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警察の通訳と自分の通訳は違う|弁護人側の通訳が必要な理由

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警察の通訳と自分の通訳は違う|弁護人側の通訳が必要な理由

警察の通訳と自分の通訳は違う|弁護人側の通訳が必要な理由

2026/09/03

取調室には二人の日本人がいます。ひとりは質問をする捜査官、もうひとりは言葉を訳す通訳人です。多くの方が、この通訳人を中立の第三者、あるいは自分の側に立つ人だと受け取ります。しかし手配したのは捜査機関です。

誤解のないように申し上げると、捜査機関が手配した通訳人が不誠実だという話ではありません。問題は立場です。その人はあなたの相談相手ではなく、あなたが何を言うべきかを一緒に考える人でもありません。あなたの言葉を日本語に移し、捜査官の質問をあなたの言語に移す。それが役割のすべてです。

この記事では、捜査機関側の通訳人と弁護人側の通訳人がどう違うのか、その違いが供述調書という形でどこに残るのか、そして最終的に在留資格の判断にどうつながるのかを説明します。

取調べの通訳人は、捜査機関が手配した人である

警察や検察の取調べに立ち会う通訳人は、捜査機関が依頼して来ている人です。

この事実から導かれる帰結は二つあります。第一に、取調べの前後に通訳人と個別に相談することはできません。第二に、通訳人に事件の見通しや対処法を尋ねても答えは返ってきません。通訳人は言語を移す役割に限られ、助言をする立場にないからです。

刑事訴訟法175条は、国語に通じない者に陳述をさせる場合には通訳人に通訳をさせなければならないと定めています。制度が保障しているのは通訳が行われることであって、その通訳人があなたの利益のために動くことではありません。

弁護人側の通訳人は、秘密交通の内側にいる

弁護人が接見に同行させる通訳人は、弁護人の補助者として秘密交通の枠内に入ります。

刑事訴訟法39条1項は、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人と立会人なくして接見し、書類や物の授受をすることができると定めています。ここで話した内容が捜査機関に伝わることはありません。だからこそ、取調べで言えなかったこと、訳がおかしいと感じた箇所、家族の在留状況といった機微な事情を、初めて安全に話すことができます。

同じ言語であっても、この二つの通訳は役割がまったく違います。取調べの通訳は記録を作るためのもの、接見の通訳は方針を立てるためのものです。

違いが最も表れるのが、供述調書である

取調べで作られる供述調書は、捜査機関側の通訳を経由して日本語になります。

調書は逐語訳ではなく、捜査官があなたの話を要約して一人称の日本語に整えた文章です。刑事訴訟法198条4項は、署名押印を求める前に調書を読み聞かせるか閲覧させなければならないと定め、あなたは増減変更の申立てをすることができます。この読み聞けも、同じ通訳人が訳します。

ここで押さえておくべき点が三つあります。ひとつ、署名押印は求められるものであって、応じる義務はありません。ふたつ、取調べの前には黙秘権が告知されます。刑事訴訟法198条2項がその根拠です。みっつ、一定の重大事件では同法301条の2により取調べの録音録画が行われ、通訳のやり取りも記録に残ります。

領事通報という、もうひとつの回路

外国籍の方が身体を拘束された場合には、本国の領事機関に連絡する権利があります。

領事関係に関するウィーン条約36条は、拘禁された者の要請があれば領事機関に遅滞なく通報すること、および領事官が面会し連絡する権利を定めています。領事館は弁護活動をする機関ではありませんが、家族への連絡や本国の書類の取得という点で助けになることがあります。弁護人への依頼と領事通報は、両立するものです。

刑事処分は在留資格に跳ね返る 永住者も例外ではない

通訳を通じて固まった事実関係は、刑事事件が終わった後も入管手続に持ち越されます。

ここで統計を一つ挙げます。警察庁の令和7年の統計によれば、永住者の総検挙人員は3,175人で、うちブラジルが469人でした。なお、よく引用される来日外国人という区分は、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者、在留資格不明者を除く定義であり、永住者はこの区分に含まれません。永住者は別枠で集計されているだけであって、退去強制の対象外という意味ではありません。

入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書があり、全部執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予の場合も実刑部分が1年以下なら除外されます。他方、同条4号チは薬物犯罪について有罪の判決を受けた者を挙げ、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、在留資格の種類も問いません。永住者や定住者であっても同じです。

在留特別許可を求める場面では、入管法50条5項が考慮要素を法定しており、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間などが挙げられています。素行の評価では刑事記録が参照されます。

よくある誤解

  • 取調べの通訳人に相談すればよい、というのは誤りです。通訳人は助言をする立場にありません。
  • 取調べに通訳がついたのだから接見の通訳は不要だ、というのも違います。役割が異なります。
  • 日本に長く住んでいるから通訳は要らない、という判断も危険です。日常会話と法律用語の理解は別です。
  • 永住者だから退去強制にはならない、というのは正しくありません。要件を満たせば対象になります。
  • 執行猶予なら在留に影響しない、とも限りません。薬物事件は入管法24条4号チにより該当します。

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。取調べでどのような質問がされ、どう訳され、どう調書になったのかを本人から具体的に聴き取り、読み聞けの場での対応方針を一緒に決めます。

通訳体制については、中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。

弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分であると考え、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事事件と入管手続は一体として設計し、退去強制事由の該当性についても故意・過失を含めて争う余地を検討します。初回相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

知っておいてほしいこと

同じ部屋にいる通訳人が誰の依頼で来ているのか。この一点を知っているだけで、取調室での振る舞いは変わります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のポルトガル語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099305/

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