経営・管理の在留資格とは|令和7年の基準改正、経過措置と更新の実務
2026/09/04
経営・管理の在留資格とは、本邦において事業の経営を行い、又は事業の管理に従事する活動を行うために付与される在留資格をいう。会社を設立して経営する場合のほか、既存の企業で管理者として働く場合にも用いられる。令和7年10月16日から、上陸許可基準を定める省令が大きく改められている。
この記事の要点
- 経営・管理は、日本で事業を経営し、又は事業の管理に従事するための在留資格である。
- 令和7年10月16日施行の基準改正により、資本金又は出資の総額が3000万円以上に引き上げられた。
- 常勤職員の雇用、経営経験又は学歴、日本語能力、事業計画書の確認が新たに求められる。
- 既に在留している方については、令和10年10月16日までの経過措置が設けられている。
- 事業の実体が乏しいと判断されると、更新の不許可や在留資格の取消しにつながる。
経営・管理の在留資格とは何か
経営・管理は、日本で事業を経営し、又は事業の管理に従事する活動を行うための在留資格である。入管法別表に定められた就労資格の一つであり、外国人が日本で会社を設立して代表者となる場合の典型的な選択肢になる。
この在留資格が認められるためには、活動が在留資格の類型に当てはまること(在留資格該当性)に加え、上陸許可基準に適合することが必要である。事業所の確保、事業の継続性、収支の見通しなど、実体を伴う事業であるかどうかが審査される。
令和7年10月16日の基準改正で何が変わったか
改正の要点は、資本金の水準の引上げと、経営者の資質及び事業計画の確認を求める点にある。主な変更は次のとおりである。
| 項目 | 改正前 | 令和7年10月16日以降 |
|---|---|---|
| 資本金又は出資の総額 | 500万円以上 | 3000万円以上 |
| 常勤職員 | 2名以上の雇用又は資本金500万円以上のいずれか | 1名以上の常勤職員の雇用が必要 |
| 経歴 | 管理に従事する場合に3年以上の経験 | 経営又は管理について3年以上の経験、又は経営管理に関する分野の修士以上の学位 |
| 日本語能力 | 定めなし | 申請人本人又は常勤職員について一定の水準が求められる |
| 事業計画書 | 定めなし | 作成のうえ、専門家による確認を受けることが求められる |
経過措置はどうなっているか
施行の時点で既に経営・管理の在留資格をもって在留している方については、経過措置が設けられており、令和10年10月16日までは従前の基準による取扱いを受けられるとされている。
もっとも、経過措置の期間が終われば新しい基準が適用される。資本金の増額、常勤職員の確保、日本語能力の要件への対応は、いずれも短期間では整えにくい。経過措置を、準備のために与えられた期間として使うという発想が必要である。
申請にはどのような資料が必要か
事業の実体を客観的に示す資料が中心になる。登記事項証明書、定款、事業所の賃貸借契約書、資本金の払込みを示す資料、事業計画書、決算書類、常勤職員の雇用を示す資料などである。
とくに事業計画書は、改正後は専門家による確認を受けることが求められるとされており、内容の具体性が問われる。売上の見込みについて根拠を示せるか、取引先の実在を確認できるか、事業所が実際に使われているかといった点が、審査では重視される。
更新が認められないのはどのような場合か
事業の実体が失われていると判断された場合である。売上がまったく立っていない、事業所が使われていない、従業員がいない、決算が長期にわたって赤字であるといった事情が重なると、更新は難しくなる。
また、租税や社会保険料の未納は、素行の評価に直結する。会社としての義務の履行状況が、経営者個人の在留の可否に影響するという構造を理解しておく必要がある。事業を続けられなくなった場合には、他の在留資格への変更を検討することになる。
経営・管理と技術・人文知識・国際業務は何が違うか
経営・管理は事業を経営し又は管理する立場の方、技術・人文知識・国際業務は雇われて専門的な業務に従事する方のための在留資格である。
会社の代表者であっても、実態が現場作業中心であれば経営・管理には当たらないと判断されることがある。逆に、従業員として採用されながら実質的に経営を担っている場合には、在留資格に応じた活動を行っていないと評価されるおそれがある。肩書ではなく実態で判断されるという点が共通する。
外国人の事件で経営・管理の在留資格が問題になるのはどのような場面か
刑事事件との関係では、経営者自身が不法就労助長罪に問われる場面が典型である。従業員の在留資格の確認が不十分であったことから、事業と在留の双方に影響が及ぶ。
また、名義だけを貸して実際には経営していない場合や、事業の実体がないまま在留資格を得ようとした場合には、虚偽申請として在留資格の取消しの対象になり得る。事業の実体を示す記録を日頃から残しておくことが、結果として身を守ることにつながる。
よくあるご質問
Q1 資本金は必ず3000万円必要ですか。
令和7年10月16日以降に新たに申請する場合は、原則として資本金又は出資の総額が3000万円以上であることが求められます。既に経営・管理の在留資格で在留している方については、経過措置が設けられています。
Q2 日本語ができなくても申請できますか。
改正後の基準では、申請人本人が一定の日本語能力を有すること、又は一定の日本語能力を有する常勤職員を雇用することが求められるとされています。ご自身が要件を満たさない場合は、人材の確保を含めて計画を立てる必要があります。
Q3 経過措置の期間中は何もしなくてよいのですか。
経過措置は令和10年10月16日までとされています。その後の更新では新しい基準が問題になりますので、資本金の増額や人員の確保について、早い段階から準備を進めておくことをお勧めします。
Q4 会社を作れば必ず在留資格が認められますか。
認められるとは限りません。登記を済ませただけでは足りず、事業所の確保、事業の継続性、収支の見通しなどが具体的に審査されます。事業計画の内容が実態と合っているかが重要です。
Q5 刑事事件を起こした場合、経営・管理の在留資格はどうなりますか。
罪名と刑の重さによります。1年を超える実刑であれば退去強制事由に当たり、それに至らない場合でも、更新の審査で素行が問題とされることがあります。事業の継続にも影響しますので、早い段階でご相談ください。
おわりに
経営・管理の在留資格は、基準の改正によって求められる水準が大きく上がった。経過措置の期間中に何を整えるかで、その後の更新の見通しが変わる。事業の実体を示す記録の残し方から、早い段階で検討しておくことをお勧めする。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
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執筆者情報
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)
主たる注力分野:中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護、出入国管理関係の行政訴訟
刑事手続と在留資格の問題を一体としてお取り扱いしております。
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