本国の家族が日本の弁護士に依頼する方法 委任状・翻訳・連絡
2026/09/03
深夜に国際電話がかかってきて、日本にいる息子が警察に捕まったらしい、どうすればよいか分からない。そうしたご相談を、本国にいるご家族から受けることがあります。本人とは連絡が取れず、日本語も分からず、そもそも誰に何を頼めばよいのかが見えない。この状態が最も不安の大きい時期です。
この記事は、日本国外にいるご家族が、日本の弁護士に刑事弁護を依頼するときの手順を、実務の順序どおりに説明するものです。誰が依頼できるのか、委任状はどう作るのか、本人と連絡が取れないときはどうするのか、そして刑事処分が在留資格にどう跳ね返るのかまでを扱います。
家族も弁護人を選任できる
弁護人の選任は本人が行うのが原則ですが、家族にも選任する権限が認められています。刑事訴訟法は、被疑者・被告人本人のほか、その法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族および兄弟姉妹にも弁護人を選任することができると定めています。ですから、本人と連絡が取れない段階でも、親や配偶者から依頼して弁護士を動かすことは可能です。
実務では、まずご家族から事情をうかがい、弁護士が留置施設に接見に行きます。そこで本人の意思を確認し、本人からも選任の意思表示を得るという流れになります。国外にいるご家族が最初の一歩を踏み出せることには、時間的に大きな意味があります。
委任状の実際 署名は誰がどこで行うのか
刑事事件の弁護人選任届には、選任する人の署名が必要です。ご家族が選任する場合は、ご家族が署名した書面を用意します。国外にいる場合、原本の郵送に日数がかかりますので、まず画像で内容を確認し、原本を追送するという段取りをとることが多くあります。
本人が身体を拘束されている場合には、接見の際に弁護士が書面を持参し、本人に署名してもらうことができます。ここで注意が必要なのは、書面の内容を本人が理解できる言語で説明する必要があるという点です。通訳を伴わずに署名だけを求めることは、後の紛争の種になります。
本人と連絡が取れない 接見等禁止がついた場合
共犯者がいる事件や否認事件では、裁判所が家族との面会や手紙のやり取りを禁じる決定をすることがあります。これがいわゆる接見等禁止です。この決定が出ていると、ご家族は面会も手紙も差し入れもできないことがあります。
これに対して、弁護人または弁護人になろうとする者は、立会人なしで本人と接見することができます。刑事訴訟法39条1項が定める接見交通権です。接見等禁止がついている事件で、外部と本人をつなぐ唯一の経路が弁護人になるという場面は珍しくありません。ご家族から本人へ伝えたいことがあれば、弁護人を通じて伝えることを検討してください。
本国から送るべき資料と、翻訳が必要になるもの
ご家族に用意していただきたいのは、本人の身元と生活実態を示す資料です。旅券や在留カードの写し、家族関係を示す公的書類、送金の記録、日本での住居や勤務先が分かるもの。これらは、身体拘束を解くための主張にも、入管手続の資料にもなります。
外国語の公的書類は、日本語訳を添えて提出するのが通常です。翻訳の正確さは重要で、刑法には虚偽の通訳や翻訳を処罰する規定として171条が置かれています。家族や知人による簡易な翻訳で足りる場面と、翻訳者を立てるべき場面を、弁護人と相談して切り分けてください。
費用と送金についての考え方
費用については、面談または通信の場で内容を説明し、書面で確認したうえで進めます。金額の目安をウェブサイト上に表示することは当事務所では行っていませんので、具体的な見込みはご相談の際にお伝えします。初回のご相談は無料です。
国外からの送金では、送金人の名義と依頼者の関係、送金目的の記載などで確認を求められることがあります。時間がかかる場合もあるため、着手の順序については事前に打ち合わせておくとよいでしょう。連絡手段としては、微信(WeChat)を用いることができます。時差のある地域からでも、記録の残る形でやり取りができる点が実務上の利点です。
刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか
ご家族に最初にお伝えするのは、刑事事件の結論がそのまま在留の可否に直結するという点です。入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部の執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予でも実際に服する部分が1年以下なら除外されます。
他方、同条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を掲げ、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、在留資格の種類を問いません。出入国在留管理庁の令和7年末の統計では在留中国人は930,428人であり、生活の基盤が日本にある方が多数を占めます。刑事手続で作成された供述調書は、その後の違反審査や口頭審理で資料として用いられますので、取調べ段階から入管手続を見据えた対応が必要になります。
本国での扱いは本国の法律が決める
日本の刑事手続の結果が、本国でどのような法律上の意味を持つかは、本国の法制によって決まります。日本の弁護士がお答えできるのは、日本で何が行われ、どの書類が作成されるかという範囲までです。本国での就職や資格、出国に関わる影響については、本国の弁護士に確認していただく必要があります。
よくある誤解
- 本人が署名しなければ何も始められない、という誤解。家族にも弁護人を選任する権限があります。
- 接見等禁止がつけば誰も会えない、という誤解。弁護人は接見できます。
- 翻訳は誰がやっても同じ、という誤解。提出する書面の翻訳には正確さが求められます。
- 刑事事件が終われば在留の問題も終わる、という誤解。入管手続はその後に続きます。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しているため、本国のご家族との連絡や、接見での意思確認を中国語で行うことができます。その他の言語については、事案に応じて通訳人を手配します。
弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分と考え、不起訴処分を得ることを最優先の目標とします。刑事事件と入管手続は一体として設計し、退去強制事由への該当性についても故意や過失の有無を争う視点で対応します。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
国外から日本の刑事手続に関わるとき、最も足りなくなるのは情報です。何が起きていて、次に何が決まるのか。それが分かるだけで、ご家族が取れる行動の幅は変わります。まずは分かっている範囲の事実を整理して、弁護士に伝えるところから始めてください。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099385/
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