送還された後に日本へ戻る道 上陸特別許可と在留資格認定証明書
2026/09/03
日本を出てから何年経てば戻れますか。この質問には、実は一つの答えがありません。同じように日本を離れた方でも、退去強制令書によって送還されたのか、出国命令によって自ら出国したのか、どの事由に該当したのかによって、待つべき年数も、その先の手続も変わるからです。
この記事は、すでに日本を出た方と、日本に残るご家族の双方に向けて書いています。まず自分がどの類型に当たるのかを確認する方法から始め、期間が明けた後の手続、期間中でも検討できる制度、そして家族関係がどう評価されるのかまでを順に説明します。
まず、自分の出国がどの手続だったのかを確認する
最初にすべきことは、日本を出た手続が退去強制だったのか出国命令だったのかを確定させることです。この二つは似て見えますが法律上の扱いが違い、その後の上陸拒否期間が異なるからです。
出入国在留管理庁の令和7年の統計では、退去強制令書による送還が7,563人、出国命令による出国が9,789人でした。パスポートの押印や退去強制令書の写し、出国命令書の写しが残っていれば、それが最も確実な手がかりです。
上陸拒否期間 1年・5年・10年という区分
上陸拒否期間は入管法5条1項に定められています。同項9号は、過去に退去強制を受けた者について、イが1年、ロが5年、ハが10年という期間を定めています。ハの10年は、過去に退去強制されたことがある者が再び退去強制された場合です。
これに対して同項9号の2は、出国命令により出国した者について1年と定めています。不法残留を理由に自ら出頭し、出国命令で出国した方は、この1年が基準になります。出国命令の制度そのものが、速やかに出国する意思をもって自ら出頭したことなどを要件としているためです。
また同項4号は、1年以上の拘禁刑に処せられた者を上陸拒否事由としています。政治犯罪による場合は除かれます。
薬物事件だけは期間の定めがない
薬物に関する上陸拒否には期間の定めがありません。入管法5条1項5号は、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令に違反した者を上陸拒否事由としており、この号には年数が付いていません。罰金で終わった場合でも、日本ではなく外国の法令に違反した場合でも該当します。
したがって、何年待てば戻れるという発想が通用しないのが薬物事件です。残る道は、上陸の場面で個別に判断される上陸特別許可のみということになります。この点を早い段階で理解しておくことが重要です。
期間が明けた後 在留資格認定証明書の手続
上陸拒否期間が経過した後に日本で働き、または家族と暮らそうとする場合は、在留資格認定証明書の交付申請から始めるのが通常の道筋です。この申請は、日本国内の受入機関や配偶者などが代理人として地方出入国在留管理局に行うことができます。日本に残るご家族が動けるという点が、この手続の実務上の利点です。
ただし、過去に退去強制歴があることは審査の場で当然に考慮されます。何があったのか、その後どう生活してきたのか、今回の在留目的が実質を伴うものかを、資料で説明する必要があります。証明書が交付された場合でも、それは上陸許可そのものではなく、在留資格該当性が確認されたことを意味するにとどまります。
期間中でも検討できる道 上陸特別許可と期間の短縮
上陸拒否事由に該当する場合でも、法務大臣が特別に上陸を許可する制度が入管法12条1項に置かれています。これが上陸特別許可です。判断は個別の事情に基づく裁量ですので結果を保証できませんが、制度としての道は残されています。
また、出入国在留管理庁の令和7年の統計では、上陸拒否期間の短縮決定が340件ありました。件数から分かるとおり、これは例外的な取扱いです。もっとも、日本に配偶者や未成年の子がいる、日本で治療を受ける必要があるといった具体的な事情がある場合には、検討に値する選択肢です。
家族の存在はどう評価されるか
家族関係は、それだけで結論を決める要素ではありませんが、判断の中核に位置する事情です。在留特別許可の場面では、入管法50条5項が、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を考慮すると定めています。再入国の判断でも、同様の観点が働きます。
実務で説明すべきなのは、家族が存在するという事実よりも、その関係が実体を伴って継続してきたことです。送金の記録、通信の履歴、渡航の記録、子の就学状況など、離れていた期間の積み重ねが資料になります。
刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか
再入国の可否は、多くの場合、過去の刑事処分の内容によって決まります。入管法24条4号リは無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部の執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予でも実際に服する部分が1年以下なら除外されます。
これに対して同条4号チは、薬物に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を掲げ、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。しかも薬物該当者は入管法24条の3の出国命令を利用できません。出国命令の要件が、不法残留以外の一定の退去強制事由に該当しないことを求めているからです。刑事事件の段階で薬物の罪名を避けられるかどうかが、その後の再来日の可能性まで左右するということです。
よくある誤解
- 5年待てば誰でも戻れる、という誤解。期間は事由によって1年・5年・10年と分かれ、薬物には期間そのものがありません。
- 日本人の配偶者がいれば必ず許可される、という誤解。重要な事情ですが、それだけで結論が決まるものではありません。
- とりあえず空港まで行けば何とかなる、という誤解。上陸拒否事由に該当したまま渡航すれば、退去を求められる可能性があります。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ベトナム語をはじめとするその他の言語については、事案に応じて通訳人を手配します。
まだ日本で刑事事件が進行している段階であれば、弁護方針として不起訴処分を最優先の目標に置きます。執行猶予判決でも在留や再入国の場面で不利益が残るためです。刑事事件と入管手続は一体として設計します。刑事手続で作成された供述調書が違反審査や口頭審理の資料になるからです。すでに送還された方については、日本に残るご家族と連絡を取りながら、必要な資料を整えていきます。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
戻れるかどうかは、待つ年数だけで決まるものではありません。どの手続で出国したのか、どの事由に該当したのか、そして離れていた期間に何を積み上げたのかが、次の申請の内容そのものになります。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099379/
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