舟渡国際法律事務所

「ブローカー」として名前が挙がったとき|不法入国等の援助・不法就労助長で問われる責任と、自分の在留への影響

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「ブローカー」として名前が挙がったとき|不法入国等の援助・不法就労助長で問われる責任と、自分の在留への影響

「ブローカー」として名前が挙がったとき|不法入国等の援助・不法就労助長で問われる責任と、自分の在留への影響

2026/09/10

在留期間を過ぎた外国人や、資格外活動の許可を得ていない外国人を働かせていたとして、建設・土木の会社の経営者らが入管法違反の疑いで逮捕された、という報道が、2026年に入って繰り返し伝えられています。SNSで希望者を募り、偽装結婚を斡旋していたとされる事案の報道もあります。こうした報道では、仲介的な立場にあった方が「ブローカー」と呼ばれます。もっとも、ある日突然、取調べで「あなたはブローカーですね」と迫られた方にとって、その言葉が何を意味するのかは、まったく分かりません。本記事では、この場面で実際に問われうる罪名を整理し、ご自身の在留資格にどのような影響が及ぶのかをご説明します。

本記事の要点

  • 「ブローカー」は法律用語ではなく、まず自分がどの条文で疑われているのかを確定することが出発点になります。
  • 不法就労助長の罪については、在留カードの確認を怠るなど過失があるときは、知らなかったことを理由に処罰を免れることができないとされています。
  • 仕事の紹介、面接への通訳としての同行、住居の提供、送迎といった行為も、報酬・継続性・事業性しだいで、あっせんや蔵匿と評価される余地があります。
  • 不法就労助長等に該当すると評価されれば、入管法24条4号ヌの退去強制事由が問題になり、判決の内容によっては同号リも併せて検討を要します。
  • 刑事段階から故意・過失を丁寧に争っておくことが、後の入管手続における主張の基礎になります。

「ブローカー」という罪名は、法律上存在しません

結論から申し上げます。「ブローカー」は法律用語ではありません。捜査機関や報道が、外国人の入国・就労・在留に何らかの形で関与した仲介的な立場の方を、便宜的にそう呼んでいるにすぎません。したがって、「ブローカーとして逮捕された」という情報だけでは、その方が何をしたと疑われているのかは分かりません。

実際に問われる罪名は、行為の内容によってまったく異なります。人を働かせたのか、入国を手助けしたのか、住まわせたのか、書類の作成に関与したのか。どの行為がどの条文に当てはまると考えられているのか、ここを確定することが弁護の出発点です。「ブローカーだろう」と言われたときに、その言葉の意味を確かめないまま話を進めてしまうことが、最も危ういと考えます。

どの条文で疑われているのかを、まず確定する

この場面で問題となりうる主な罪は、次のように整理できます。

  • 不法就労助長の罪(入管法73条の2)。事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者、外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者、そしてこれらの行為に関しあっせんした者が対象とされています。
  • 入管法が定める、不法入国者等を蔵匿し、又は隠避させる罪。住まわせる、かくまう、逃走を助けるといった行為が問題になります。
  • 入管法が定める、不法入国等を援助する罪。輸送その他の行為によって不法入国・不法上陸を容易にした場合が対象で、営利の目的があるときは法定刑が重くなる構造がとられています。
  • 偽装結婚の斡旋とされる場合は、公正証書原本不実記録及び同供用の罪(刑法157条1項・158条1項)の共犯や、入管法が定める在留資格に関する罪が問題になります。

なお、不法就労助長の罪の法定刑は法改正により引き上げられており、実際に適用される法定刑は行為の時点の法律によって決まります。インターネット上の解説には古い記載が残っていることがありますので、この点は必ず個別に確認する必要があります。

「知らなかった」で済むのでしょうか

残念ながら、そう単純ではありません。不法就労助長の罪については、その外国人が不法就労活動を行うことを知らなかったことを理由として処罰を免れることはできず、ただし過失がなかったときはこの限りでない、という趣旨の規定が置かれています。つまり、知らなかったこと自体ではなく、確認を尽くしていたかどうかが問われる構造になっています。

そこで決定的になるのが、どのような確認を、どこまで行っていたかという具体的な事実の積み上げです。

  • 在留カードの現物を確認していたか。写しを受け取っただけで済ませていなかったか。
  • 在留カード等読取アプリケーションや、入管庁の失効情報照会を利用していたか。
  • 資格外活動許可の有無と、認められた時間数を把握し、実際の勤務時間を管理していたか。
  • 雇用契約書の記載と、実際の就労内容・就労場所が一致していたか。
  • 在留期限の管理を誰が担当し、更新の状況をどのように把握していたか。

これらは、後から思い出して述べるものではなく、資料として残っているかどうかが結果を分けます。捜査が始まってからであっても、社内や手元の記録を早期に確保しておく意味は大きいと考えます。

どこまでが「あっせん」とされるのか

あっせんとされる行為の範囲は、想像より広く捉えられることがあります。友人に仕事を紹介した、面接に通訳として同行した、部屋を貸した、車で送迎した。こうした行為であっても、報酬を受け取っていたか、継続的・反復的に行っていたか、事業として行っていたか、相手の在留状況をどこまで認識していたかによっては、あっせんや蔵匿と評価される余地があります。

他方、知人を一度だけ善意で紹介したというだけで、直ちに犯罪が成立するわけでもありません。だからこそ、役割、報酬、継続性、認識の有無を一つひとつ腑分けする作業が必要になります。捜査機関は関係者の供述をつなぎ合わせて「組織的な仲介」という像を描こうとしますので、その像に合わせて記憶を語ってしまわないことが大切です。

想定される刑事手続の流れ

逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に、引き続き身柄を拘束する手続(勾留)を請求するかどうかを決めます。この合計72時間は、ご本人が弁護人以外の誰とも会えない時間です。ここで何を述べたかが、その後の事件の見立てを決めてしまうことが少なくありません。

勾留が認められると、原則10日間、延長されて最大20日間の拘束が続きます。この種の事件では従業員や取引先の取調べ、会社の資料の押収が並行して進み、期間の異なる複数の行為について逮捕が繰り返されることもあります。

外国人事件特有のリスク(退去強制・在留資格)

ご自身も外国籍である場合、刑事事件は在留資格の問題と直結します。入管法24条は退去強制事由を号ごとに定めており、号によって構造がまったく異なります。

  • 4号ヌは、不法就労助長等に関わる行為を退去強制事由として定めています。有罪判決を要件とする号ではないため、刑事事件の帰結とは別に、入管が独自に判断しうる点に注意を要します。
  • 4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、全部執行猶予の言渡しを受けた者は除かれます。実刑となるか執行猶予となるかが、大きな分かれ目になります。
  • 薬物事犯が絡む場合の4号チは、刑の軽重を問わず、有罪判決を受ければ該当します。

加えて、経営・管理や技術・人文知識・国際業務の在留資格をお持ちの方の場合、事業そのものの適法性が、在留資格該当性や次回の更新の判断に跳ね返ります。刑事処分が比較的軽く済んだ場合でも、更新が認められないという形で影響が現れることがあります。

この点について、松村大介弁護士は、冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性の事案を担当し、退去強制事由の判断には故意・過失を要しないとされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程は行政処分にも及ぶべきではないかという問題を提起して、訴訟で争ってきました。これは現在も議論のある論点です。実務上重要なのは、刑事段階で「何をどこまで確認していたか」という事実を記録に残しておくことが、後の入管手続における主張の基礎になる、という点です。

不起訴処分の重要性

したがってこの類型では、起訴前の段階で不起訴処分を獲得することを最優先の目標として弁護方針を組み立てる必要があります。執行猶予付きの判決を得れば在留資格を守れる、と考えるのは早計です。罪名によっては執行猶予でも退去強制の対象となり、そこに至らない場合でも、有罪判決の存在が更新の場面で素行の評価に影響します。

不起訴処分であれば前科は残りません。入管法24条各号の構造を正確に把握しないまま刑事弁護だけを進めることは、結果として在留資格の喪失につながりかねません。刑事弁護と入管手続は一体のものとして設計する必要があります。

初動対応で押さえたい3つのポイント

  • 黙秘権を行使すること。この類型では、何気なく述べた「だいたい分かっていた」の一言が、故意を認めた供述として調書に残ります。何をどこまで確認していたかを正確に語るには準備が要りますので、それまで話さないという選択が有効です。
  • 早期に弁護人を選任すること。勾留が決まるまでの72時間の対応が、その後の身柄と処分を大きく左右します。会社の記録の保全、従業員の供述の見通し、入管手続への影響まで、初期から一体的に検討する必要があります。
  • 通訳の質を確かめること。事業の仕組みや雇用の実態は説明が込み入り、訳し落としが生じやすい領域です。ご本人のために動く立場の通訳を弁護人の側で確保しておく意味は小さくありません。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所は、中国籍の方を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。松村大介弁護士が、接見の初動から公判の結審まで直接担当し、事務員や若手弁護士による代行を行いません。また、外国人事件専属の中国語通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続の全般でご利用いただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更についても、提携の行政書士とともにワンストップで対応しています。

冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案では、退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。

観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻・認知の手続が未了で一旦不受理とされたところ、憲法的な観点から当局と交渉して婚姻と認知を実現しました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況でも有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析して、1回の申請で在留特別許可を獲得しています。

特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議を重ね、全件について不起訴処分を獲得しました。身柄事件において、初期の対応を積み重ねることの意味を示す事案です。

結語

「ブローカー」と呼ばれたその日から、築いてこられた仕事もご家族との生活も、足元から崩れていくように感じられるかもしれません。もっとも、実際に問われている条文を確定し、どこまで確認していたのかという事実を積み上げていけば、争うべき点は少なくありません。話をされる前に、まず弁護人にご相談ください。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):被指为“中介”时|协助非法入境、助长非法就劳所涉之罪责,以及对本人在留资格之影响

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