日本で刑事事件を起こした後の再来日 上陸拒否期間と在留資格認定証明書
2026/09/03
日本で働いていた期間に刑事事件の当事者となり、いったん帰国した方から、もう一度日本で働けるだろうかというご相談を受けます。飲食店の調理担当として技能の在留資格で滞在していた方、留学生として来日した方、家族と一緒に暮らしていた方など、事情はさまざまです。
再来日できるかどうかは、気持ちや反省の深さではなく、どの条文に該当する事実があるかで枠組みが決まります。この記事では、その枠組みを条文に沿って示したうえで、実際にどこから手続を始めるのかを説明します。ネパール語話者の方からのご相談が近年増えているため、その視点も踏まえて書きます。
再来日の可否は罪名と刑の重さで枠が決まる
上陸を拒否されるかどうかは、入管法5条1項に列挙された事由に該当する事実があるかどうかで判断されます。ここで効いてくるのは、どんな罪名で、どの程度の刑を受けたのか、そして日本をどのように出国したのかという三点です。
出入国在留管理庁の令和7年末の統計では、在留ネパール人は300,992人です。また警察庁の令和7年確定値では、来日外国人の総検挙人員12,777人のうちネパールは452人でした。この来日外国人という区分は、永住者・永住者の配偶者等・特別永住者・在日米軍関係者・在留資格不明者を除く定義である点に注意が必要です。
条文と帰結の対応を確認する
自分の事案がどの号に当たるのかを整理すると、待つべき期間の見当がつきます。
| 事情 | 条文 | 帰結 |
|---|---|---|
| 1年以上の拘禁刑に処せられた | 入管法5条1項4号 | 上陸拒否(政治犯罪による場合を除く) |
| 薬物に関する法令違反 | 入管法5条1項5号 | 期間の定めのない上陸拒否 |
| 過去に退去強制された | 入管法5条1項9号 | 1年・5年・10年 |
| 出国命令により出国した | 入管法5条1項9号の2 | 1年 |
この表で最も注意していただきたいのは薬物の行です。5条1項5号には年数が付いておらず、罰金で終わった場合でも、外国の法令に違反した場合でも該当します。時の経過によって自動的に解消されることはありません。
在留資格認定証明書の交付申請という入口
上陸拒否期間が経過した後、あるいは上陸拒否事由に該当しない場合に、再来日の手続は在留資格認定証明書の交付申請から始まります。この申請は、日本国内の受入機関や配偶者等が代理人として地方出入国在留管理局に対して行うことができます。本人が国外にいても手続が進むという点が実務上の利点です。
審査では、今回の在留目的が実質を伴うものかが見られます。就労であれば雇用の実態、契約内容、勤務先の受入体制。家族との同居であれば、婚姻や親子関係の実体と生計の見通し。過去に事件があった場合には、その経緯と現在の生活状況を資料で説明することになります。証明書が交付されても、それは上陸許可そのものではなく、在留資格該当性が確認されたことを意味するにとどまります。
不許可になったときに何を見直すか
不交付や不許可という結果が出た場合、同じ資料でもう一度出しても結論は変わりにくいのが実情です。見直すべきは、事件に関する説明が具体的かどうか、受入機関の実態を示す資料が足りているか、そして本人が日本で行う活動と在留資格の要件が本当に噛み合っているかという点です。
なお、上陸拒否事由に該当する場合でも、入管法12条1項に上陸特別許可の制度があります。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、上陸拒否期間の短縮決定が340件ありました。数字が示すとおり例外的な取扱いですが、日本に配偶者や未成年の子がいる場合など、検討に値する事情はあります。
刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか
まだ日本国内で刑事手続が進んでいる段階の方には、この点を最初にお伝えしています。入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部の執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予でも実際に服する部分が1年以下なら除外されます。
他方、同条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を掲げ、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、在留資格の種類も問いません。さらに薬物に該当する方は入管法24条の3の出国命令を使えません。出国命令の要件が、不法残留以外の一定の退去強制事由に該当しないことを求めているためです。刑事事件の段階での結論が、そのまま将来の再来日の可否につながっています。
本国での扱いは本国の法律が決める
日本の裁判所の判決や、日本で受けた処分が、本国でどのように扱われるかは本国の法制によって決まります。日本の弁護士がお答えできるのは、日本法の側で何がどう記録され、日本の手続にどう影響するかという範囲です。本国での就職やパスポートの取扱いへの影響については、本国の弁護士に確認していただく必要があります。
よくある誤解
- 執行猶予がついたから在留にも影響しない、という誤解。薬物事件は執行猶予でも退去強制事由に該当します。
- 時間が経てばどんな事件でも入国できる、という誤解。薬物には期間の定めがありません。
- 新しい会社が受け入れてくれれば審査は通る、という誤解。受入先の実態と在留資格の要件が噛み合っている必要があります。
- 証明書が出れば必ず入国できる、という誤解。証明書は上陸許可そのものではありません。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ネパール語をはじめとするその他の言語については、事案に応じて通訳人を手配します。
刑事手続が続いている段階では、執行猶予判決ではなお不十分と考え、不起訴処分を得ることを最優先の目標とします。将来の再来日を左右するのが判決の有無だからです。刑事事件と入管手続は一体として設計します。刑事手続で作成された供述調書が、その後の違反審査や口頭審理で資料になるためです。退去強制事由への該当性についても、故意や過失の有無を争う視点で対応します。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
再来日の見通しを立てる作業は、過去の書類を一枚ずつ確認するところから始まります。判決書、不起訴処分告知書、退去強制令書または出国命令書。これらが揃えば、待つべき期間と次に打つ手はかなり具体的に見えてきます。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のネパール語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099381/
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