舟渡国際法律事務所

「日本の裁判はどうせ有罪になるから争っても無駄」は本当か|無罪判決・一部無罪・訴因の縮小と、争うことが在留に持つ意味

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「日本の裁判はどうせ有罪になるから争っても無駄」は本当か|無罪判決・一部無罪・訴因の縮小と、争うことが在留に持つ意味

「日本の裁判はどうせ有罪になるから争っても無駄」は本当か|無罪判決・一部無罪・訴因の縮小と、争うことが在留に持つ意味

2026/09/10

日本で刑事事件の当事者になったとき、在日中国人のコミュニティでは、しばしば次のような助言が交わされます。日本の裁判は有罪率がとても高い、争っても勝てないのだから、認めて早く終わらせた方がよい、と。この受け止めには、確かに現実の一端が映っております。ただ、そこから「だから争っても無駄だ」という結論を引き出してしまうと、本来得られたはずの結果を手放すことになりかねません。とりわけ外国人の事件では、判決の内容が日本に残れるかどうかを直接に左右いたします。この記事では、有罪率という数字が何を意味しているのかを構造から説明し、争うことにどのような到達点があるのかを整理いたします。

本記事の要点

  • 日本では検察官が起訴・不起訴を裁量により決する起訴便宜主義が採られており(刑事訴訟法248条)、証拠の不十分な事件や、情状により訴追を要しないと判断された事件は、そもそも起訴されません。
  • したがって「起訴された事件の有罪率が高い」という数字は、「争っても無駄」ではなく「勝負は起訴の前に付いていることが多い」という含意を持ちます。
  • 争うことの到達点は無罪判決だけではありません。嫌疑不十分による不起訴、起訴猶予、訴因の縮小・変更(刑事訴訟法312条1項)、一部無罪、共謀の射程の否定、量刑の変動といった結果があります。
  • 外国人事件では、拘禁刑が1年を超えるか否か、全部執行猶予が付くか否かが、入管法24条4号リの該当性を分けます。争って刑が動くことは、日本人の被告人にとって以上に重い意味を持ちます。
  • 「認めれば早く出られる」という説明には注意が必要です。いったん作られた自白調書は、後に争う場面で重い足かせになります。

「有罪率が高い」という数字は、何を意味しているのでしょうか

結論から申し上げますと、この数字は「日本の裁判所が争いを聞かない」ことを示すものではなく、「起訴という段階で強い選別が行われている」ことを示すものです。

刑事訴訟法248条は、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情況を考慮して、訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができると定めています。起訴便宜主義と呼ばれる仕組みです。加えて、検察官は、証拠上、有罪の立証が困難であると判断した事件を起訴いたしません。つまり、公判に現れるのは、あらかじめ二重の選別を通過した事件だけです。母集団がそのように絞られている以上、そこでの有罪の割合が高くなることは、統計として自然な帰結にすぎません。

そうであれば、この数字から引き出すべき教訓は「争っても無駄だ」ではなく、「勝負は起訴の前に付いていることが多い」ということになります。起訴されてから慌てるのではなく、逮捕直後から捜査段階の対応を組み立てることが、実際の結果を大きく左右いたします。統計上の具体的な数値は事件類型や年によって異なりますので、数字そのものではなく、この構造をご理解いただければと存じます。

争うことの到達点は、無罪判決だけではありません

弁護活動の目標を「無罪判決か、有罪判決か」の二択で考えますと、多くの選択肢が視界から外れてしまいます。実際には、次のような到達点がございます。

  • 嫌疑不十分による不起訴。証拠が犯罪の立証に足りないとして、公訴が提起されない結果です。
  • 起訴猶予。嫌疑はあるものの、示談の成立、被害弁償、初犯であること、生活環境の調整等を考慮し、訴追を要しないと判断される結果です(刑事訴訟法248条)。
  • 訴因の縮小・変更。検察官は、裁判所の許可を受けて訴因を追加・撤回・変更することができます(刑事訴訟法312条1項)。強盗が窃盗に、傷害が暴行に、営利目的所持が単純所持にというように、認定される事実がより軽いものに変わることがあります。
  • 併合罪として起訴された複数の事実のうち、一部について無罪とされること。
  • 共謀の射程が否定され、より軽い関与にとどまると認定されること。組織的な事件において、末端の関与者について特に問題となります。
  • 量刑上、実刑と全部執行猶予との分水嶺を動かすこと。

これらはいずれも、争ったからこそ得られた結果です。「認めるか、争うか」ではなく、「どの部分を、どのように争うか」を考えるべきである。これが実務の感覚に近いと考えております。

外国人の事件では、この分水嶺が在留の帰趨と直結します

日本人の被告人にとっても量刑は重大ですが、外国人の依頼者にとっては、その意味がさらに重くなります。判決の内容が、そのまま日本に残れるかどうかを決めてしまうためです。

入管法24条4号リは、「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者(全部執行猶予の言渡しを受けた者を除く)」を退去強制事由と定めています。つまり、刑が1年を超えるかどうか、そして全部執行猶予が付くかどうかが、在留の帰趨を分けます。訴因が縮小されて刑が軽くなること、情状立証によって全部執行猶予が付くことは、日本人の被告人にとって以上に決定的な意味を持ちます。

もっとも、入管法24条は号ごとに構造が異なります。同条4号チに当たる薬物事犯では、刑の軽重や執行猶予の有無を問わず、有罪判決を受けたこと自体が退去強制事由となります。この類型では、「執行猶予を目指す」という戦略では在留を守れず、そもそも有罪判決を回避すること、すなわち不起訴処分を得ることが目標にならざるを得ません。ほかにも、同号ロは不法残留、ハは資格外活動、ニは旅券法違反、ヌは不法就労助長等に関するものであり、それぞれ要件が異なります。ご自身の事件がどの号に関係するのかを見極めたうえで、目標を設定する必要がございます。

「認めれば早く出られる」という説明の危うさ

認めることが身柄の早期解放に結び付く場面は、確かにございます。事実に争いがなく、証拠隠滅のおそれが小さいと判断されれば、勾留やその延長が認められにくくなることはあり得ます。

しかし、いったん作成された自白調書は、後に事実を争う場面で重い足かせになります。公判で「あのときは早く出たかったから認めた」と述べても、その説明が受け入れられるとは限りません。とりわけ通訳を介した供述では、微妙な言い回しが訳出の過程で変質しうる点に注意が必要です。刑事訴訟法175条は、国語に通じない者に陳述させる場合に通訳人に通訳をさせる旨を定めていますが、条文があることと、訳出が常に正確であることとは別の問題です。「知っていた」と「そうかもしれないと思った」の違い、「頼まれた」と「指示された」の違いは、故意や共謀の認定に直結いたします。

なお、憲法38条3項および刑事訴訟法319条2項は、被告人の自白が唯一の証拠である場合には有罪とされない旨を定めています。補強法則と呼ばれる歯止めです。もっとも、これは自白のみでは足りないという限度の規律であって、自白があること自体の重みを消すものではありません。自白があるかないかで、事件の様相は大きく変わります。認めるかどうかの判断は、通訳を介した正確な説明を受けたうえで、証拠の内容を踏まえて行うべきものです。

では、いつ、何を争うべきなのでしょうか

争うか認めるかは、二者択一ではありません。実際の弁護方針は、おおむね次の組合せから選ばれます。

  • 事実の一部を争い、一部を認める。関与した事実は認めるが、金額や回数、期間を争うといった形です。
  • 事実そのものは争わず、評価を争う。故意の有無、共謀の射程、営利目的の有無、被害額の評価などが問題になります。
  • 手続の違法を争う。違法な手続によって収集された証拠の許容性、供述の任意性などです。
  • 事実も評価も争わず、情状立証に注力する。

どれを選ぶかは、証拠の内容を見て決めるべきものです。捜査段階では弁護人が見られる証拠が限られており、起訴後の証拠開示によって初めて事件の全体像が見えることも少なくありません。逮捕直後に「認めます」「争います」と方針を固定してしまうことは避け、まずは黙秘権を行使しつつ、弁護人と方針を検討する時間を確保することをお勧めしております。

想定される刑事手続の流れ

逮捕されますと、警察は48時間以内に事件を検察官へ送致し、検察官は24時間以内に、引き続き身柄を拘束する手続である勾留を請求するか否かを判断します。この最初の72時間は、ご家族が面会できず、弁護人のみがご本人と会うことができる期間です。争うか認めるかという最も重要な判断が、事件の情報が最も少ない時期に迫られる。日本の刑事手続は、そうした構造になっております。だからこそ、この段階で結論を出さずに済むよう、黙秘権を行使して時間を確保する意味がございます。

勾留が決定されると原則10日間、延長でさらに最大10日間、身柄拘束が続き、この期間内に検察官が起訴・不起訴を判断いたします。起訴されれば公判が開かれ、証拠調べ、被告人質問を経て判決に至ります。争う事件では公判前整理手続に付されることもあり、審理に相応の期間を要しますが、保釈の請求によって身柄を解いたうえで争うという選択肢もございます。

外国人事件特有のリスク(退去強制・在留資格)

刑事手続が終わっても、外国人の依頼者にとっては入管手続が残ります。刑事裁判で得られた結果が、そのまま入管手続の入口を決めます。前述のとおり、入管法24条4号リは1年を超える拘禁刑と全部執行猶予の有無を基準としており、4号チに当たる薬物事犯では有罪判決そのものが退去強制事由となります。

さらに、退去強制事由の判断において故意や過失が必要かという論点がございます。入管実務は、退去強制事由の判断に故意・過失を要件としないという立場を採ってまいりました。松村大介弁護士は、責任主義の射程が行政処分にも及ぶべきであるとして、この実務を正面から問う訴訟を提起し、争ってまいりました。現在も議論のある論点であり、結論が確立しているわけではございません。ただ、実務上重要なのは、刑事段階から故意・過失を争っておくことが、後の入管手続における主張の基礎になるという点です。刑事事件で「争っても無駄だから認めた」という経緯は、入管手続でも重くのしかかります。

退去強制手続に進んだ場合でも、在留特別許可を求める道は残されています。入管庁は許可・不許可の事例を年度別に公表しており、これは行政自身が許可相当と判断した先例です。同種の事情について許可の実績があるにもかかわらず本件のみを不許可とすることは、合理的な理由のない別異取扱いであるとして、憲法14条1項の平等原則から主張しうると考えております。

不起訴処分の重要性

以上を踏まえますと、外国人の刑事事件における最優先の目標は、多くの場合、不起訴処分の獲得ということになります。有罪判決を前提とする退去強制事由は、不起訴であればそもそも問題になりません。執行猶予判決を得ても在留資格を守れない類型が存在する以上、「起訴されてから執行猶予を目指す」という組み立てでは遅い場面があるのです。

入管法24条各号の構造を正確に把握していない弁護人の選任は、結果として在留資格の喪失につながりうるものです。刑事事件としての見通しと、入管手続への波及とを、同じ机の上で検討できる体制が必要であると考えております。

初動対応で押さえたい3つのポイント

  • 黙秘権の行使:憲法38条1項および刑事訴訟法198条2項により、供述を拒む権利があります。方針が定まらないうちに作られた調書は、後から訂正することが困難です。
  • 早期の弁護人選任:最初の72時間はご家族が面会できません。弁護人だけがご本人に会い、証拠の見通しを踏まえて方針を検討できます。
  • 通訳の質:捜査機関が用意する通訳とは別に、ご本人の立場で動く通訳を確保することが重要です。訳出の微妙な違いが、故意や共謀の認定を左右いたします。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所は、東京都豊島区に事務所を置き、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。松村大介弁護士が、接見の初動から公判の結審まで直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行っておりません。外国人事件専属の中国語通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続全般でご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士とともにワンストップで対応いたします。

解決事例A-1。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底的な証拠分析を行い、被告人質問と反対尋問を通じて事実関係を明らかにし、無罪判決を獲得いたしました。裁判員裁判対象事件や、報道された重大事件にも多数対応しております。

解決事例B-2。特殊詐欺の受け子とされ、複数回にわたって再逮捕された事案です。徹底した取調べ対応と、不当な取調べに対する抗議を積み重ね、全件について不起訴処分を獲得いたしました。いずれも、争ったからこそ得られた結果です。もっとも、事件ごとに証拠も事情も異なり、同様の結果を保証するものではございません。

解決事例D-2。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。退去強制事由には故意・過失が不要であるとする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められております。刑事段階で故意を争っておいたことが、入管手続での主張につながった事案です。

結語

「争っても無駄だ」という言葉は、事件の入口で最も多く語られ、そして最も多くの選択肢を閉ざしてしまう言葉です。実際には、無罪判決に至らなくとも、訴因が軽くなること、量刑が動くこと、そして不起訴に終わることによって、日本での生活を続けられる場合がございます。まずは証拠を見て、どこを争えるのかを見極めるところから始めていただきたいと存じます。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):「在日本反正都会被判有罪,争也没用」是真的吗|无罪判决、部分无罪、诉因缩小,以及「争」对在留资格的意义

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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