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退去強制令書に対する取消訴訟|執行停止と送還の関係

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退去強制令書に対する取消訴訟|執行停止と送還の関係

退去強制令書に対する取消訴訟|執行停止と送還の関係

2026/09/03

退去強制令書を受け取った日から、別の時計が動き始めます。それまでの手続とは違い、ここから先は期限に区切られた争い方になるからです。

令書の発付は行政処分ですから、その取消しを求めて裁判所に訴えを起こすことができます。ただし、訴えを起こしただけでは送還は止まりません。止めるための申立ては、訴訟とは別に行う必要があります。この二つを混同すると、争っている最中に送還されるという事態が起こり得ます。

この記事では、令書発付後にどのような争い方があり、どこに時間の制約があるのかを整理します。

退去強制令書の発付は、取消訴訟の対象になります

退去強制令書の発付は行政処分であり、裁判所にその取消しを求めることができます。あわせて、その前提となった法務大臣の裁決の取消しを求めることも考えられます。

訴訟で問題になるのは、退去強制事由の認定に誤りがないか、在留特別許可を与えなかった判断が裁量の範囲を超えていないか、といった点です。手続の各段階で作られた違反審査調書や口頭審理調書は、そのままここでの資料になります。前の段階でどう述べていたかが、訴訟の見通しを大きく左右するということです。

出訴期間という時計があります

行政処分の取消しを求める訴えには、提起できる期間が定められています。処分があったことを知った時点から一定の期間内に起こさなければならず、期間を過ぎると、内容の当否を判断してもらえないまま終わります。

したがって、令書や決定の書面は原本を保管し、受け取った日付を必ず記録してください。日付が争いになることは実務上珍しくありません。相談の際にも、最初に確認されるのはこの日付です。

訴えても送還は自動的には止まりません

ここが最も誤解の多い点です。取消訴訟を起こしても、それだけで処分の効力や執行が止まるわけではありません。送還を止めるためには、執行停止の申立てを別に行い、裁判所の判断を得る必要があります。

執行停止では、送還されることによって回復の困難な損害が生じるかどうかなどが審理されます。家族関係、治療の必要性、本国での事情など、示すべき事情は事案によって異なります。いずれにせよ、送還のタイミングは待ってくれませんので、訴訟提起と同時か、それ以前から準備を始めることになります。なお、難民認定の申請中は原則として送還が停止される仕組みがありますが、これには例外が設けられています。

送還の実際

数字を見ると、送還は現実に執行されています。出入国在留管理庁の令和7年の統計によれば、退去強制令書による送還は7,563人で、内訳は自費出国6,677人、国費送還のうち護送官が同行しないものが505人、護送官が同行するものが318人でした。護送官付きの国費送還は過去最高となっています。

同じ年、出国命令による出国は9,789人でした。争うのか、それとも別の出国方法を選ぶのかという判断は、こうした実情を踏まえて行う必要があります。

令書が発付されると、できなくなることがあります

時期による制約は法律に明記されています。入管法50条3項により、退去強制令書が発付された後は、在留特別許可の申請ができません。50条2項が申請権を認めているのは、収容令書により収容されている者と監理措置決定を受けた者ですから、令書発付前にどこまで準備できていたかが決定的です。

令書発付後の争いは、行政訴訟という別の土俵に移ります。土俵が変われば、必要な資料も主張の組み立て方も変わります。

刑事処分は在留と再入国に跳ね返ります

刑事事件の結論は、令書発付の前提にも、将来の再入国にも影響します。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付された場合は除かれ、一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除かれます。24条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反で有罪の判決を受けた者を掲げ、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。

再入国については、入管法5条1項9号が退去強制歴による上陸拒否期間を定め、初回は5年、過去に退去強制歴がある場合は10年としています。同項9号の2は、出国命令により出国した者について1年としています。他方、同項5号の薬物関係には年限の定めがなく、再入国は12条1項の上陸特別許可によるほかありません。

取れる行動

  • 令書や決定の書面を原本で保管し、受け取った日付を記録する
  • 訴訟と執行停止は別の手続であることを前提に、両方の準備を同時に進める
  • 違反審査調書や口頭審理調書で何を述べたかを確認する
  • 家族関係、治療、就学など、回復困難な損害に関わる資料を整理する
  • 刑事事件が並行しているときは、供述の内容を弁護人と確認する

よくある誤解

第一に、裁判を起こせば送還は止まるという理解。執行停止の申立てが別に必要です。

第二に、令書が出た後でも在留特別許可を申請できるという理解。入管法50条3項により、申請はできません。

第三に、いったん帰国して落ち着いてから争えばよいという理解。退去強制を受ければ上陸拒否期間が生じ、薬物の場合は年限の定めがありません。

当事務所の対応

当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。外国人事件については中国語の専属通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。

刑事事件では、執行猶予判決ではなお不十分であると考え、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事の供述調書が違反審査調書や口頭審理調書の前提資料となり、それが行政訴訟の記録にもつながるため、刑事事件と入管手続を一体として設計し、退去強制事由の該当性についても故意や過失を争う視点で対応します。初回相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

おわりに

令書が出た後の争いは、期限との競走という性格を帯びます。書面を受け取った日に何をするかが、その後の選択肢の幅を決めます。本記事は一般的な解説ですので、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099351/

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