「未成年だから在留資格には影響しない」という理解は正確ではありません 外国籍の少年事件と在留審査
2026/09/09
「息子はまだ17歳です。少年なのだから重い処分にはならないでしょうし、在留資格にも関係ないと聞きました」。外国籍のお子さまが身柄を拘束されたご家族から、こうしたお話を伺います。前半は概ねそのとおりです。ところが後半、すなわち「在留資格には関係ない」という部分は正確ではありません。本稿では、保護処分と在留審査の関係を、入管法の条文の構造に即して整理いたします。
本記事の要点
- 少年の事件は全件が家庭裁判所に送致され、保護処分は刑罰でないため前科になりません。
- もっとも、それは「刑に処せられた者」を要件とする退去強制事由に当たらないというだけです。
- 入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者が対象で、全部執行猶予は除かれます。
- 家族滞在や留学では、退学や除籍によって在留資格該当性そのものが揺らぎます。
- 令和4年4月1日施行の改正により、18歳・19歳の特定少年は逆送の範囲が広がりました。
少年の事件はどのような道筋をたどるのか
少年の事件は、捜査機関の判断だけで終わりません。犯罪の嫌疑がある限り、全て家庭裁判所に送られます。これを全件送致主義と申します。成人なら検察官が不起訴処分で終える事案でも、少年はいったん家裁の手続に乗ります。
送致されますと、多くの事案で観護措置がとられ、少年鑑別所に収容されます(少年法17条)。期間はおおむね4週間です。この間、家庭裁判所調査官が本人との面接や学校への照会といった調査を行い、鑑別所では心理技官による鑑別も実施されます。これらが審判の帰趨を実質的に左右します。
審判の結果は、審判不開始、不処分、保護処分、検察官送致の4つに大別されます。保護処分には、保護観察、児童自立支援施設又は児童養護施設への送致、少年院送致があり(少年法24条1項)、いずれも刑罰ではなく教育的な処分です。他方、一定の事件では家裁が検察官に送致します(少年法20条)。故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪で犯行時16歳以上なら、原則として検察官送致です(同条2項)。令和4年4月1日施行の改正少年法は18歳・19歳を特定少年と位置付け、18歳以上のときに犯した死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を原則逆送の対象とし(少年法62条2項)、起訴されれば推知報道の禁止も解除されます(少年法68条)。なお、審判で少年を援助する者は「弁護人」ではなく「付添人」と呼ばれます(少年法10条)。
保護処分は前科になりません。しかし在留審査と無関係でもありません
結論を先に申し上げます。保護処分は刑罰ではなく、前科になりません。退去強制事由のうち「刑に処せられた者」「有罪の判決を受けた者」を要件とする号にも該当いたしません。ただし、そこから「在留に響かない」という結論は出てまいりません。退去強制事由と更新審査は、別の層の議論だからです。
入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者を除きます。「処せられた」とは刑の言渡しを受けたことですから、保護処分は含まれません。薬物事犯等に関する同号チも「有罪の判決を受けた者」を要件とします。保護処分にとどまったことには、大きな価値があります。
もっとも、4号のすべての号が刑事処分を要件とするわけではありません。就労を認められない在留資格の方が専ら報酬を受ける活動を行っていると明らかに認められる場合の号は、刑事処分の有無と切り離して判断されます。
次に更新や変更の審査です。更新は、法務大臣が更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されます(入管法21条3項)。出入国在留管理庁のガイドラインは素行の善良性を考慮要素に掲げますが、その評価は前科の有無だけで決まりません。保護処分を受けた事実や、その前提となった非行の内容も考慮され得ます。
見落とされやすいのが、在留資格該当性そのものが失われる場面です。家族滞在や留学の少年が退学又は除籍となりますと、その在留資格に対応する活動を行っていない状態が生じます。これが続けば在留資格の取消しの問題となり得ますし(入管法22条の4)、更新の際にも該当性が問われます。学籍を失うことで在留が危うくなるという筋道です。
そして、検察官送致を経て起訴され有罪となれば、少年でも刑に処せられた者となります。1年を超える実刑なら24条4号リに、薬物事犯なら刑の重さを問わず該当し得ます。
不起訴処分と、逆送を避けることの重要性
外国人の刑事事件では、執行猶予付きの判決を最終目標に据えるべきではありません。罪名によっては執行猶予でも退去強制の対象となり得るからです。成人の事件では起訴前段階からの不起訴処分の獲得を、少年の事件では逆送を避けて家裁の枠内で終えることを、最優先目標に置きます。逆送の判断は、被害弁償や示談、家庭環境の調整に左右されます。
初動対応で押さえておきたい3つのポイント
- 黙秘権の行使。少年は取調べの場で迎合しやすく、事実と異なる供述が調書に残りがちです。話す範囲は、弁護人と相談してから決めて構いません。
- 早期の弁護人・付添人の選任。送致前の環境調整が、逆送を避けられるかどうかを左右します。
- 通訳の質。日本語での学校生活に慣れたお子さまでも、法律用語や手続の説明を正確に理解できるとは限りません。
鑑別所に収容された後も、弁護人・付添人は面会できます。ご家族の面会に制限が付くことはありますが、弁護人にその制限はありません。
当事務所のご案内と解決事例
当事務所では、松村大介弁護士が初動から終結まで直接担当いたします。外国人事件専属の中国語通訳が常駐し、手続後の在留資格の更新・変更は提携の行政書士と対応いたします。
- 特殊詐欺の出し子に関わったとされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔的・脅迫的な状況など主観的事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得いたしました。
- 在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された方の事案では、婚姻と認知の手続を実現させたうえ、入管当局の過去の許可事例を分析し、1回の申請で在留特別許可を獲得いたしました。
- 冤罪により不法就労助長罪に問われた女性の事案では、退去強制事由の判断に故意・過失は不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められております。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
結語
少年事件と在留の関係は、「保護処分だから安心」でも「保護処分でも即座に退去強制」でもありません。どの号が、どの要件で、どの段階に働くのか。分けて確かめれば、いま何を守るべきかが見えます。ご家族だけで抱え込まず、早めにご相談ください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):「未成年就不会影响在留资格」这一理解并不准确 外国籍少年案件与在留审查
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