裁判の費用と通訳の費用は誰が負担するのか|訴訟費用の負担と、無料で通訳の援助を受ける権利
2026/09/08
弁護士に依頼したいが、裁判にかかる費用まで請求されるのではないか。通訳を付けたら、その分も自分が払うことになるのか。ご相談では、この質問を早い段階で受けます。日本の刑事手続では、弁護人に支払う費用と法律上の「訴訟費用」は別のものです。通訳人の費用の扱いをめぐっては、条文と国際人権法との関係について長く議論が続いてきました。
本記事の要点
- 弁護人に支払う費用と「訴訟費用」は別のものである。
- 刑事訴訟法181条1項は、刑の言渡しの際に訴訟費用を被告人に負担させるものとし、貧困のため納付できないことが明らかなときを除く。
- 刑事訴訟費用等に関する法律2条により、通訳人・翻訳人の旅費、日当、報酬等も訴訟費用に含まれる。
- 自由権規約14条3項(f)は無料で通訳の援助を受ける権利を保障し、実務では通訳費用を負担させない扱いが広く行われている。
- 負担を命じられた場合も、刑事訴訟法500条1項により執行免除の申立てができる。
弁護人の費用と訴訟費用は別のもの
弁護人に支払う費用は、依頼者と弁護士との委任契約に基づくものです。訴訟費用は、手続に要した費用のうち法律が定める範囲のものをいい、裁判所が判決の中で負担を命じることがあります。両者は根拠も性質も異なります。
訴訟費用の負担を定める条文
刑事訴訟法181条1項は、刑の言渡しをしたときは被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させるものとし、ただし貧困のため納付することができないことが明らかであるときはこの限りでないと定めています。その内容は刑事訴訟費用等に関する法律2条が定め、証人・鑑定人・通訳人・翻訳人に支給すべき旅費、日当、宿泊料、報酬等が含まれます。国選弁護人の報酬も同様です。
通訳の費用をめぐって続いてきた議論
日本が締約国である市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)14条3項(f)は、裁判所で用いられる言語を理解し又は話すことができない場合に、無料で通訳の援助を受けることを保障し、憲法98条2項は条約の誠実な遵守を定めています。他方、前記の条文を形式的に読めば、通訳人の費用も被告人の負担となり得ます。この関係をどう理解するかは議論が続いてきた論点であり、結論を断定することはいたしません。運用としては、負担を命じない扱いが広く行われています。
負担を命じられた場合の対応
判決で訴訟費用の負担を命じられた場合でも、貧困のため完納することができないときは、裁判所に執行免除の申立てをすることができます(刑事訴訟法500条1項)。期間の定めがありますので、判決の段階で弁護人にご確認ください。
国選と私選の違いは費用の負担者にある
勾留された被疑者は、資力が一定額に満たない場合等に国選弁護人の選任を請求することができ(被疑者国選)、起訴後の被告人にも国選弁護人が付されます。両者の違いは、まず費用を誰が負担するかにあります。もっとも、実質的な分かれ目になるのは、接見の初動から入管手続の見通しまでを一貫した方針で組み立てられるかどうかです。
言語を理由に負担が偏らないかという視点
費用負担の問題は、金銭の問題にとどまりません。日本語を用いない当事者にだけ手続上の負担が重くなるとすれば、それは公平の問題であり、憲法や条約の観点から検討されるべき論点になります。当事務所は、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟に取り組んできました。形式の背後にある原則を問い直す点で、通じる問題意識だと考えています。
手続の時間と在留への接続
逮捕から勾留の判断までは最大72時間、勾留は延長を含めて最大20日で、その満期に起訴か不起訴かが決まります。この短い期間に、黙秘権の行使(憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項)、早期の弁護人選任、通訳の質の確保という三点を決めなければなりません。
在留への影響も同じ時間軸で進みます。有罪となり無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合は、入管法24条4号リの退去強制事由に当たり得ます(全部執行猶予は除かれます)。薬物事件は同条4号チにより刑の軽重を問わず対象となり、不法残留は4号ロ、資格外活動は4号ハ、不法就労助長は4号ヌが問題になります。これらに至らない場合でも、入管法21条の更新不許可や同法22条の4による在留資格の取消しが問題となり得ます。だからこそ、不起訴処分を最優先の目標とします。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所は東京都豊島区にあり、松村大介弁護士(第一東京弁護士会)が外国人の刑事事件と入管手続に注力しています。
- 冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案では、責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された事案では、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。
- 観光目的で来日し、日本人女性との間にお子様を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された方の事案では、一旦不受理とされた状況から交渉により婚姻・認知を成立させ、在留特別許可を得ました。
接見の初動から公判の結審まで、松村弁護士が全工程を直接担当し、代行は行いません。中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。在留資格は提携の行政書士と連携して承ります。
結語
費用の問題は、口に出しにくいものです。しかし、見通しが立たないことを理由に相談を先延ばしにすると、不起訴を目指すうえで最も大切な時期が過ぎてしまいます。訴訟費用と弁護人費用の区別、通訳費用の扱い、執行免除の申立ては、事前に確認できる事柄です。まずは見通しを一緒に立てるところから始めましょう。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者 松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):审判的费用与翻译的费用由谁负担|诉讼费用的负担与免费获得翻译协助的权利
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------