上陸拒否期間の分かれ目 1年・5年・10年・期間の定めなし
2026/09/03
日本にはあと何年入れないのか。退去強制や出国命令を経験した方、あるいはこれからその手続に入る方が最も知りたいのは、多くの場合この一点です。答えは出入国管理及び難民認定法5条1項の各号に書かれており、1年、5年、10年、そして期間の定めなしという四つの結論に分かれます。
この記事では、その分かれ目がどこにあるのかを条文に即して整理し、期間が経過したあと日本に入れるのか、期間を短くする道はあるのかまでを説明します。数字だけを覚えるのではなく、どの条文に当たるかで結論が決まるという構造を理解していただくことが目的です。
上陸拒否期間はどこに定められているか
上陸拒否事由は同法5条1項に列挙されており、そのうち退去強制歴に基づく期間を定めているのが9号と9号の2です。9号は退去強制を受けた者について期間を定めており、イが1年、ロが5年、ハが10年とされています。ハは、過去に退去強制されたことがある者が再び退去強制された場合です。これに対して9号の2は、出国命令により出国した者について1年と定めています。
これらとは別に、4号は1年以上の拘禁刑に処せられた者を上陸拒否事由とし、5号は薬物に関する法令違反を理由とする上陸拒否を定めています。5号には年限の定めがありません。
| 類型 | 条文 | 期間 |
|---|---|---|
| 出国命令により出国した者 | 5条1項9号の2 | 1年 |
| 退去強制を受けた者(9号イ) | 5条1項9号イ | 1年 |
| 退去強制を受けた者(9号ロ) | 5条1項9号ロ | 5年 |
| 退去強制歴のある者の再度の退去強制 | 5条1項9号ハ | 10年 |
| 1年以上の拘禁刑に処せられた者 | 5条1項4号 | 期間の定めによらない類型 |
| 薬物に関する法令違反 | 5条1項5号 | 期間の定めなし |
1年と5年はどこで分かれるのか
1年と5年を分ける最大の要素は、日本を離れる形が出国命令だったのか退去強制だったのかという点です。出国命令により出国した場合は9号の2により1年、退去強制を受けた場合は原則として9号ロにより5年となります。
そして出国命令を使えるかどうかは、同法24条の3が定める要件によります。速やかに出国する意思をもって自ら出頭したこと、不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと、過去に退去強制されたことも出国命令により出国したこともないこと、速やかに出国することが確実と見込まれることです。摘発をきっかけに手続が始まった場合は、自ら出頭したという要件を満たしません。
10年になるのはどのような場合か
10年となるのは9号ハに当たる場合、すなわち過去に退去強制されたことがある人が再び退去強制されたときです。一度目と二度目の理由が同じである必要はありません。過去に退去強制を受けた事実がある以上、次の退去強制では期間が長くなるという構造になっています。
この点は、一度目の手続をどう終えるかが将来を左右することを意味します。出国命令で出国できれば9号の2の1年で済み、しかも退去強制歴が残らないため、次に問題が起きた場合の期間も変わってきます。
期間の定めがない類型がある
薬物に関する法令違反は、他の類型と構造が異なります。同法5条1項5号による上陸拒否には年限の定めがなく、期間の経過によって上陸拒否事由が消えることはありません。罰金であっても、外国の法令に違反した場合であっても足ります。
関連して、同法24条4号チは、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤等に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を退去強制事由としており、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。在留資格の種類も問いません。また、同法24条の3の要件に照らせば、薬物該当者は出国命令を使えません。薬物事件は、退去強制、出国命令、上陸拒否のすべての場面で別扱いになると理解してください。
1年以上の拘禁刑と退去強制事由の関係
上陸拒否事由である5条1項4号と、退去強制事由である24条4号リは、似ていますが同じではありません。4号は1年以上の拘禁刑に処せられた者を上陸拒否事由とし、政治犯を除くとしています。
これに対して24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、同号には但書があり、全部執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予でも実刑部分が1年以下であれば除外されます。執行猶予がついても退去強制になるという説明を見かけますが、条文の構造としては正確ではありません。
期間が過ぎれば自動的に入国できるのか
期間の経過は、上陸拒否事由のひとつが消えることを意味するにとどまります。改めて査証の申請と上陸審査が行われ、そこで別の上陸拒否事由や在留の目的が審査されます。自動的に入国できるようになるわけではありません。
期間内であっても道が閉じているわけではなく、同法12条1項の上陸特別許可があります。薬物により期間の定めのない上陸拒否となった場合の再入国も、この上陸特別許可によるほかありません。また、出入国在留管理庁の統計によれば、令和7年には上陸拒否期間の短縮決定が340件ありました。件数は多くありませんが、制度として存在することは知っておく価値があります。
よくある誤解
いわゆるブラックリストという単一の名簿があり、そこに載ると入れなくなる、という理解は正確ではありません。実際には、どの条文の上陸拒否事由に当たるかによって結論が決まります。したがって、期間を知るためにまず確認すべきなのは、名簿の有無ではなく、自分がどの号に該当するかです。
また、罰金だから在留や再入国に影響しないという理解も誤りです。薬物関係の法令違反については、罰金でも退去強制事由に該当し得て、上陸拒否には年限がありません。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。外国人事件専属の中国語通訳が常駐しており、中国語での相談に対応できます。
弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分であるという前提に立ち、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事の供述調書が入管の違反審査や口頭審理の資料となる以上、刑事事件と入管手続を一体として設計し、退去強制事由の該当性についても故意や過失を争う視点を持っています。初回相談は無料です。微信のIDはmatsumura1119です。
おわりに
1年か、5年か、10年か、それとも期間の定めがないのか。この分岐は、手続の最後ではなく最初の段階で大部分が決まります。どの条文に当たるのかを早い時期に確認することが、将来の選択肢を残す唯一の方法です。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099325/
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