日本の犯罪経歴証明書(無犯罪証明)の取り方と記載内容
2026/09/03
本国に戻って就職しようとしたとき、あるいは第三国のビザや永住権を申請しようとしたときに、日本に滞在していた期間についての犯罪経歴証明書を出すよう求められることがあります。無犯罪証明、警察証明、ポリスクリアランスと呼び方はさまざまですが、日本で発行されるものは実質的に一種類しかありません。
この記事では、証明書を誰が発行しどこにどう申請するのか、そして最も多く質問をいただく点、すなわち不起訴で終わった事件や執行猶予の付いた事件がどう扱われるのかを整理します。あわせて、証明書とは別の物差しである在留資格への影響にも触れます。
日本の犯罪経歴証明書を発行するのは警察である
日本の犯罪経歴証明書は、都道府県警察の鑑識部門を窓口として、警察庁が発行する公文書です。日本の役所に無犯罪証明という名称の書類は存在せず、正式には犯罪経歴に関する証明という位置づけです。市区町村役場や法務局、入管では発行できませんので、窓口を間違えないことが出発点です。
もう一つ押さえておきたいのは、発行の目的が限定されている点です。この証明書は、外国の政府機関が提出を求めている場合に限って発行されます。日本国内の民間企業への就職や賃貸借契約のために自由に取得できる書類ではなく、申請の際には、渡航先や本国の官庁が証明書を要求していることが分かる資料を持参する必要があります。
申請は本人が出向き、その場で指紋を採る
日本国内にいる方の申請は、住居地を管轄する都道府県警察本部に本人が出向いて行うのが原則です。窓口では旅券と在留カードで身分を確認し、提出先の国が証明書を求めていることを示す資料を確認したうえで、その場で指紋を採ります。
指紋を採るのは形式的な手続ではありません。外国人の氏名は、旅券のローマ字表記と在留カードの表記、過去の記録に残る表記が食い違うことが珍しくなく、氏名と生年月日だけでは同一人であることを確定できない場合があるためです。完成した証明書は封をされた状態で交付され、封を開けると効力を失う扱いが一般的です。受取までの期間や必要書類は都道府県警察ごとに運用が異なりますので、出向く前に電話で確認しておくとよいでしょう。
すでに日本を離れている場合は在外公館を経由する
帰国後に証明書が必要になった場合は、居住している国にある日本の大使館または総領事館に申請します。そこで指紋を採り、書類が警察庁に送られ、証明書が同じ経路で戻るため、国内より時間がかかります。申請期限がある方は逆算して早めに動いてください。
ここでよく問題になるのが代理受領です。指紋の採取を伴うため、家族や勤務先の担当者が本人に代わって申請し受け取ることは原則として認められていません。委任状があれば足りる書類ではないのです。
証明書に何が載るのか 不起訴・執行猶予・刑の消滅
証明書に記載されるのは確定した有罪の裁判に関する事項であり、不起訴で終わった事件は記載されません。逮捕され勾留された経過があっても、検察官が不起訴処分にした事件は有罪の裁判ではないからです。弁護活動が不起訴処分を最優先の目標に置く理由の一つが、ここにあります。
執行猶予が付いた判決は有罪判決ですので、猶予期間中は有罪の裁判が存在する状態です。もっとも刑法には、全部の執行猶予が取り消されないまま猶予期間を経過したときは刑の言渡しが効力を失うという定めがあります。また刑法34条の2は、拘禁刑以上の刑の執行を終わり、または執行の免除を得た者が、罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したときに刑の言渡しが効力を失うとし、罰金以下の刑については5年としています。
ただし刑の消滅は、刑の言渡しの法律上の効力を将来に向かって失わせる制度であって、捜査機関が保管する記録そのものが消去されるという意味ではありません。証明書への記載と、行政機関が内部で保有する情報とは区別して考える必要があります。
刑事処分は在留資格にどう跳ね返るか
証明書に載るかどうかという問題よりも先に、刑事処分は日本での在留に直接影響します。入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由として掲げていますが、同号には但書があり、全部の執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予の場合も、実際に服する部分が1年以下であれば除外されます。執行猶予なら必ず退去強制になるという説明は正確ではありません。
これに対して同条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を掲げ、罰金でも執行猶予付きでも刑の免除でも該当し、在留資格の種類も問いません。
再入国の場面でも同じ構造が現れます。入管法5条1項5号の薬物に関する上陸拒否には期間の定めがなく、罰金であっても外国の法令違反であっても該当します。同項4号は1年以上の拘禁刑に処せられた者を、同項9号は退去強制歴について1年・5年・10年の上陸拒否期間を、9号の2は出国命令により出国した者について1年を定めています。
本国での効果は本国の法律が決める
日本が発行した犯罪経歴証明書や日本の判決が、本国でどのような法律上の意味を持つかは、本国の法制によって決まります。日本の弁護士が答えられるのは、日本法の側で何が記録され何が記録されないのかという範囲までです。本国での就職資格や出国管理に日本での事件がどう影響するかは、本国の弁護士に確認を要します。
よくある誤解
- 逮捕されたことがあるから必ず載る、という誤解。記載の対象は確定した有罪の裁判です。
- 委任状があれば家族が代わりに取れる、という誤解。指紋採取を伴うため本人出頭が原則です。
- 刑が消滅すれば入管も把握できなくなる、という誤解。刑の言渡しの効力と行政機関の保有情報は別問題です。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ベトナム語をはじめとするその他の言語については、事案に応じて通訳人を手配します。
弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分であると考え、不起訴処分を得ることを最優先の目標に置いています。あわせて、刑事事件と入管手続を一体として設計します。刑事手続で作成された供述調書は、その後の違反審査や口頭審理で資料として用いられるためです。退去強制事由への該当性についても、故意や過失の有無を争うという視点で対応しています。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
犯罪経歴証明書は、過去を証明する書類であると同時に、これからの生活の入口に置かれた書類でもあります。事件が起きた直後の対応が、何年も先の書類に影響するということです。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099375/
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