舟渡国際法律事務所

「共犯者が自分の名前を出しても、証拠がなければ起訴されない」という理解について|共犯者供述の重みと補強法則

お問い合わせはこちら

「共犯者が自分の名前を出しても、証拠がなければ起訴されない」という理解について|共犯者供述の重みと補強法則

「共犯者が自分の名前を出しても、証拠がなければ起訴されない」という理解について|共犯者供述の重みと補強法則

2026/09/08

「共犯者が自分の名前を出したらしい。しかし自分は認めていないし、証拠もないから起訴されない」。ご家族やご本人から、この理解を伺うことは少なくありません。日本の刑事手続では、本人が否認していても、共犯者の供述が有罪認定の柱になり得ます。分業型の事件では、他の関係者の話が自分の立場を決めてしまうこともあります。外国人の方の場合、その先には在留の問題が控えています。共犯者の供述がどう扱われるのかを整理します。

本記事の要点

  • 共犯者の供述は、本人が否認していても有罪認定の基礎となり得る。
  • 憲法38条3項・刑事訴訟法319条2項の補強法則は「本人の自白」を対象とし、共犯者の供述は含まれないと解されている(最大判昭和33年5月28日)。
  • そのぶん信用性は慎重に検討され、引っ張り込みの危険、供述の変遷、体験に基づく具体性、客観証拠との整合が柱となる。
  • 起訴されれば身柄拘束が続き、在留期間の更新申請ができないまま在留期限が来ることがある。

共犯者の供述だけでも有罪認定はあり得る

結論から述べます。共犯者が名前を挙げている場合、本人が否認していても起訴され、有罪とされることがあります。供述証拠であっても、信用できると判断されれば有罪認定の基礎になるからです。

補強法則は「本人の自白」を対象とする

憲法38条3項は本人の自白が唯一の証拠である場合に有罪とされない旨を定め、刑事訴訟法319条2項も同じ趣旨です。これを補強法則と呼びます。もっとも、ここでいう「本人の自白」に共犯者の供述は含まれないと解されており、最高裁判所大法廷の判決(最大判昭和33年5月28日刑集12巻8号1718頁)もこの立場を示しています。自分が黙っていれば証拠が足りなくなる、という理解は成り立ちません。

共犯者供述の信用性はどこで争われるか

共犯者供述のみで有罪とし得るからこそ、その信用性は慎重に検討されます。柱は次の点です。

  • 責任を軽くするために他人を引き込む危険(引っ張り込みの危険)がないか。
  • 取調べの経過で供述が変遷していないか、変遷に合理的な説明があるか。
  • 体験していなければ語れない具体的な事実が含まれているか。
  • 通信履歴や防犯カメラ等の客観証拠と整合しているか。

弁護人の役割は、判断の材料を早い時期に集め、供述の弱い部分を具体的に示すことにあります。

客観証拠の範囲は思われているより広い

通信履歴、位置情報、防犯カメラ、口座の入出金、受渡しの記録は、行動の順序を再現する材料になります。末端に近い役割の方が「指示の意味を知らなかった」と述べても、報酬の不自然さや匿名性の高い指示の受け方から、認識があったと推認されやすくなります。

手続の時間と初動の三点

逮捕から勾留の判断までは最大72時間、勾留は延長を含めて最大20日で、その満期に起訴か不起訴かが決まります。共犯事件では口裏合わせを疑われ、刑事訴訟法60条1項2号の罪証隠滅のおそれが認定されやすく、同法81条の接見等禁止が付くこともあります。ご家族が本人に代わって関係者へ連絡を取ることは控えてください。

  • 黙秘権を行使するかどうかの判断(憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項)。曖昧な受け答えが、後に不利な文脈で読まれることがあります。
  • 早期の弁護人選任。当番弁護士や被疑者国選の制度を用いることもできます。
  • 通訳の質。調書は日本語で作成され、本人の趣旨と異なるニュアンスが残ることがあります。署名すれば内容は固定されます。

在留への影響と、不起訴を最優先とする理由

起訴されれば身柄拘束が続き、在留期間の更新申請を期限内に行えないまま在留期限が来ることがあります。有罪となり無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合は、入管法24条4号リの退去強制事由に当たり得ます(全部執行猶予は除かれます)。これに至らない量刑でも、入管法21条の在留期間更新で素行が良好とはいえないと評価されることがあり、同法22条の4による在留資格の取消しが問題となる場合もあります。

そのため、私どもは起訴前の不起訴処分を最優先の目標とします。執行猶予付きの判決でも在留を守れない類型があるためです。起訴前に客観証拠の所在を押さえ、共犯者供述の弱点を検察官へ具体的に示すことに意味があります。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所は東京都豊島区にあり、松村大介弁護士(第一東京弁護士会)が外国人の刑事事件と入管手続に注力しています。

  • 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案で、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議を行い、主張立証を尽くして全件について不起訴処分を獲得しました。
  • 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された事案で、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。裁判員裁判対象事件にも多数対応しています。
  • 国際刑事事件や世界的に報道された事件への対応経験を有し、中国籍の方の重大事件にも数多く対応してきました。

接見の初動から公判の結審まで、松村弁護士が全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。中国語の専属通訳が常駐し、捜査機関の指定する通訳人とは別に、依頼者ご本人のために動きます。在留資格は提携の行政書士と連携して承り、退去強制手続に進んだ場合も在留特別許可の獲得実績を踏まえて対応いたします。

結語

共犯者が名前を出したという情報は、受け止めがたいものです。しかし、供述が出ていること自体は結論ではありません。その供述が誰の体験に基づくのかは、これから検討される事柄です。早い時期に弁護人が入り、材料を押さえて整理すれば、判断が変わる余地は残されています。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者 松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):关于“即使共犯说出我的名字,只要没有证据就不会被起诉”这一理解|共犯供述的分量与补强法则

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。