舟渡国際法律事務所

日本のブラックリストの正体 上陸拒否期間という制度を条文から読む

お問い合わせはこちら

日本のブラックリストの正体 上陸拒否期間という制度を条文から読む

日本のブラックリストの正体 上陸拒否期間という制度を条文から読む

2026/09/03

日本のブラックリストに載ったらもう入国できないのか。この質問は、退去強制や出国命令を経験した方からも、これから手続に入る方からも、同じ言葉で寄せられます。しかし、この問いの前提そのものを一度崩す必要があります。日本の出入国管理には、ブラックリストという名前の単一の名簿は存在しません。

実際にあるのは、出入国管理及び難民認定法5条1項が列挙する上陸拒否事由という仕組みです。誰かが名簿に名前を書き加えるのではなく、あなたの過去の事実がどの号に当てはまるかによって、結論と期間が決まります。この記事では、その仕組みを条文に即して説明し、何年で消えるのか、消えない類型はどれか、という実際の疑問に答えます。

名簿ではなく条文の当てはめである

上陸を拒否されるかどうかは、担当者の裁量で作られた名簿ではなく、同法5条1項の各号への当てはめによって決まります。したがって、自分がブラックリストに載っているかを確かめる方法を探すより、自分の過去の事実がどの号に当たるかを確認するほうが確実です。

もちろん、出入国の記録や退去強制の記録は保存されており、上陸審査の際に参照されます。しかしそれは記録であって、記録があること自体が上陸拒否を意味するのではありません。記録された事実が5条1項の号に当てはまるかどうかが問題なのです。

期間はどのように決まるか

退去強制歴に基づく期間は、同法5条1項9号と9号の2に定められています。9号は退去強制を受けた者について、イが1年、ロが5年、ハが10年と定めています。ハは、過去に退去強制されたことがある人が再び退去強制された場合です。9号の2は、出国命令により出国した者について1年と定めています。

類型条文期間
出国命令により出国した者5条1項9号の21年
退去強制を受けた者(イ)5条1項9号イ1年
退去強制を受けた者(ロ)5条1項9号ロ5年
退去強制歴のある者の再度の退去強制5条1項9号ハ10年
薬物に関する法令違反5条1項5号期間の定めなし

つまり、1年か5年かを分けるのは、日本を離れる形が出国命令だったのか退去強制だったのかという点です。そして出国命令を使えるかどうかは、同法24条の3が定める要件、すなわち速やかに出国する意思をもって自ら出頭したこと、不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと、過去に退去強制されたことも出国命令により出国したこともないこと、速やかに出国することが確実と見込まれることによります。

期間の定めがない類型がある

薬物に関する法令違反は例外です。同法5条1項5号による上陸拒否には年限の定めがなく、期間の経過によって消えることがありません。罰金でも、外国の法令に違反した場合でも足ります。

これと対応するのが同法24条4号チで、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤等に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を退去強制事由としています。罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、在留資格の種類も問いません。さらに同法24条の3の要件に照らせば、薬物該当者は出国命令を使えません。薬物事件は、退去強制、出国命令、上陸拒否のすべてで別扱いになります。

刑事処分によって当てはまる号が変わる

刑事処分の内容は、当てはまる号を変えます。上陸拒否事由である同法5条1項4号は、1年以上の拘禁刑に処せられた者を対象とし、政治犯を除くとしています。

退去強制事由である同法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますが、同号の但書により全部執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予でも実刑部分が1年以下であれば除外されます。執行猶予がついても退去強制になるという説明は、条文の構造としては正確ではありません。

期間が過ぎたら自動的に入国できるのか

期間の経過は、上陸拒否事由のひとつが消えることを意味するにとどまります。改めて査証の申請と上陸審査が行われ、そこで別の上陸拒否事由や在留の目的が審査されます。

期間内であっても道が閉じているわけではありません。同法12条1項は上陸特別許可を定めており、薬物により期間の定めのない上陸拒否となった場合の再入国も、この上陸特別許可によるほかありません。また、出入国在留管理庁の統計によれば、令和7年には上陸拒否期間の短縮決定が340件ありました。

いま日本にいる人にとっての意味

すでに日本で在留している方にとって重要なのは、上陸拒否ではなく在留資格の維持です。同法22条の4は、3か月以上その在留資格に応じた活動を行わないで在留していること、虚偽の申請による取得、住居地の届出義務違反などを取消事由としています。

出入国在留管理庁の統計によれば、令和7年の在留資格取消しは1,446件で、国籍別ではベトナム947件、インドネシア94件、スリランカ91件、在留資格別では技能実習973件、留学343件でした。また同法19条の16および19条の17は、所属機関等に関する届出を14日以内に行うことを求めています。転職や退学の後に届出を忘れると、上陸拒否とは別の経路で在留が揺らぎます。

よくある誤解

ブラックリストから名前を消してもらう手続がある、という理解は正確ではありません。名簿がない以上、消す手続もありません。あるのは、上陸拒否期間の短縮決定と、同法12条1項の上陸特別許可という二つの制度です。

また、罰金だから記録にも残らず影響もない、という理解も誤りです。薬物関係については罰金でも退去強制事由に該当し得て、上陸拒否には年限がありません。処分の軽重だけで判断しないでください。

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、インドネシア語を含むその他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。

弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分であるという前提に立ち、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事の供述調書が入管の違反審査や口頭審理の資料となる以上、刑事事件と入管手続を一体として設計し、退去強制事由の該当性についても故意や過失を争う視点を持っています。初回相談は無料です。微信のIDはmatsumura1119です。

おわりに

探すべきは名簿ではなく条文です。自分の事実がどの号に当たるのかが分かれば、期間も、残された制度も見えてきます。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のインドネシア語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099331/

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京を中心に刑事事件の弁護

東京にて行政事件に関する対応

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。