舟渡国際法律事務所

自ら入管に出頭するという選択 出頭申告の要件・準備・タイミング

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自ら入管に出頭するという選択 出頭申告の要件・準備・タイミング

自ら入管に出頭するという選択 出頭申告の要件・準備・タイミング

2026/09/03

入管に自分から行けば、その日のうちに捕まって帰されてしまうのではないか。在留期間が過ぎたまま日本で暮らしている方から、まずこの不安を伺うことがほとんどです。実際には、出頭したその場で身体を拘束されて即日送還されるという運用ではありません。しかし、準備なしに行けばよいという話でもありません。

この記事では、自ら出入国在留管理局に出向いて在留期間の経過を申告する、いわゆる出頭申告について、日本を離れることを選ぶ場合と日本に残ることを求める場合に分け、それぞれの要件、揃えておくべき資料、そして時期の考え方を整理します。

出頭申告とは何をすることか

出頭申告とは、摘発される前に自分の意思で地方出入国在留管理局に出向き、在留期間が経過している事実などを申告することを指します。法律上、出頭申告という名前の独立した申請手続があるわけではなく、その後に続く手続の入口としての意味を持ちます。

入口の先には二つの方向があります。ひとつは、日本を離れることを前提に出国命令を目指す方向です。もうひとつは、日本に残ることを求め、退去強制手続の中で在留特別許可を目指す方向です。どちらを選ぶかによって、準備すべき資料も、出頭の時期の考え方も変わります。最初にこの方向を決めないまま窓口に行くと、聞かれるままに答えて不利な記録が残ることがあります。

出国命令を目指す場合に必要なこと

出国命令を使えるのは、出入国管理及び難民認定法24条の3が定める要件をすべて満たす場合に限られます。要件は、速やかに出国する意思をもって自ら出頭したこと、不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと、過去に退去強制されたことも出国命令により出国したこともないこと、速やかに出国することが確実と見込まれることです。

このうち、不法残留以外の退去強制事由に該当しないことという要件には、同法24条4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことが含まれます。したがって、薬物に関する法令違反で有罪判決を受けた人、すなわち同条4号チに該当する人は出国命令を使えません。

実務上、事前に整えておきたいのは、有効な旅券、帰国のための航空券を用意できる見込み、現在の住居と身元を説明できる資料の三点です。旅券の有効期間が切れている場合は本国の在外公館での手続に時間を要することがあり、速やかに出国することが確実と見込まれるという要件の評価に影響します。出国命令により出国した人の上陸拒否期間は、同法5条1項9号の2により1年です。

日本に残ることを求める場合の出頭

日本人配偶者や日本で育った子との家族関係があるなど、日本に残ることを求める場合は、在留特別許可を視野に入れた出頭になります。同法50条2項は、収容令書により収容されている者および監理措置決定を受けた者に在留特別許可の申請権を認めています。他方、同条3項により、退去強制令書が発付された後は申請できません。時期を逃さないことが決定的に重要です。

同条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間、その他の事情を考慮要素として法定しています。したがって、準備すべきは主張ではなく資料です。婚姻や親子関係を示す書類、同居の実態が分かるもの、子の在学状況、納税や社会保険の状況、雇用に関する書類などが典型です。不許可の場合には同条10項により理由を付記した書面が交付されます。判断の基準としては、2024年6月に改定された在留特別許可に係るガイドラインが現行のものです。

出入国在留管理庁の統計によれば、令和7年の在留特別許可は申請2,424件に対し許可1,026件、不許可1,233件でした。許可される場合が相当数ある一方で、不許可となる場合も同程度あります。準備の密度がそのまま結果に反映される領域です。

収容されるのか、監理措置とは何か

出頭したその場で必ず収容されるわけではありません。近年は監理措置という仕組みが用いられています。出入国在留管理庁の資料によれば、令和6年6月10日から同年末までの間に監理措置の決定は1,123件で、その内訳は退去強制令書発付前が647件、発付後が476件でした。監理人の9割以上が親族または知人であり、この期間の所在不明者はゼロとされています。

監理措置の決定を受けた人は、同法50条2項により在留特別許可の申請権を有します。したがって、監理人となってくれる親族や知人がいるかどうかは、出頭前に確認しておく価値があります。

刑事事件が絡むときの注意

刑事事件が背景にある場合、出頭申告の設計は大きく変わります。同法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、同号の但書により全部執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予でも実刑部分が1年以下であれば除外されます。

これに対して同条4号チは、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤等に関する法令違反で有罪の判決を受けた者を対象とし、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。さらに同法5条1項5号による上陸拒否には年限の定めがなく、期間の経過による回復がありません。また、不法残留それ自体も同法70条1項5号により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはこれらの併科の対象となる犯罪です。刑事処分の見通しが立たないうちに出頭すると、刑事と入管の双方で不利な供述が残ることがあります。

よくある誤解

出頭すれば必ず出国命令になる、という理解は正確ではありません。出頭は要件のひとつにすぎません。反対に、出頭すれば必ず在留特別許可が得られるという理解も誤りです。判断は同法50条5項の考慮要素に照らして個別に行われます。

時間が経てば有利になるという理解にも根拠がありません。在留期間の経過が長引くほど、素行や在留の経緯という考慮要素の評価に影響し得ます。また、摘発をきっかけに手続が始まった場合は、自ら出頭したという要件そのものを満たしません。

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が打合せと入管手続の準備に直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ベトナム語を含むその他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。

弁護方針としては、刑事事件が併存する場合には、執行猶予判決ではなお不十分であるという前提に立ち、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事の供述調書が入管の違反審査や口頭審理の資料となる以上、刑事事件と入管手続を一体として設計し、退去強制事由の該当性についても故意や過失を争う視点を持っています。初回相談は無料です。微信のIDはmatsumura1119です。

おわりに

出頭は勇気の問題ではなく、順序と資料の問題です。どちらの方向を目指すのかを先に決め、その方向に必要なものを揃えてから窓口に立つ。それだけで結果が変わることがあります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099323/

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