情状証人として法廷に立つことになったご家族の方へ|聞かれること、備えること、通訳のこと
2026/09/08
「弁護人から、法廷で証言してほしいと言われました。何を話せばよいのでしょうか。」ご家族や勤務先の方から、こうしたご相談をいただきます。日本の刑事裁判には、判決の前に、被告人の生活を支える方が証言台に立ち、今後の監督や暮らしの見通しを述べる手続があります。これを情状証人といいます。慣れない場所で、多くは通訳を介して話す場面です。この記事では、何を聞かれ、どう備えるのか、外国人の事件では何が量刑と在留に響くのかを整理します。
本記事の要点
- 情状証人の役割は事実を争うことではなく、判決の後の生活環境を裁判官に示すことです。
- 証人は宣誓して証言し、虚偽の証言は偽証罪に問われます。できない約束はしません。
- 反対尋問では、なぜ止められなかったのか、今後どう監督するのかが問われます。
- 通訳を介する尋問では一文を短く区切り、分からない質問には分からないと述べます。
- 量刑が入管法24条4号リの線を越えるかどうかが在留を左右します。
役割は事実を争うことではない
結論から申し上げます。情状証人に期待されているのは、判決の後にご本人がどこで、誰と、どのように生活するのかを、裁判官の前で具体的に示すことです。事実を争う場面は証拠調べと被告人質問で扱われます。二度とさせませんと述べるだけでは足りず、住まい、仕事、生活費の負担を具体的に話せるよう整えます。
証人は宣誓のうえで証言し(刑事訴訟法154条)、虚偽の陳述をすれば偽証罪(刑法169条)に問われます。難しい約束を口にし、反対尋問でその点が崩れれば、証言全体の信用性が損なわれます。できることとできないことを分けて述べる方が、強い証言になります。
尋問の流れと、聞かれやすいこと
尋問は、弁護人の主尋問、検察官の反対尋問、裁判官の補充尋問の順に進みます。問われやすいのは次の4点です。
- 本人の行動をどの程度把握していたか(同居の有無、連絡の頻度、金銭の出入り)
- なぜ止められなかったのか、その原因は何か
- 今後どう監督するのか(同居、勤務先からの報告、日々の連絡)
- 収入と住居の見通し(誰の収入で生活するのか、家賃、就労の可否)
監督体制が現実のものかを確かめる質問です。記憶にあることを飾らずに述べれば足ります。
通訳を介した証言と、来日して証言する場合の準備
日本語を母語としない証人には、通訳人が付きます(刑事訴訟法175条)。一文を短く区切る、二つの内容を一度に述べない、訳し終わるのを待つ、意味が分からないときは推測で答えず聞き直す。この工夫で伝わり方は変わります。
中国本土のご家族が来日して証言される場合は、短期滞在の在留資格の取得、渡航時期と公判期日の調整、滞在先の確保に時間が要ります。期日は動くこともあり、渡航の手配は弁護人と相談しながら進めます。来日が難しいときは、陳述書などの書面で代えることもできます。誓約書や身元引受書は、証言と食い違わないよう事前にそろえます。
量刑と在留のつながり
情状証人の証言は量刑に影響し得ますが、結果を保証するものではありません。そのうえで、外国人の事件では量刑の線引きが在留に直結します。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としています(刑の全部の執行猶予が付いた場合は除かれます)。
線引きは罪名で異なります。薬物に関する4号チは刑の軽重を問いません。不法残留は4号ロ、資格外活動は4号ハ、不法就労助長は4号ヌです。判決後も、在留期間の更新(入管法21条)では素行が見られ、在留資格の取消し(同法22条の4)もあり得ます。
その前に、起訴されない道を尽くす
最も望ましいのは、公判に至る前に不起訴処分を得ることです。逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかを判断します。この72時間と、勾留後の10日間、延長でさらに10日間の中で、処分の見通しが固まります。
初動で大切なのは3点です。取調べで黙秘権を行使できると知っておくこと、早く弁護人を選任すること、通訳の質です。依頼者本人のために動く通訳が関与すれば、認識の食い違いが調書に残るのを防ぎやすくなります。情状証人のために整える資料は、検察官への意見書の裏付けにもなります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士が外国人の刑事弁護と入管手続に注力しています。関連する解決事例です。
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結語
証言台に立つことは軽い負担ではありません。けれども裁判官が知りたいのは、立派な言葉ではなく、判決の後に本人を支える人が現実にいるのかどうかです。今できることを、できる範囲で正確に述べれば足ります。何を話せばよいか分からないという段階でご相談ください。準備を重ねれば、法廷で伝えるべきことは形になります。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者 松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):写给将作为情状証人出庭作证的家属|会被问到什么、如何准备、翻译如何安排
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