舟渡国際法律事務所

保険金詐欺を疑われたとき|虚偽の事故申告・当たり屋と言われた場合の詐欺罪の成否と、在留資格への影響

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保険金詐欺を疑われたとき|虚偽の事故申告・当たり屋と言われた場合の詐欺罪の成否と、在留資格への影響

保険金詐欺を疑われたとき|虚偽の事故申告・当たり屋と言われた場合の詐欺罪の成否と、在留資格への影響

2026/09/10

「保険会社の調査担当者から、事故の状況を詳しく聞かせてほしいと言われた」「知人に頼まれて事故に遭った役をしただけなのに、警察から連絡が来た」。保険金の請求をめぐって、こうしたご相談をいただくことがあります。自動車事故の保険金請求は日常的な手続ですが、申告した内容と車両の損傷や記録が食い違うと、詐欺の疑いとして刑事事件に発展することがあります。本記事では、どのような法律構成で立件されるのか、どこが争点になるのか、在留資格にどう影響するのかをご説明いたします。

本記事の要点

  • 保険金詐欺は刑法246条1項の詐欺罪(10年以下の拘禁刑)として立件され、支払前に発覚した場合も未遂として処罰されます(刑法250条)。
  • 立件の端緒は保険会社の調査部門による不自然な請求の抽出であることが多く、刑事事件になる前の説明が後の捜査の出発点になります。
  • 「だますつもりがあったのか」という故意の認定が主戦場になりやすく、見積書を誰が作成したのかが問われます。
  • 運転していない方、同乗していただけの方、名義を貸しただけの方も、共謀共同正犯(刑法60条)や幇助(同法62条1項)として立件されうる類型です。
  • 詐欺罪は入管法24条4号リの対象となりうるほか、執行猶予付き判決であっても在留期間更新の素行審査で正面から評価されます。

保険金詐欺はどの罪に当たるのですか

刑法246条1項の詐欺罪であり、法定刑は10年以下の拘禁刑です。保険会社に虚偽の事故内容を申告し、担当者を誤信させ、その誤信に基づいて保険金の支払を受けたときに既遂となります。重要なのは、支払を受ける前に発覚した場合であっても詐欺未遂(刑法250条)として処罰の対象になる点です。請求書類を提出した時点で実行の着手があったと評価される余地があります。なお、故意に事故を起こして金銭を得ようとする、いわゆる当たり屋と呼ばれる類型では、恐喝(刑法249条)が問題となる場合もあります。

どのような経緯で刑事事件になるのですか

多くの場合、端緒は保険会社の調査部門です。着眼点として挙げられるのは、同一人物・同一車両・同一の関係者による短期間の複数請求、特定の修理工場や整備業者が繰り返し関与している構図、ドライブレコーダーの映像や事故車両の損傷状況と申告内容との齟齬などです。刑事事件になる前の段階で保険会社から事情を聞かれる場面があり、そこでの説明は記録され、後の捜査にそのまま引き継がれます。曖昧なまま話をまとめてしまうと、後から訂正するのが困難になります。

「だますつもりはなかった」という説明は通りますか

通るかどうかは証拠の積み上げによります。典型的なのは、事故そのものは実在したが、請求した損傷の一部が当該事故とは無関係であったという類型です。以前にぶつけた傷が含まれていた、修理見積りが実際の作業内容より高額であった、といった場合、問題は「そのことを知っていたのか」に絞られます。実務では、見積書を誰が作成したのか、当事者がその内容を確認できる立場にあったのかが検討されます。他人の作った書類に署名しただけという説明が通るかどうかは、当時のやり取りの記録や当事者の役割の積み重ねで決まります。

運転していない人や同乗していただけの人も罪に問われますか

問われうる、というのが率直な答えです。共謀共同正犯(刑法60条)や幇助(同法62条1項)の枠組みで、実行行為に直接関与していない方も立件の対象になります。中国語のコミュニティで「事故に遭った役をしてくれれば謝礼を出す」と誘われる類型では、末端で関与した方ほど、全体像を知らされないまま形式的な役割だけを担っていることがあります。争点は「何をどこまで認識していたか」に移ります。全員を一律に扱う見立てに対しては、一人ひとりの事情を切り分けて主張する必要があります。

保険会社に返せば不起訴になりますか

返還や弁償が処分に影響しうることは確かですが、返せば必ず不起訴になるという関係ではありません。この類型の被害者は保険会社という法人であり、個人が財産的な被害を受けた事件とは被害回復の意味合いが異なります。加えて、保険金詐欺は保険制度そのものへの信頼という社会的な側面を帯びます。したがって、組織的・反復的な関与と評価された場合には、被害額を返還してもなお起訴に至ることがあります。

想定される刑事手続の流れ

逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に、引き続き身柄を拘束する手続(勾留)を請求するかどうかを判断します。この合計72時間は、弁護人以外との面会が原則として認められない期間です。勾留が認められると原則10日、延長でさらに最大10日の拘束が続き、その間に起訴か不起訴かが決まります。もっとも保険金詐欺では、逮捕に至らず任意の事情聴取から捜査が始まることも多くあります。

外国人事件特有のリスク(退去強制・在留資格)

入管法24条の退去強制事由は、号ごとに構造が異なります。4号ロは不法残留、4号ハは資格外活動、4号ニは旅券法違反、4号ヌは不法就労助長等を対象とし、4号チは薬物事犯につき刑の軽重を問わず有罪判決で該当します。詐欺で問題になるのは4号リです。

4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を対象とし、全部執行猶予の言渡しを受けた者を除いています。したがって執行猶予付きの判決であればこの号には該当しませんが、ここで安心してしまうと危険です。退去強制と在留期間更新の不許可とは、まったく別の手続だからです。在留期間の更新(入管法21条)や在留資格の変更(同法20条)の審査では素行が善良であることが求められ、前科は正面から評価されます。執行猶予付きの判決を得ても、その後の更新が認められない事態は現実に起きています。

なお、退去強制事由の判断に故意や過失を要するかという点について、入管実務は要件としない立場を取ってきましたが、現在も議論のある論点です。刑事段階で認識の内容を争っておくことは、後の入管手続における主張の基礎になります。

不起訴処分の重要性

詐欺の類型では、執行猶予付きの判決を得ても在留資格を守りきれない場面があります。だからこそ、刑事弁護は起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標として組み立てる必要があります。24条各号の構造を把握しないまま進められた弁護は、刑事事件としては執行猶予という一応の結末を迎えても、結果として在留資格の喪失につながることがあります。認識の限定、関与の一回性、返還の実行を、具体的な資料とともに起訴前に検察官へ示す作業が重要です。

初動対応で押さえたい3つのポイント

  • 黙秘権を正しく行使すること。任意の聴取であっても、答えたことは記録に残ります。
  • できるだけ早く弁護人を選任すること。保険会社からの照会や任意の事情聴取の段階から関与することで、説明の方向を誤らずに済みます。
  • 通訳の質を確保すること。本人のために動く立場の通訳が付くことで、認識に関する微妙な説明が正確に伝わります。

当事務所では外国人事件専属の中国語通訳が常駐し、任意の聴取段階から公判まで同じ通訳が一貫して関与できる体制を取っています。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所は、中国籍の方を中心とする外国人刑事事件と入管手続を主たる注力分野としています。初動の相談から手続の終結まで松村大介弁護士が直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。

事例C-1として、卸業を営む依頼者が取り込み詐欺の被害に遭った事案では、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、被害額を大きく上回る7,500万円の解決金を獲得しました。詐欺の構造を被害者側からも見てきた経験が役立ちます。

事例B-1として、特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代女性について、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在等を総合的に主張し、不起訴処分を獲得しました。末端で関与したとされる方の認識の中身を示す作業は、保険金詐欺の共犯類型でも同じ意味を持ちます。

事例D-2として、冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性の事案を担当しました。「退去強制事由には故意・過失が不要」とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。

入管庁は在留特別許可の許可事例・不許可事例を年度別に公表しており、これは行政自身が許可相当と判断した先例です。同種の事情を有する事例を抽出し、憲法14条1項の平等原則から主張できます。刑事手続の終了後は、提携の行政書士と連携して在留資格の更新・変更まで対応いたします。

結語

保険金の請求をめぐる事件は、事故が実在するかどうかではなく、申告した内容のどこまでが真実かという細かな線引きの問題として進みます。だからこそ、記憶が新しいうちに事実関係を整理し、保険会社への説明の段階から刑事事件を見据えて動くことが有効です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):被怀疑保险金诈骗时|虚假事故申报、被指“碰瓷”时诈骗罪之成立与否,及其对在留资格之影响

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