執行猶予判決を受けた中国人は、帰国後にまた日本へ来られますか
2026/09/05
執行猶予の判決を受けて日本を離れた方から、もう一度日本へ行けるかというご相談を数多くいただきます。実刑を免れたのだから記録は残らないはずだ、5年待てば行けると聞いた、というお話もうかがいます。しかし退去強制と上陸拒否は別の条文です。
本記事の要点
- 入管法5条1項4号は1年以上の拘禁刑に処せられたことのある者を上陸拒否の対象とし、執行猶予付きの判決を除外していません。
- 同号による上陸拒否には期間の定めがなく、時の経過だけでは解消されません。
- 薬物に関する法令違反で刑に処せられた場合は、5条1項5号により、罰金でも執行猶予でも上陸を拒否されます。
- 退去強制を受けて出国した場合は、別に5条1項9号の1年・5年・10年の上陸拒否期間が加わります。
- 該当する場合に日本へ入る道は法務大臣の上陸特別許可(12条1項)に限られます。
この質問への直接の回答
刑期が1年以上であれば、執行猶予が付いていても入管法5条1項4号の上陸拒否事由に当たり、期間の定めなく上陸を拒まれます。1年未満の執行猶予なら同号には当たりませんが、薬物事件は刑の重さを問わず5条1項5号に当たり、やはり期間の定めがありません。退去強制を受けて出国した方には、さらに5条1項9号の5年または10年が重なります。
執行猶予なのに上陸拒否になるのはなぜですか
日本を出るときの基準と、日本に入るときの基準が別々に作られているからです。退去強制事由を定める入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますが、但書により全部執行猶予は除外されます。
ところが上陸拒否事由を定める5条1項4号は、日本国または外国の法令に違反して1年以上の拘禁刑に処せられたことのある者と定めるだけで、執行猶予を除く但書がありません。除かれるのは政治犯罪による者だけです。そのため拘禁刑1年6月・執行猶予3年の方は、退去強制はされないのに、いったん出国すると上陸を拒まれます。境目は1年で、1年未満の刑なら該当しません。刑期そのものを争う意味はここにあります。外国人の刑事事件と在留でも構造を説明しています。
何年経てば、また日本へ入国できますか
自動的に解消される期間があるのは9号だけで、4号と5号には期間の定めがありません。
5条1項9号は、出国命令により出国した方は出国の日から1年、退去強制を受けた方は退去の日から5年、過去にも退去強制歴がある方は10年としています。注意すべきは、9号の期間が経過しても4号や5号に当たる方は依然として上陸を拒否される点です。5年経ったから大丈夫だと考え、空港で送り返される事態は実際に起きています。
| 判決・処分の内容 | 該当し得る上陸拒否事由 | 期間 |
|---|---|---|
| 拘禁刑1年以上の全部執行猶予(薬物以外) | 5条1項4号 | 定めなし |
| 拘禁刑1年未満の全部執行猶予(薬物以外) | 非該当 | なし |
| 罰金(薬物以外) | 非該当 | なし |
| 薬物事件で有罪(刑の種類を問わず) | 5条1項5号 | 定めなし |
| 出国命令により出国 | 5条1項9号 | 出国の日から1年 |
| 退去強制(初回) | 5条1項9号 | 退去の日から5年 |
| 退去強制(2回目以降) | 5条1項9号 | 退去の日から10年 |
薬物事件の執行猶予はどうなりますか
もっとも重い扱いになります。5条1項5号は、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤等の取締りに関する日本国または外国の法令に違反して刑に処せられたことのある者を、期間の定めなく上陸拒否の対象とします。刑の重さの要件がないため、罰金でも執行猶予でも該当します。
在留の面でも同様で、入管法24条4号チは薬物に関する法令に違反して有罪判決を受けた者を退去強制事由とし、執行猶予でも該当します。別表を問わず永住者にも適用されます。外国人の薬物事件で整理しています。
執行猶予中に一時帰国して、日本へ戻ってこられますか
在留資格が残っている方でも慎重な検討が必要です。再入国許可またはみなし再入国許可を得ずに出国すれば在留資格は消滅しますが、許可を得ていても上陸の場面では5条1項の審査を受けます。
ここで働くのが入管法12条1項1号で、再入国の許可を受けているときを、法務大臣が上陸を特別に許可することができる場合として挙げています。在留期間の満了前に再入国の意思を表明して出国した方は、26条の2により再入国許可を受けたものとみなされます。もっとも許否は保証されておらず、渡航の前に弁護士にご相談ください。
上陸特別許可を得る道はありますか
あります。ただし申請権のある制度ではありません。入管法12条1項は、再入国の許可を受けているとき、人身取引等により他人の支配下に置かれて入国したとき、その他法務大臣が特別に許可すべき事情があると認めるときの三つを定めます。
判断は、上陸の申請、入国審査官の審査、特別審理官の口頭審理、法務大臣への異議の申出という流れの中で行われます。日本に配偶者や子がいる、治療が必要であるといった事情が材料になりますが、許否は個別の事情によります。実務上は在外公館の査証申請の際に事情を申告し、資料を整えることが出発点です。退去強制・在留特別許可・監理措置もご参照ください。
日本にとどまる選択肢はありますか
刑事事件の段階で不起訴処分を得られれば、刑に処せられていないため、上陸拒否事由にも退去強制事由にも当たりません。当事務所が執行猶予判決ではなく不起訴処分の獲得を最優先の目標とするのは、この差が決定的だからです。
法務省の令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の来日外国人の被疑事件の起訴猶予率は48.35%です。起訴か不起訴かは逮捕から最長23日の間に決まります。当事務所は松村大介弁護士本人が最初の接見から在留手続まで担当し、微信(WeChat ID:matsumura1119)で中国のご家族とも直接連絡が取れます。中国人の刑事事件・在留のご相談をご覧ください。
よくある質問
拘禁刑2年・執行猶予4年の判決を受けました。日本へ行けますか
2年は1年以上ですので入管法5条1項4号に当たり、期間の定めなく上陸を拒否されます。日本へ入る道は12条1項の上陸特別許可に限られます。
執行猶予の期間が満了すれば、上陸拒否も解けますか
刑法27条により猶予期間を経過すると刑の言渡しは効力を失います。もっとも入管の実務では、その後も刑に処せられたことのある者として扱われています。準備は該当を前提に進める方が安全です。
親が日本で執行猶予判決を受けました。子どもの留学に影響しますか
上陸拒否事由は本人について定められたもので、親の刑事処分がそのまま子の上陸拒否事由になることはありません。ただし経費支弁者としての適格性の説明を求められることはあります。
査証が発給されれば、上陸できますか
別の判断です。査証は上陸の要件の一つにすぎず、上陸審査で5条1項に該当することが判明すれば拒否されます。事情を隠しての渡航は、かえって不利に働きます。
執行猶予判決の後、在留期間の更新は認められますか
退去強制事由に当たらない場合でも、更新や変更の審査では素行が善良であることが考慮されます。有罪判決の事実は不利に働き、不許可により在留を失う経路があります。
本記事は2026年9月時点の情報です。
中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。
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