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中国人の刑事事件で不起訴になりやすいのはどんな場合ですか|検察官が重視する6つの条件

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中国人の刑事事件で不起訴になりやすいのはどんな場合ですか|検察官が重視する6つの条件

中国人の刑事事件で不起訴になりやすいのはどんな場合ですか|検察官が重視する6つの条件

2026/09/05

不起訴という言葉は、日本の刑事手続では単に処罰されないという以上の意味を持ちます。中国籍の方にとっては、日本で築いた生活をそのまま続けられるかどうかの分かれ目になるからです。では検察官は何を見て起訴と不起訴を分けているのか。実務で繰り返し焦点になる六つの条件を整理します。

本記事の要点

  • 令和6年の来日外国人被疑事件の起訴猶予率は48.35%で、およそ半数は不起訴で終わっています(法務省「令和7年版犯罪白書」)。
  • 起訴するかは刑事訴訟法248条の起訴便宜主義に基づく検察官の判断で、実務では示談、前科前歴、被害の程度と弁償、身元引受人、生活基盤の安定、供述の一貫性の六点が重視されます。
  • 罪名により起訴率は大きく異なり、来日外国人では窃盗52.53%、覚醒剤取締法違反71.88%、傷害25.69%と幅があります。
  • 薬物事犯は有罪判決だけで入管法24条4号チの退去強制事由に該当するため、起訴前の段階が特に重い意味を持ちます。

1. 被害者との示談は成立していますか

六つのうち結論に最も直接響くのが示談です。被害弁償が済み、被害者が処罰を望まない旨(宥恕)を書面で示していれば、起訴猶予の余地は大きく広がります。刑事訴訟法248条が、犯罪後の情況により訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができると定めているからです。

令和6年、来日外国人の傷害(暴行等を含む)の起訴率は25.69%で、全体の28.86%を下回りました。示談が機能しやすい類型では起訴率も低く出ます。もっとも示談金を中国本国のご家族が用意する場合、外貨の送金に日数を要します。逮捕から起訴・不起訴までは通算23日しかなく、被害額の明確な外国人の窃盗・万引き事件ほど着手の遅れが結果に響きます。

2. 前科や前歴はありませんか

初犯であること、とりわけ同種の前科がないことは、起訴猶予を支える基礎的な事情です。248条が挙げる犯人の性格・境遇の評価に直結するためです。

注意が要るのは、不起訴でも捜査を受けた事実は前歴として残る点です。次に同種の事件を起こせば前回の処分歴が事実として現れ、在留期間の更新や変更の素行審査でも考慮され得ます。

3. 被害の程度は小さく、弁償は済んでいますか

被害が軽微であること自体が独立の考慮要素になります。ただし、金額が小さければ立件されないという意味ではありません。報道された例では、令和8年5月、北海道札幌市の土産物店で752円の菓子1箱を持ち出したとして中国籍の女性が現行犯逮捕されています(北海道放送)。

検察官が見るのは金額の絶対値よりも計画性、反復性、共犯構造です。令和6年の来日外国人による財産犯の被害総額は約58億1,000万円、うち窃盗犯が約39億2,300万円でした(警察庁「令和6年における組織犯罪の情勢」)。

4. 身元引受人はいますか

身元引受人の有無は、釈放と処分の双方に効きます。ご本人を監督し出頭を確保する人がいるかが、勾留の必要性と再犯防止体制の評価に関わるためです。勤務先の上司や在日のご親族などに、書面で監督の意思を示していただきます。

令和6年の検察統計(全国籍ベース)では勾留請求91,358件が許可され、却下は4,154件でした。単純に計算すると許可率は95.7%です(国籍別の内訳は公表されていません)。住居も監督者も日本にない短期滞在の方は、この条件を満たすこと自体に工夫が要ります。

5. 在留資格と生活基盤は安定していますか

日本に定着した生活基盤があることは、逃亡のおそれを下げ、更生可能性を裏づけます。在留資格の種類、在留歴、就労先や学籍、家族の在日状況が資料とともに示されているかが問われます。

見落とされやすいのが在留期限です。身柄拘束中に在留期間が満了すると、更新を申請できないまま不法残留に陥ります。令和7年の退去強制令書発付は単独事由の集計で7,722人、うち5,778人が不法残留でした(出入国在留管理庁「出入国管理統計」)。刑罰より身柄拘束の副次的結果として在留を失う方が、数の上では多いのです(外国人の刑事事件と在留)。

6. 供述は一貫していますか

供述の一貫性は、調書の信用性と反省の実質を通じて処分に影響します。日本国憲法38条1項は供述を強要されないことを保障し、刑事訴訟法198条2項は供述を拒むことができる旨の告知を求めています。認める点と争う点を初期に整理しないまま供述が揺れると、勾留延長の理由にもなり得ます。

外国人事件に固有の危険は、通訳を介して作られた調書の正確性です。調書は日本語で作成され、読み聞かせも通訳を介します。令和6年の被告人通訳事件の第一審終局人員は4,649人、通訳言語は41言語、中国語は726人(15.6%)で第2位でした(前掲白書)。署名押印の前の確認が欠かせません。

罪名によって起訴率はどれくらい違いますか

同じ六条件を満たしても罪名による違いは残ります。令和6年の主な罪名の起訴率は次のとおりです(前掲白書)。

罪名来日外国人の起訴率全体の起訴率
総数44.28%40.38%
窃盗52.53%44.84%
詐欺53.35%51.42%
傷害(暴行等を含む)25.69%28.86%
入管法違反47.75%47.69%
大麻取締法違反45.19%44.11%
覚醒剤取締法違反71.88%74.20%

覚醒剤事犯の起訴猶予率は8.5%、大麻は35.5%にとどまります。薬物事件は有罪判決を受けた事実だけで入管法24条4号チの退去強制事由に該当し、罰金でも執行猶予でも同じで、在留資格の種類も問いません。外国人の薬物事件で起訴前に弁護の重心を置くほかないのはこのためです。当事務所が不起訴処分の獲得を最優先の目標に置く理由もここにあります。

よくある質問

起訴猶予と嫌疑不十分は同じ不起訴ですか

いずれも不起訴ですが意味は異なります。起訴猶予は嫌疑を認めたうえで訴追しない判断、嫌疑不十分は証拠上、犯罪の証明が困難であるという判断です。本記事の六条件は主として起訴猶予のための事情です。

不起訴になったことを証明する書面はもらえますか

被疑者が請求すれば、検察官は不起訴処分をした旨を告げなければなりません(刑事訴訟法259条)。実務上は不起訴処分告知書の交付を求めます。在留期間の更新や変更で処分内容を示す資料になります。

示談金に相場はありますか

相場としてお示しできる金額はありません。被害の内容、治療期間、被害品の価値、被害者側の意向で幅が大きいためです。謝罪の内容や宥恕文言の有無といった書面の作り方も結論に影響します。

不起訴になれば在留資格の問題は起きませんか

有罪判決を前提とする退去強制事由には該当しません。もっとも、在留期限が切れている場合や資格外活動が問題になっている場合は、刑事手続とは別に入管の手続が残ります。関連する疑問は外国人刑事・在留Q&Aにまとめています。

中国にいる家族が示談金を用意する場合、何に注意すればよいですか

時間の見積もりです。中国から日本への送金は外貨管理上の手続を伴い、着金まで日数を要します。罪名と被害額が判明した時点で準備を始めてください。当事務所は微信(WeChat ID:matsumura1119)でご家族と直接やり取りしています。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。見通しは罪名や在留資格で変わります。詳しくは中国人の刑事事件・在留のご相談をご覧ください。

本記事は2026年9月時点の情報です。

中国人の刑事事件と在留資格の全体像は、中国人の刑事事件|逮捕から不起訴・退去強制までにまとめています。あわせてご覧ください。

執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属/登録番号59077)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田3-4-10 布施ビル本館3階)代表。外国人の刑事事件と在留(退去強制・在留特別許可)を主たる注力分野とし、中国語圏の依頼者の事件を数多く取り扱う。外国人事件専属の中国語通訳が在籍し、逮捕直後の接見から在留手続まで弁護士本人が一貫して対応する。

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