家族の裁判が「裁判員裁判」になると言われました|手続の違い、期間、通訳、傍聴について、ご家族が知っておきたいこと
2026/09/10
ご家族が日本で逮捕され、弁護人から「この事件は裁判員裁判になります」と告げられて、この記事にたどり着かれた方が多いのではないかと思います。急いで来日された方も、中国のご自宅から調べておられる方も、まず知りたいのは、それが何を意味するのか、いつ終わるのか、自分は何をすればよいのか、ということではないでしょうか。裁判員裁判は、たしかに重い事件を対象とする手続です。もっとも、仕組みを知れば、ご家族にできる準備が具体的に見えてきます。
本記事の要点
- 裁判員裁判は、国民から選ばれた裁判員が、裁判官とともに事実の認定と量刑の判断に加わる手続です。
- 対象は、死刑又は無期の拘禁刑に当たる罪の事件などに限られており、重い事件であるがゆえに対象となります。
- 必ず公判前整理手続を経るため、起訴から第1回公判まで数か月を要しますが、その期間こそが最も重要な準備期間です。
- 被告人が日本語に通じないときは通訳人が付されますが、通訳の正確さが判断に直結するため、弁護人の側で通訳を確保する意味があります。
- ご家族は傍聴できますが、法廷の言語は日本語であり、傍聴人のための通訳が行われるわけではありません。
裁判員裁判とは、どのような手続でしょうか
国民の中から選ばれた裁判員が、裁判官とともに法廷に座り、証拠を見聞きしたうえで、有罪か無罪か、有罪であればどの程度の刑にするかを一緒に判断する手続です。裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項が対象事件を定めており、死刑又は無期の拘禁刑に当たる罪の事件と、法定合議事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件が対象とされています。
具体的には、殺人、強盗致傷・強盗致死、傷害致死、現住建造物等放火、営利の目的による薬物の輸入といった類型が含まれます。重い事件だからこそ裁判員裁判になるのだ、という受け止めになり、不安が大きくなるのは当然のことです。他方で、市民が審理に加わることによって、専門家の常識だけでは片づけられない事情に耳を傾けてもらえる可能性が開かれる、という側面もあります。
通常の裁判と、どこが違うのでしょうか
最も大きな違いは、必ず公判前整理手続を経ることです。刑事訴訟法316条の2以下に定められた手続で、公判が始まる前に、争点と取り調べる証拠を、裁判所・検察官・弁護人の三者で絞り込みます。
このため、起訴から第1回公判までに数か月を要することが多くなります。ご家族から見ると、面会に行っても何も進んでいないように見え、不安な時期が続きます。しかし実際には、この期間に、証拠の開示を受け、どこを争い、どの証人を呼ぶかという、判決を左右する準備が進んでいます。なお、この点は弁護人にお尋ねいただければ、進捗をご説明できます。
他方、いったん公判が始まると、連日的に集中して審理され、判決までは短期間です。したがって、主張と証拠は公判前整理手続の段階でほぼ出し尽くさなければなりません。ご家族の協力も、早い段階で必要になります。具体的には、次のような資料です。
- ご本人の生活状況、家族構成、就労状況が分かる資料
- 身元引受けの意思を示す書面と、引受人の生活基盤に関する資料
- ご親族や勤務先の方からの嘆願書
- 中国のご家族への送金の記録、勤務先の在職証明、戸口簿など
通訳はどうなるのでしょうか
被告人が日本語に通じないときは、通訳人が付されます(刑事訴訟法175条)。裁判員裁判では、法廷でのやり取りが逐語的に訳出されますので、通訳の正確さが、そのまま裁判員の心証形成に直結します。
加えて重要なのが、捜査段階の供述調書が、どの通訳人を介して作られたのかという点です。取調べで話した内容が正確に訳されていなければ、その調書は、ご本人が述べていないことを述べたものとして残ります。
そのため、捜査機関が指定する通訳とは別に、弁護人の側で信頼できる通訳を確保しておく意味は大きいと考えます。接見での打合せ、資料の翻訳、法廷での訳出の検証まで一貫して同じ通訳が関わることで、細かな言い回しの取り違いを減らすことができます。
傍聴について、知っておいていただきたいこと
裁判は原則として公開の法廷で行われます(憲法82条1項)。ご家族も傍聴することができます。もっとも、いくつか知っておいていただきたいことがあります。
- 法廷で用いられる言語は日本語です。被告人のための通訳は行われますが、傍聴席のご家族のために通訳が行われるわけではありません。
- その日にどの法廷でどの事件が開かれるかは、裁判所の入口付近などに掲示される開廷表で確認できます。
- 法廷内では携帯電話の電源を切る必要があります。写真撮影と録音は禁じられています。
- メモを取ることは認められていますが、傍聴席から声を出したり、被告人に合図を送ったりすることはできません。
- 証人として証言する予定の方は、自分の証言が終わるまで法廷内にいることを制限される場合があります。
ご家族が情状証人として証言される場合は、事前に弁護人と入念に打合せをしてください。上手に話す必要はありません。ご本人とどのような関係にあり、これからどう支えるおつもりなのかを、ご自身の言葉で具体的に述べていただくことが何よりも伝わります。
想定される刑事手続の流れ
逮捕からの流れも押さえておきましょう。警察は逮捕から48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に、引き続き身柄を拘束する手続(勾留)を請求するかどうかを決めます。この合計72時間は、ご本人が弁護人以外の誰とも会えない時間であり、この間の対応が事件の見立てを大きく左右します。
その後、原則10日、延長されて最大20日の拘束を経て、検察官が起訴するかどうかを判断します。裁判員裁判の対象事件では、起訴後に公判前整理手続が始まり、判決までを含めて半年から1年程度を要することも珍しくありません。ご家族には長く感じられますが、その時間は準備のための時間でもあります。
外国人事件特有のリスク(退去強制・在留資格)
刑事裁判の結果は、そのまま在留資格の問題に直結します。入管法24条は退去強制事由を号ごとに定めており、号によって構造が異なります。
- 4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、全部執行猶予の言渡しを受けた者は除かれます。裁判員裁判の対象事件では刑が重くなりやすく、この号が正面から問題になります。
- 薬物事犯の場合の4号チは、刑の軽重を問わず、有罪判決を受ければ該当します。営利の目的による薬物の輸入は裁判員裁判の対象でもあり、この号との関係を最初から意識する必要があります。
- 4号ロは不法残留、4号ハは資格外活動に関する号であり、身柄事件が長引く間に在留期限が到来した場合には、これらも併せて問題になります。
実刑となった場合には、刑の執行を終えた後に入管の手続が始まります。執行猶予となった場合でも、罪名によっては入管の手続が始まりうることを、あらかじめ知っておいていただきたいと思います。その段階では在留特別許可を求めていくことになります。入管庁は許可・不許可の事例を年度別に公表しており、これは行政自身が許可相当と判断した先例ですから、同種の事情を有する許可実績を抽出し、憲法14条1項の平等原則の観点から主張していくことが考えられます。
不起訴処分の重要性
裁判員裁判の対象となるような事件であるからこそ、起訴されるかどうかの段階が決定的です。多くの罪名で、執行猶予付きの判決を得ても退去強制の対象となりえます。刑事裁判で執行猶予を得ることは、在留資格を守ることと同じではありません。
そこで刑事弁護は、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標として組み立てる必要があります。入管法24条各号の構造を正確に把握していない弁護人が選任された場合、刑事手続で一定の結果が得られても、その後に在留資格を失う事態が起こりえます。すでに起訴されている場合でも、量刑の争い方を入管手続から逆算して設計することが重要です。
初動対応で押さえたい3つのポイント
- 黙秘権を行使すること。重大事件では、捜査の初期に作られた調書が公判まで残り、裁判員の判断材料になります。ご家族が面会や手紙で「早く認めて謝りなさい」と促すことは、かえってご本人を不利にすることがあります。まず弁護人にご相談ください。
- 早期に弁護人を選任すること。勾留が決まるまでの72時間の対応が、その後の身柄と処分を大きく左右します。裁判員裁判の対象事件では、公判前整理手続を見据えた準備を初期から始めます。
- 通訳の質を確かめること。重大事件ほど供述の細部が争点になり、訳し落としや意訳の影響が大きくなります。ご本人のために動く立場の通訳を確保する意味は小さくありません。
判決の日に、ご家族ができること
判決の言渡しには、ご家族も立ち会うことができます。判決に不服がある場合、控訴の申立ては判決の日の翌日から14日以内に行う必要があります(刑事訴訟法373条)。期間が短いので、判決の内容と方針は、あらかじめ弁護人と相談しておいてください。
また、実刑と執行猶予とでは、その後の入管手続の進み方が大きく異なります。判決の直後に、次はどの手続が来るのかを弁護人と確認しておくことが、ご家族の不安を減らすことにもつながります。
ご家族が最初にすべきこと
- 弁護人との連絡経路を確保すること。中国からご連絡いただく場合の連絡手段と時差を、最初に決めておくと行き違いが減ります。
- 勤務先や学校への説明の仕方を、弁護人と相談すること。ご本人の意思を確認しないまま先に説明してしまうと、後の弁護方針と食い違うことがあります。
- 中国のご親族からの資料の準備に早く着手すること。戸口簿、在職証明、嘆願書などは、取得と翻訳に時間がかかります。公判前整理手続の段階で必要になりますので、早めに動いていただくことが有効です。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所は、中国籍の方を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。松村大介弁護士が、接見の初動から公判の結審まで直接担当し、事務員や若手弁護士による代行を行いません。また、外国人事件専属の中国語通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続の全般でご利用いただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更についても、提携の行政書士とともにワンストップで対応しています。
当事務所は、国際的な刑事事件、裁判員裁判の対象となる事件、世界的に報道された事件への対応経験を有しており、中国籍の方の重大事件にも数多く対応してまいりました。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者の事案では、徹底した証拠の分析と、被告人質問・反対尋問を通じて無罪判決を獲得しました。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻・認知の手続が未了で一旦不受理とされたところ、憲法的な観点から当局と交渉して婚姻と認知を実現しました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況でも有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析して、1回の申請で在留特別許可を獲得しています。
結語
裁判員裁判と聞いて、ただ立ちすくむしかないように感じておられるかもしれません。けれども、公判前整理手続という長い準備期間は、ご家族が力を発揮できる時間でもあります。資料をそろえること、証言に備えること、生活の受け皿を整えること。準備できることは具体的にあります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
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