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被疑者ノートで取調べを記録する|書き方と外国人事件の注意点

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被疑者ノートで取調べを記録する|書き方と外国人事件の注意点

被疑者ノートで取調べを記録する|書き方と外国人事件の注意点

2026/09/03

記憶は日を追って薄れます。しかも、身体を拘束された環境では日付の感覚そのものが曖昧になります。三日前の取調べで何を聞かれ、どう答えたか。一週間後に正確に思い出せる人は多くありません。

取調べは、捜査機関の側では記録されます。供述調書という形で残り、後の手続で使われます。しかし、そこに残るのは捜査官が要約した日本語の文章であって、あなたの側の記録ではありません。両者の間に食い違いが生じたとき、あなたの手元に何もなければ、争う材料がないということになります。

この記事では、日本弁護士連合会が作成した被疑者ノートという道具を使って、取調べの経過を自分で記録する方法を説明します。外国人事件では、通訳に関する記録が特に重要になります。

被疑者ノートとは何か

被疑者ノートは、身体を拘束された被疑者が取調べの経過を自分で書き留めるための冊子です。

日本弁護士連合会が様式を作成しており、弁護人を通じて差し入れることができます。刑事訴訟法39条1項は、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人と立会人なくして接見し、書類や物の授受をすることができると定めています。この書類の授受の一環として、ノートが渡されます。

外国語版が用意されている言語もありますが、対応言語や在庫の状況は時期によって異なります。まずは弁護人に、どの言語で受け取れるかを確認してください。用意がない場合でも、白紙のノートに自分の言語で書けば足ります。形式より、記録が残ることのほうが重要です。

何を書くのか

結論として、事実と時刻を、評価を交えずに書くことが基本です。

  • 取調べの日付、開始時刻と終了時刻、途中の休憩。
  • 取調べに当たった捜査官の人数、階級や氏名が分かればその情報。
  • どのような質問がされ、自分がどう答えたか。とくに繰り返された質問。
  • 黙秘権の告知があったかどうか。
  • 調書を作られたかどうか、読み聞けがあったかどうか、署名押印を求められたかどうか、それに応じたかどうか。
  • 体調、食事、睡眠の状況。
  • 言われた言葉のうち、印象に残ったものをそのまま。

外国人事件で特に書き留めるべきこと

通訳に関する記録は、外国人事件でしか作れない固有の証拠になります。

取調べに通訳人が立ち会ったかどうか、同じ人だったか交代したか、訳が止まった場面はあったか、自分が長く話したのに訳が極端に短かったと感じた箇所はあったか。こうした事項は、時間が経てば必ず曖昧になります。その日のうちに書いておけば、後から弁護人が検討できます。

供述調書の読み聞けについても同様です。刑事訴訟法198条4項は、署名押印を求める前に調書を読み聞かせるか閲覧させなければならないと定め、被疑者は増減変更の申立てをすることができます。申立てをしたのにどう扱われたか、しなかったならなぜかを書いておくと、記録として意味を持ちます。なお、署名押印は求められるものであって、応じる義務はありません。

最高裁判所の広報資料『あなたも法廷通訳を ごぞんじですか』(令和7年1月版)によれば、令和5年に終局した要通訳事件の被告人3,851人のうち、ベトナム語は40.4パーセントを占めます。通訳を介した手続は例外ではなく、そのぶん記録の必要性も高いということです。

書き方の注意点

ノートの記載は、書き方によっては意図しない使われ方をすることがあります。

事実と時刻を淡々と書くこと、感情的な評価や、他の関係者を非難する記述を避けることが基本です。また、事件の内容について自分なりの推測を長々と書くことも避けたほうがよいでしょう。記載の仕方に迷う点があれば、弁護人に相談してください。取調べのたびに数行でも書き足す習慣をつけることが、最も効果的です。

あわせて、一定の重大事件では刑事訴訟法301条の2により取調べの録音録画が行われます。対象事件かどうかを弁護人に確認しておくと、ノートと録音録画のどちらで何を確認できるのかが整理できます。

記録は入管手続でも生きる

刑事手続で作った記録は、その後の入管手続の準備にも役立ちます。

退去強制手続では、入国警備官の違反調査、入国審査官の違反審査、特別審理官の口頭審理という段階を経ます。刑事事件で作られた供述調書はこれらの資料として使われるため、刑事段階でどのような事実関係が固まったのかを本人が把握していることが不可欠です。

出入国在留管理庁の統計によれば、令和7年の在留資格取消しは1,446件で、国籍別ではベトナムが947件と最も多く、在留資格別では技能実習が973件、留学が343件でした。刑事事件を経ずに在留資格の側だけが動く場面もあるということです。

刑事処分が在留資格に跳ね返る仕組み

刑の内容が、退去強制事由に当たるかどうかを決めます。

入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書があり、全部執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予の場合も実刑部分が1年以下なら除外されます。他方、同条4号チは薬物犯罪について有罪の判決を受けた者を挙げ、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、在留資格の種類も問いません。

在留特別許可を求める場面では、入管法50条5項が考慮要素を法定しています。在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間などが挙げられており、素行の評価には刑事記録が用いられます。取調べの経過を自分で記録しておくことは、この段階でも意味を持ちます。

よくある誤解

  • ノートを書くと不利になる、というのは一般には正しくありません。書き方に注意すれば、記録は防御の資料になります。
  • 弁護人が全部覚えているから不要だ、というのも違います。弁護人は取調室にいません。
  • 執行猶予なら在留に影響しない、とは限りません。薬物事件は入管法24条4号チにより該当します。
  • 刑事が終われば入管の話は別だ、というのも誤解です。刑事記録は入管手続の資料になります。

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見に直接出向き、被疑者ノートの差入れと、何をどう書くべきかの説明を初回接見の段階から行います。記録された内容は、次回の接見で一緒に確認します。

通訳体制については、中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。

弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分であると考え、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事事件と入管手続は一体として設計し、退去強制事由の該当性についても故意・過失を含めて争う余地を検討します。初回相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

最後にひとこと

ノートに書くことは、身体を拘束された状況で自分にできる数少ない能動的な行動です。数行でも構いません。その日のうちに書くことが、後の自分を助けます。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099313/

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