交通事故を起こしてその場を離れてしまったら|過失運転致傷・救護報告義務違反と在留資格
2026/09/07
車の運転中に人を負傷させる事故を起こし、動転してその場を離れてしまった。あるいは相手方と話がつかないまま現場を後にした。報道でも、複数台が絡む事故を起こした外国籍の運転者が逮捕されたと伝えられる例があります。日本の交通事故処理は、事故そのものの責任と、事故後にとるべき行動の責任とを別々に評価する構造になっており、後者の評価が量刑にも在留にも重く効いてきます。この記事は、そうした場面に置かれたご本人とご家族に向けた一般的な解説です。
本記事の要点
- 人身事故は、過失運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法5条)と、救護義務・報告義務違反(道路交通法72条1項、117条・119条)とが別個に成立し得ます。
- 現場を離れた事実は、故意犯である救護義務違反として重く評価され、身柄拘束の理由にもなります。
- 過失運転致傷罪には罰金刑がありますが、救護義務違反が加わると量刑の見通しは大きく変わります。
- 1年を超える拘禁刑に至れば入管法24条4号リの問題となり、そこに至らなくとも在留期間の更新審査では素行が問われます。
手続の流れ
人身事故の場合、その場で現行犯逮捕されることもあれば、後日、防犯カメラや車両の損傷から特定されて逮捕状により逮捕されることもあります。逮捕後の72時間の構造は他の犯罪と同じです。もっとも交通事件では、被害者の方の怪我の程度が確定するまで処分が留保され、その間に示談交渉を進める余地が比較的大きいという特徴があります。逃走とみなされる行動があった場合には、身柄拘束が長引く傾向があります。
外国人の方に固有のリスク
交通事犯は「うっかり」の延長として軽く受け止められがちですが、外国人の方にとってはそうではありません。まず、実刑が1年を超えれば入管法24条4号リの退去強制事由の問題が生じます。次に、そこに至らない罰金や執行猶予であっても、在留期間の更新や永住許可の審査において素行の善良性が問われ、更新が認められないという形で在留の継続が断たれることがあります。さらに、就労資格をお持ちの方が事故を理由に退職に至った場合、在留資格該当性そのものが揺らぐという二次的な問題も生じます。
故意・過失をめぐる論点
過失運転致傷罪の争点は、多くの場合、注意義務の内容と回避可能性です。一方、救護義務違反については、事故の発生を認識していたか、負傷者がいることを認識し得たかという主観面が決定的な争点になります。夜間の接触事故で衝撃が軽微であった場合など、認識の有無が真剣に争われる事案は実際に存在します。
そして、ここで積み上げた主張は、刑事手続だけで終わりません。入管実務では、退去強制事由の該当性判断に故意・過失は要件でないとする運用が長く踏襲されてきました。当事務所の松村大介弁護士は、不法就労助長が問題となった事案において、責任主義の射程が行政処分にも及ぶべきではないかという論点を正面から掲げ、上訴審まで争いました。同事案では、その後、在留特別許可が認められています。この論点は現在も議論の途上にありますが、刑事段階で故意・過失に関する証拠を残しておくことが、後の入管手続での主張の土台になるという実務的な意味は動きません。
初動で押さえていただきたい三点
第一に、記憶が曖昧な部分を推測で埋めた供述をしないこと。第二に、任意保険の対人賠償と刑事上の示談は別物であり、被害者の方への謝罪と見舞いは弁護人を通じて早期に検討すること。第三に、通訳を介した取調べでは、事故態様の細部が訳出の過程でずれやすいため、弁護人側の通訳を確保することです。
当事務所について
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、裁判員裁判対象事件や国際的に報道された事件を含む重大事件にも数多く対応してまいりました。事故態様や認識の有無が争われる事案では、客観証拠の精査が結論を分けます。入管手続の側では、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下で、依頼者に有利な証拠を積み上げ、過去の許可事例を分析して在留特別許可を獲得した事例があります。
松村大介弁護士が初動の接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更についても、提携の行政書士とともに対応いたします。
なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
結語
事故の瞬間より、その後の数時間と数日の行動が、結果を大きく左右します。すでに現場を離れてしまったという方も、そこから採り得る手はあります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
中文版(简体字):发生交通事故后离开现场|过失驾驶致伤、救护及报告义务违反与在留资格
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