舟渡国際法律事務所

在留特別許可で重視される事情|ガイドラインの読み方

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在留特別許可で重視される事情|ガイドラインの読み方

在留特別許可で重視される事情|ガイドラインの読み方

2026/09/03

在留特別許可について調べていると、家族がいれば大丈夫、あるいは前科があればもう無理、といった断定的な説明に行き当たります。どちらも実際の判断の仕方とは違います。

この判断には、条文に書かれた考慮要素と、それを具体化した運用基準があります。基準は公表されており、誰でも読めます。読み方さえ分かれば、自分の事案でどの事情を積み上げ、どの事情に説明を用意すべきかを、ある程度は自分で見通すことができます。

ここでは、入管法50条5項と2024年6月に改定された在留特別許可に係るガイドラインを手がかりに、何が重く見られるのかを整理します。

判断の物差しは入管法50条5項に列挙されています

在留特別許可の考慮要素は、法律に明記されています。入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間、その他の事情を考慮する旨を定めています。

この列挙は、判断が担当者の気分で動くものではないことを意味します。同時に、その他の事情という受け皿があるとおり、事案ごとの個別事情を持ち込む余地も残されています。だからこそ、何を、どのような資料で示すかが結果を左右します。

ガイドラインは事情を積極要素と消極要素に分けて整理しています

実務の運用基準は、2024年6月に改定された在留特別許可に係るガイドラインです。ガイドラインは、条文の考慮要素をさらに細かく分け、在留を認める方向に働く積極要素と、認めない方向に働く消極要素として並べています。

重要なのは、これが点数表ではないという点です。積極要素が多ければ自動的に許可される、という仕組みではありません。個々の事情の重さと、事案全体の均衡で判断されます。したがって、要素を数えるのではなく、なぜこの人にとって日本での生活が実質を伴っているのかを、資料で語らせる必要があります。

積極方向に働く事情

積極要素の中心にあるのは、日本社会との結びつきの実質です。典型的には次のような事情が挙げられます。

  • 日本人、特別永住者、永住者などとの間に、実体を伴う婚姻関係や親子関係があること
  • 日本で出生し、または長期間在留して教育を受けている子について、監護養育の必要があること
  • 在留期間が長く、生活の基盤が日本にあること
  • 本人が難病等により本邦での治療を必要とする事情があること
  • 人身取引等の被害者であるなど、在留するに至った経緯に酌むべき点があること

ここで大切なのは、関係が書類の上だけで存在していないことを示すことです。同居の実態、家計の実情、日々のやり取り、周囲の人の認識といった、生活の手ざわりが伝わる資料が必要になります。

消極方向に働く事情

消極要素の中心は、法秩序への違反の重さと、繰り返しの有無です。重大な犯罪による処罰歴、退去強制歴、偽装婚や虚偽の申請、不法就労助長への関与、出入国管理秩序を害する行為への継続的な関わりなどが、これに当たります。

ただし、消極要素があれば直ちに終わり、というわけではありません。ガイドラインの構造は、積極要素と消極要素を対置して総合判断する形になっています。消極要素がある事案では、その経緯や再犯防止の環境をどこまで具体的に示せるかが問題になります。

刑事処分は在留にどう跳ね返るか

刑事事件の結論は、素行という考慮要素に反映されるだけでなく、そもそも退去強制事由に当たるかどうかを左右します。

入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付された場合は除かれます。一部猶予の場合も、実刑部分が1年以下であれば除かれます。他方、24条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反で有罪の判決を受けた者を掲げ、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。在留資格の種類も問いません。

また24条4号の2は、強盗、不同意性交等、危険運転致死傷などの重大犯罪で拘禁刑に処せられた者のうち、別表第一の在留資格をもって在留する者を対象としています。なお、50条1項但書の列挙に4号チは含まれないため、薬物事件であることをもって在留特別許可の加重要件が課されるわけではありません。

資料はどう作るか

準備の要点は、主張したい事情ごとに、それを裏づける客観資料を一対一で用意することです。

  • 婚姻や親子関係については、公的書類に加え、同居の期間や生活費の流れが分かる資料
  • 子については、在籍状況、学校での様子、日本語での就学状況が分かる資料
  • 就労や納税、社会保険の状況を示す資料
  • 再発防止については、住居、就労先、身元を引き受ける人の関与が具体的に分かるもの
  • 刑事事件が並行している場合は、供述調書の内容と、その入管手続への影響の確認

よくある誤解

第一に、日本人の配偶者がいれば当然に許可されるという理解。婚姻関係の実体が問われるため、形式だけでは足りません。

第二に、前科があるので何をしても無駄だという理解。積極要素と消極要素を総合して判断する仕組みである以上、示すべき事情を示す意味は残ります。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、在留特別許可の許可は1,026件でした。制度は閉ざされていません。

第三に、ガイドラインは非公開だという理解。公表されており、読むことができます。

当事務所の対応

当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。外国人事件については中国語の専属通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。

刑事事件では、執行猶予判決ではなお不十分であると考え、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事手続で作られた調書は入管手続でも前提資料として扱われるため、両者を一体のものとして設計し、退去強制事由の該当性についても故意や過失の有無を争う視点を持ちます。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

おわりに

ガイドラインを読むことは、自分の事案の弱点を先に知ることでもあります。弱点が分かれば、そこに説明と資料を当てる準備ができます。本記事は一般的な解説にとどまりますので、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099337/

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