刑事事件の後に残るもの 在留・送還・そして再来日
2026/09/03
刑事事件は、判決が言い渡された日に終わるものだと思われがちです。実際には、外国籍の方にとってはその日から第二の手続が始まります。刑事裁判の結果を資料として、入管が在留を続けさせるかどうかを判断する段階です。
この二段構えを知らないまま刑事手続だけを乗り切ってしまうと、執行猶予判決を受けて外に出たその足で入管に収容された、という展開になり得ます。ここでは、刑事処分の後に何が起こるのかを、退去強制事由の判定、在留資格の取消し、在留特別許可、送還、そして再来日の可否という順で追います。
出入国在留管理庁の令和7年の統計では、退去強制令書による送還は7,563人でした。内訳は自費出国が6,677人、護送官の同行しない国費送還が505人、護送官が同行する国費送還が318人で、最後の数字は過去最高です。
刑事と入管は別の手続だが、資料は共有される
結論として、刑事事件と入管手続は別個の手続でありながら、判断の材料は共通しています。捜査段階で作成された供述調書や判決書は、入管の違反審査や口頭審理の資料としてそのまま使われます。
そのため、取調べで何をどう述べたかは後の入管手続に長く影響します。刑訴法198条2項は黙秘権の告知を、同条4項は供述調書の読み聞けと増減変更の申立てを定めています。記載が記憶と違うと感じたときにその場で申し立てておく意味は、入管の場面で大きく効いてきます。
どの処分が退去強制事由になるのか
退去強制事由は入管法24条に列挙されており、罪名と刑の重さの組合せで判定されます。まず4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますが、但書があり、全部執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予の場合も、実刑部分が1年以下であれば除外されます。
これに対し、4号チは薬物犯罪、すなわち麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反で有罪の判決を受けた者を対象とし、罰金でも、執行猶予でも、刑の免除でも該当します。在留資格の別表を問いません。4号リの柱書はニからチまでに掲げる者のほかという形になっているため、薬物は4号リの守備範囲の外にあります。
さらに入管法24条の2は、強盗、不同意性交等、自動車運転死傷処罰法2条・6条1項の危険運転致死傷等の重大犯罪で拘禁刑に処せられた者のうち、別表第一の在留資格をもって在留する者を対象とします。技能実習、特定技能、留学、技術・人文知識・国際業務は、いずれも別表第一に属します。
刑罰を要しない類型もあります。入管法24条3号の4の不法就労助長行為は、行為そのもので該当し、刑事処罰の有無を問いません。4号ロは不法残留、4号イは資格外活動の専従、4号ヘは入管法73条の罪により拘禁刑に処せられた場合です。
刑事処分がなくても在留は動く
在留資格は、有罪判決を経なくても失われることがあります。入管法22条の4は、当該在留資格に応じた活動を3か月以上行わないで在留していること、虚偽の申請による取得、住居地の届出義務違反などを取消事由としています。
身柄拘束が長引けば、勤務先や学校を離れた期間はそのまま積み上がります。同庁の令和7年の統計では在留資格の取消しは1,446件で、在留資格別では技能実習973件、留学343件が大きな割合を占めました。実習先を離れた状態が続いている方にとって、現実的なリスクです。あわせて、入管法19条の16・19条の17は所属機関等に関する届出を14日以内と定めており、事件のさなかでもこの義務は止まりません。
退去強制手続と在留特別許可
退去強制事由に該当すると判断されても、そこで自動的に日本を離れることになるわけではありません。入管法50条の在留特別許可があります。
同条2項は、収容令書により収容されている者と監理措置決定を受けた者に申請権を認めています。3項により、退去強制令書が発付された後は申請できません。いつ動くかが結果を左右します。5項は考慮要素を法定しており、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他が挙げられています。10項により、不許可の場合には理由を付記した書面が交付されます。現行の運用は2024年6月改定のガイドラインによります。
なお、1項但書の列挙に4号チは含まれていません。薬物であることのみを理由に、在留特別許可の判断で加重要件が課される構造にはなっていない点は、正確に押さえておく必要があります。収容に代わる仕組みとして監理措置があり、監理人の9割以上は親族や知人です。
送還はどのような形で行われるか
送還には複数の形があります。先に挙げた令和7年の内訳のとおり、大多数は自費出国です。これとは別に、出国命令という手続があります。入管法24条の3は、速やかに出国する意思をもって自ら出頭したこと、不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと、過去に退去強制されたことも出国命令により出国したこともないことなどを要件とします。要件のひとつに4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことがあるため、薬物に該当する方は出国命令を利用できません。同庁の令和7年の統計では、出国命令による出国は9,789人でした。
帰国した後、もう一度日本に来られるか
再来日の可否は、どの手続で日本を出たかによって大きく変わります。入管法5条1項9号は退去強制歴による上陸拒否期間を定め、イが1年、ロが5年、ハが10年です。ハは過去に退去強制されたことがある者が再び退去強制された場合を指します。他方、9号の2により、出国命令によって出国した者の上陸拒否期間は1年です。同じ帰国でも、その後の年数がまったく違います。
薬物については5条1項5号に年限の定めがなく、罰金であっても、外国の法令違反であっても該当します。この場合、再び入国する手段は入管法12条1項の上陸特別許可に限られます。また、1年以上の拘禁刑に処せられた者は5条1項4号の対象です(政治犯罪により処せられた者は除かれます)。
よくある誤解
執行猶予がついたのだから帰国せずに済む、という理解が最も多い誤解です。24条4号リについては但書が働きますが、4号チにはその構造がありません。同じ執行猶予でも罪名によって結論が変わります。罰金で終わったから在留には関係ない、という理解も同様で、薬物であれば罰金でも4号チに該当します。
もうひとつ、退去強制令書が出てからでも在留特別許可を求められると考えている方がいますが、入管法50条3項がこれを認めていません。動ける時期は限られています。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。通訳については、中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しており、ミャンマー語をはじめその他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
弁護方針として、執行猶予判決ではなお不十分であると考え、不起訴処分を得ることを最優先の目標としています。退去強制も上陸拒否も、有罪判決を出発点として組み立てられているためです。刑事事件と入管手続は最初から一体として設計し、退去強制事由の該当性についても故意や過失を争う余地を検討します。初回相談は無料。微信IDは matsumura1119 です。
おわりに
刑事の結果、在留の判定、出国の形、上陸拒否の年数は鎖のようにつながっています。前の輪で決まったことが次の輪を縛るため、早い段階の選択ほど重みを持ちます。逆に言えば、まだ前の輪の中にいるうちは、できることが残っているということでもあります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事のミャンマー語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099397/
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