舟渡国際法律事務所

日本での前科と再入国 上陸拒否事由と特別許可の実務

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日本での前科と再入国 上陸拒否事由と特別許可の実務

日本での前科と再入国 上陸拒否事由と特別許可の実務

2026/09/03

刑事事件の当事者となり、処分を受けて日本を離れた方から最も多く寄せられる問いは、いつになったらまた日本に入れるのか、というものです。家族が日本にいる、取引先がある、学校に戻りたい。事情はさまざまですが、答えを左右するのは心情ではなく、入管法が上陸拒否事由として何を挙げているかという条文の構造です。

ここでは、どの処分がどの号に結び付き、何年入れないのか、それとも年限の定めのない拒否になるのかを順に整理します。あわせて、期間の経過を待つ以外の道である上陸特別許可と、上陸拒否期間の短縮にも触れます。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、上陸拒否期間の短縮決定は340件でした。件数は多くありませんが、制度が紙の上だけのものではないことは確かです。

上陸拒否は査証審査とは別の関門である

結論から述べると、上陸拒否事由に当たる限り、査証が発給されていても、在留資格認定証明書を持っていても、空港の上陸審査で日本に入ることはできません。入管法5条1項は上陸を拒否される外国人を列挙しており、この判断は在留資格の該当性とは別の段階で行われます。

刑事処分と関係が深いのは、1年以上の拘禁刑に処せられた者を挙げる4号、薬物に関する5号、退去強制歴に関する9号、そして出国命令により出国した者に関する9号の2です。4号は政治犯罪により処せられた者を除いています。

退去強制を受けた場合の1年・5年・10年

退去強制を受けた事実そのものが、独立した上陸拒否事由になります。入管法5条1項9号は、イが1年、ロが5年、ハが10年という三段階を定めており、ハは過去に退去強制されたことがある者が再び退去強制された場合です。一度目と二度目では扱いが大きく変わります。

これに対し、9号の2は出国命令により出国した者について1年と定めています。入管法24条の3の出国命令は、速やかに出国する意思をもって自ら出頭したこと、不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと、過去に退去強制されたことも出国命令により出国したこともないことなどを要件とします。手続を選べる場面では、この差は後の再入国に直接効いてきます。

薬物事犯だけ年限がない理由

薬物に関する上陸拒否には期間の定めがありません。入管法5条1項5号は年限を置いておらず、罰金であっても、また外国の法令違反であっても該当します。期間の経過という考え方がそもそも用意されていないため、再び入国する手段は入管法12条1項の上陸特別許可に限られます。

在留中の扱いも同様に厳格です。入管法24条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反で有罪の判決を受けた者を退去強制事由としており、罰金でも、執行猶予でも、刑の免除でも該当し、在留資格の別表を問いません。なお、入管法50条1項但書の列挙に4号チは含まれていません。

令和6年12月12日施行の改正で、大麻取締法は大麻草の栽培の規制に関する法律へ改称され、大麻は麻薬及び向精神薬取締法上の麻薬となりました。使用罪が新設され、麻向法66条の2は7年以下の拘禁刑を定めています。なお、エトミデート等の指定薬物は薬機法による規制であり、入管法24条4号チが列挙する罪名には当たりません。

刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか

刑事処分の影響は、上陸拒否よりも先に、在留そのものに及びます。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書があり、全部執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予の場合も実刑部分が1年以下であれば除外されます。執行猶予でも当然に該当するという説明は正確ではありません。

他方、入管法24条の2は、強盗、不同意性交等、自動車運転死傷処罰法2条・6条1項の危険運転致死傷等の重大犯罪で拘禁刑に処せられた者のうち、別表第一の在留資格をもって在留する者を対象としています。就労資格や留学で在留している方は、この規定の射程に入ります。

刑事処分に至らなくても在留は動きます。入管法22条の4は、当該在留資格に応じた活動を3か月以上行わないで在留していることなどを在留資格取消しの事由としています。勾留が長引き、勤務先を離れたまま時間が経った場合に問題となる場面です。

再入国の可能性を残すためにできること

実際に取れる行動は、時期によって変わります。まだ刑事手続の中にいる段階では、不起訴処分を得ることが最も直接的です。有罪判決に至らなければ、5条1項4号にも24条4号チにも乗りません。

  • 供述調書の内容を確認し、事実と異なる部分があれば刑訴法198条4項の増減変更の申立てを行う。調書は違反審査や口頭審理でそのまま資料になる
  • 収容令書により収容されている場合や監理措置決定を受けた場合は、入管法50条2項により在留特別許可の申請ができる
  • 退去強制令書が発付された後は同条3項により申請できないため、時期の管理が要になる
  • 出国せざるを得ない場合でも、退去強制と出国命令のどちらになるかで後の上陸拒否期間が変わる

入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を考慮要素として法定しています。2024年6月改定のガイドラインが現行です。同条10項により、不許可の場合には理由を付記した書面が交付されます。

すでに出国した後であれば、入管法12条1項の上陸特別許可と、上陸拒否期間の短縮を求める道が残ります。家族の状況や生活実態を裏付ける資料をどれだけ具体的に示せるかが要になります。

よくある誤解

最も多い誤解は、罰金で済んだのだから在留や再入国には響かない、というものです。薬物に関しては罰金でも入管法24条4号チに該当し、5条1項5号の上陸拒否にも当たります。金額の多寡の問題ではありません。

次に多いのが、執行猶予がついたのだから退去強制されない、という理解です。24条4号リについては但書が働きますが、4号チにはその構造がありません。同じ執行猶予でも罪名によって結論が変わります。

また、上陸拒否期間が過ぎれば自動的に入国できるという理解も正確ではありません。期間の経過は前提条件のひとつにすぎず、査証の審査と上陸審査はその後にあらためて行われます。刑法34条の2の刑の消滅は日本の刑事法上の効果であり、入管法上の判断がそれに連動すると考えるべきではありません。

当事務所の対応

当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。通訳については、中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。

弁護方針として、執行猶予判決ではなお不十分であると考え、不起訴処分を得ることを最優先の目標に置いています。上陸拒否も退去強制も、有罪判決を出発点として組み立てられる仕組みだからです。刑事事件と入管手続は一体として設計します。退去強制事由の該当性そのものについても、故意や過失を争う余地がないかを検討します。初回相談は無料です。微信のIDは matsumura1119 です。

おわりに

再入国の可否は、感覚ではなく条文の組合せで決まります。どの号に当たるのか、期間の定めがあるのかないのか、まだ手続のどの段階にいるのか。この三点が分かれば、待つべきなのか、申請すべきなのか、それとも刑事手続の中でまだ動けるのかが見えてきます。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のスペイン語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099395/

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