刑事事件のあと、いつまた日本へ来られるのか|入管法5条1項の上陸拒否事由と再入国の見通し
2026/09/07
退去強制を受けた方、あるいは日本で処罰を受けて帰国された方から、最も多く寄せられるご質問がこれです。仕事の取引先が日本にある、子どもが日本の学校に通っている、配偶者が日本にいる。生活の基盤が日本と結びついているほど、この問いは切実になります。上陸拒否は「一生入れない」という一律のものではなく、事由ごとに期間の定めがあり、例外的な扱いの余地もあります。制度の骨格を整理します。
本記事の要点
- 上陸を拒否される事由は、入管法5条1項に号を分けて列挙されています。刑罰に関するもの、退去強制歴に関するもの、薬物に関するものなど、性質が異なります。
- 退去強制を受けた方の上陸拒否期間は、原則5年です。過去に退去強制を受けたことがある方などは10年とされます。
- 出国命令により出国した方については、1年とされています。
- 薬物関係の事由については、期間の定めのない類型があり、他の類型と構造が異なります。
号ごとに構造が違うということ
外国人事件の実務で繰り返し確認すべきなのは、条文の号ごとに要件と効果が違うという点です。これは退去強制事由を定める入管法24条についても、上陸拒否事由を定める5条1項についても同じです。1年を超える拘禁刑に処せられたかどうかで区別される類型もあれば、刑の重さを問わず該当する類型もあります。「前科があるから一律に入国できない」という理解も、「執行猶予だから問題ない」という理解も、いずれも実際の条文の構造とは対応していません。ご自身の事案がどの号に当たるのかを特定することが、見通しを立てる出発点になります。
期間が経過すればそれで足りるのか
上陸拒否期間が経過しても、査証(ビザ)の発給と上陸審査は別個の判断です。過去の処分歴は申請書類に記載する必要があり、その説明の仕方が結果を左右します。ここで有効なのは、処分の内容、その後の生活状況、日本との結びつきを、資料とともに整理して示すことです。加えて、上陸特別許可という制度があり、期間内であっても個別の事情により上陸が認められる場合があります。法務大臣の判断による例外的な措置ですので、安易な期待は禁物ですが、家族の状況等によっては検討に値します。
平等原則という視点
在留特別許可について、出入国在留管理庁は許可・不許可の事例を年度ごとに公表しています。これらは、行政自身が許可相当と判断した先例の集積であり、同種の事情を有する事案について合理的な理由なく異なる取扱いをすることは、憲法14条1項の平等原則の観点から問題があると考えられます。当事務所では、在留特別許可の申請や退去強制手続における主張にあたり、これら公表事例を年度横断的に精査し、本人の事情に最も近い事例を特定したうえで主張を組み立てています。上陸特別許可の場面でも、同様の発想は有用です。
帰国前にできること
すでに退去強制の手続が進んでいる段階でも、その後の再入国の可能性を左右する要素があります。出国命令の対象となり得るかどうか、退去強制歴が残る形での出国となるかどうかは、その後の上陸拒否期間に直結します。また、刑事手続の段階で不起訴処分を得られていれば、そもそもこの局面に至らない場合も多くあります。当事務所が執行猶予ではなく不起訴を最優先の目標に据えるのは、この一連の帰結を見据えてのことです。
当事務所について
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、刑事弁護と入管手続を一体として扱ってまいりました。在留資格を喪失し不法滞在で起訴された方の事案で、婚姻・認知の手続が当局に一旦不受理とされた困難な状況から、憲法的観点を踏まえた交渉と証拠収集、過去の許可事例の分析を経て、在留特別許可を獲得した事例があります。また、不法就労助長が問題となった事案では、退去強制事由と責任主義の関係を正面から争い、その後、在留特別許可が認められた経緯があります。薬物事犯では、無罪判決を得た事例も有しています。
松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。帰国後の再入国に向けた資料の整え方についても、提携の行政書士とともにご相談を承ります。
なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
結語
「いつまた来られるのか」という問いに一律の答えはありません。ご自身がどの号に該当し、どの期間の定めが働くのかを確定させることが、次の一歩の設計につながります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):刑事案件之后,何时才能再来日本|入管法5条1项的上陆拒否事由与再入境展望
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