
- 被害者が個人ではない犯罪(薬物事犯、入管法違反、公文書偽造、無免許運転など)では、示談という手段自体が想定されていません。
- 示談が成立しても起訴された場合、在留への影響は執行猶予の有無だけでは測れません。
保護法益から考える
なぜ罪名によって示談の効き方が違うのか。鍵になるのは、その犯罪が何を守ろうとしているのか、すなわち保護法益です。傷害罪が守っているのは被害者個人の身体であり、その被害者が処罰を望まないのであれば、処罰の必要性は大きく減ります。一方、覚醒剤取締法違反が守っているのは、個々人ではなく社会全体の保健衛生の秩序です。入管法違反が守っているのは出入国管理の秩序です。これらの類型では、和解すべき相手方がそもそも存在しません。示談がないから不利なのではなく、示談という枠組みが働く場面ではないのです。
この視点は、在留資格の場面でも同じように働きます。入管の審査において素行が問われるとき、個人的法益を侵害した事案で被害弁償と宥恕が整っている場合と、社会的法益を侵害した事案とでは、説明の組み立て方が変わります。前者では反社会性が個別に解消されたと説明する余地が広く、後者ではその説明が届きにくい。この違いを理解しないまま、同じ資料を揃えて審査に臨んでも、期待した評価は得られません。
示談が成立しても起訴されることがある理由
被害者が個人である犯罪でも、被害が重大な場合、常習性がある場合、組織的な関与がうかがわれる場合には、示談があっても起訴されることがあります。特殊詐欺のように多数の被害者がいる事案では、一部の被害者と示談しても全体の評価は変わりにくいという実情もあります。したがって、示談交渉は、それ自体を目的とするのではなく、不起訴に向けた主張全体の一部として位置づけるべきものです。
外国人の方にとっての帰結
起訴されて有罪となった場合、1年を超える拘禁刑であれば入管法24条4号リの問題が生じます。薬物関係であれば刑の重さを問わず同号チの問題が生じます。「示談したから執行猶予がつくだろう、執行猶予なら日本に残れるだろう」という二段構えの期待は、いずれの段階でも崩れる可能性を含んでいます。だからこそ、当事務所は起訴前の不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えます。
当事務所について
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、被害者側の代理人としても、加害者側の弁護人としても、示談交渉を数多く扱ってまいりました。被害者側では、ストーカー被害の事案で1,000万円の解決金を獲得した事例、取り込み詐欺の被害事案で7,500万円の解決金を得た事例があります。被害者の方が何を求め、何をもって納得されるのかを実際に知っていることは、加害者側で交渉に臨む際の強みになります。また、特殊詐欺の受け子として複数回の再逮捕を受けた事案で、全件不起訴を得た事例もあります。
松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。示談交渉の場面でも、通訳を通じてご本人の言葉を正確に相手方へ届けることを重視しています。
なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
結語
示談は強力な手段ですが、どの罪名でも同じように効くわけではありません。ご自身の事件がどの類型に属するのかを見極めるところから、方針は始まります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):「只要和解就一定不起诉」这一误解|正确理解和解的效力与界限
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