舟渡国際法律事務所

日本の前科はいつまで残るのか 刑の消滅と記録の別

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日本の前科はいつまで残るのか 刑の消滅と記録の別

日本の前科はいつまで残るのか 刑の消滅と記録の別

2026/09/03

刑を終えてから何年経てば前科は消えるのか。外国人の依頼者から最も繰り返し尋ねられる質問の一つです。永住申請を控えた方、帰化を考えている方、在留期間の更新のたびに過去の事件を思い出して不安になる方から、同じ問いが寄せられます。

結論から言えば、日本法には刑の言渡しの効力が失われるという制度があり、そこには年数が定められています。しかし、それは記録が世の中から消えるという意味ではありません。この記事では、消えるものと消えないものを分けたうえで、外国人にとって最も重要な、在留資格と入管審査への跳ね返りを整理します。

前科という言葉は法律用語ではない

前科という語は日常語であり、法律の条文に定義されている用語ではありません。実務でこの語が指しているのは、有罪判決が確定したという事実と、それを記録した公的な記録の存在です。逮捕されただけ、送検されただけ、あるいは起訴猶予などの不起訴処分で終わった事件は、有罪判決ではないため、ここでいう前科には当たりません。

これに対して、捜査を受けた事実そのものを指して前歴と呼ぶことがあります。前科と前歴は、記録される場所も後の手続での意味も異なります。この二つを分けて考えることが、正確な見通しの出発点です。

刑法34条の2による刑の消滅 10年と5年

刑法34条の2は、一定の期間が経過したときに刑の言渡しが効力を失うと定めています。具体的には、拘禁刑以上の刑の執行を終わり、または執行の免除を得た者が、罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したときに、刑の言渡しは効力を失います。罰金以下の刑については、同じ条件で5年です。

また、全部の執行猶予が取り消されないまま猶予期間を経過したときにも、刑の言渡しは効力を失うという定めが刑法にあります。執行猶予期間を無事に過ごすことには、この意味があります。

注意すべきは起算点です。10年の起算点は判決の日ではなく、刑の執行を終えた日、または執行の免除を得た日です。実刑の場合は出所した日から数え始めることになります。また、その期間中に罰金以上の刑に処せられれば条件を満たさなくなります。

消えるのは刑の言渡しの効力であって記録ではない

刑の消滅が生じても、捜査機関や裁判所が保管している記録が物理的に消去されるわけではありません。有罪判決が確定すると、その事実は検察庁が管理する犯歴の記録に登載され、市区町村にも法令に基づく名簿が置かれます。刑の消滅は、これらの記録のうち、選挙権や各種資格の制限といった法律上の効果を将来に向かって解除する制度です。

したがって、刑の消滅が生じた後でも、法令に根拠のある照会に対しては記録が用いられる場面が残ります。前科は完全に無かったことになるという理解は、実務とはずれています。

入管はどこまで把握しているのか

入管は、退去強制事由に該当するかどうかを判断する立場にあるため、刑事処分に関する情報を独自に把握する仕組みを持っています。入管の審査で問題になるのは、刑の消滅が生じたかどうかではなく、その人が退去強制事由に該当する事実を有するかどうかです。

また、在留期間の更新や変更の審査、永住許可の審査では、素行が良好であるかどうかが判断要素になります。ここでは刑の言渡しの効力の有無よりも、どのような事件を起こし、その後どう生活してきたかという具体的な事情が見られます。刑が消滅したから審査で一切考慮されない、という関係にはなっていません。

刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか

刑事処分は、刑の消滅を待つまでもなく、判決の時点で在留資格に直結します。入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部の執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予でも実際に服する部分が1年以下なら除外されます。

他方、同条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を掲げ、罰金でも執行猶予付きでも刑の免除でも該当します。在留資格の種類も問いません。さらに入管法5条1項5号の薬物に関する上陸拒否には期間の定めがなく、いったん該当すれば、年数の経過によって自動的に解消されることはありません。同項4号は1年以上の拘禁刑に処せられた者、9号は退去強制歴に応じた1年・5年・10年の上陸拒否期間を定めています。

警察庁の令和7年確定値によれば、永住者の総検挙人員は3,175人で、国籍別では中国籍が1,015人と最も多くなっています。永住資格を得た後であっても刑事事件と無縁ではいられないことを、この数字は示しています。

帰化や永住の審査で見られること

国籍法5条1項3号は、帰化の条件として素行が善良であることを定めています。ここでいう素行は、刑事処分の有無だけでなく、税や社会保険の納付状況、交通違反の履歴なども含めて総合的に判断されます。刑の消滅が生じていることは事情の一つとして説明できますが、それだけで素行要件が満たされると決まるものではありません。

永住許可の審査でも同様に、事件からの経過年数、反省と被害弁償の状況、家族関係、就労の安定といった具体的事情が積み上げられて評価されます。時の経過を待つだけでなく、その間の生活の記録を残しておくことが実際には有効です。

よくある誤解

  • 10年経てば入管の記録からも消える、という誤解。刑の言渡しの効力と行政機関の保有情報は別問題です。
  • 執行猶予なら前科にならない、という誤解。執行猶予付き判決も有罪判決です。
  • 不起訴なら記録が一切残らない、という誤解。有罪判決ではありませんが、捜査を受けた事実の記録は残ります。
  • 薬物事件も年数が経てば入国できる、という誤解。薬物に関する上陸拒否には期間の定めがありません。

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。

弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分であると考え、不起訴処分を得ることを最優先の目標に置いています。前科という記録を残さないという観点からも、この差は決定的だからです。また、刑事事件と入管手続を一体として設計します。刑事手続で作成された供述調書は、その後の違反審査や口頭審理で資料として用いられるためです。退去強制事由への該当性についても、故意や過失の有無を争う視点で対応します。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

おわりに

前科がいつ消えるかという問いは、実は二つに分かれます。法律上の効力がいつ失われるかという問いと、記録がどこにどう残るかという問いです。分けて考えれば、今どこに手を打つべきかが見えてきます。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099377/

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