会社に家宅捜索が入り従業員が一斉逮捕された その日から何をするか
2026/09/03
朝、令状を持った捜査員が事務所に入り、パソコンと帳簿が運び出され、同時に複数の従業員が逮捕される。企業にとっては、事業の継続と、従業員の身柄と、会社自身の刑事責任という三つの問題が同じ日に始まる場面です。
混乱の中で最初の判断を誤ると、後から取り返すのが難しくなります。本記事では、捜索の当日に確認すべきこと、押収された物と業務継続の関係、法人としての責任、そして外国人従業員の在留資格への影響を、条文に沿って整理します。
捜索の当日に確認すべきことは限られている
その場でできることは多くありませんが、記録を残すことはできます。まず令状を示してもらい、被疑事実の要旨、捜索すべき場所、差し押さえるべき物の記載を確認します。捜索の範囲は令状の記載によって画されるため、どの範囲の物が持ち出されたのかを把握しておく必要があります。押収された物については目録が交付されるので、これを保管します。
捜査員の質問に対して、その場で記憶が曖昧なまま断定的に答えることは避けるべきです。後日の任意の事情聴取でも同じで、事実を確認してから答えるという姿勢は、非協力とは異なります。
押収と業務継続は、早い段階で切り分けて考える
業務用のパソコンやサーバー、帳簿が押収されると、事業そのものが止まりかねません。実務では、業務に不可欠なデータについて謄写を求める、還付や仮還付を求めるといった対応を検討します。これらは捜査の必要性との調整になるため、早い段階で弁護人を通じて申し入れることが現実的です。
同時に、社内では資料の廃棄をしないという指示を徹底する必要があります。捜索後に資料を処分すれば、罪証隠滅と評価される危険があります。
法人自身が処罰される場面がある
行為をした個人だけでなく、法人にも罰金が科される仕組みが置かれている場合があります。たとえば入管法73条の2の不法就労助長罪は、法定刑が5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその併科とされ、同条2項は、在留資格や活動内容を知らなかったことを理由に処罰を免れるには、知らないことについて過失がなかったことを行為者の側で示さなければならない構造を採っています。
経営者や役員が外国籍である場合には、入管法24条3号の4により、不法就労助長行為をしたこと自体が退去強制事由となります。この号は行為があれば足り、刑事処罰は要件とされていません。会社の問題と個人の在留の問題は、同時に進みます。
逮捕された従業員には、接見と通訳の確保が最優先になる
逮捕された従業員にとって、最初の数日が最も重要です。刑事訴訟法39条1項は、身体の拘束を受けている被疑者が弁護人と立会人なくして接見できることを定めています。日本語での意思疎通が難しい場合には、通訳を伴った接見が不可欠です。
取調べの場面では、刑事訴訟法198条2項により黙秘権が告知され、同条4項により供述調書は読み聞け又は閲覧の機会が与えられ、増減変更の申立てができます。内容が違うと感じたときに署名を求められても、訂正を申し立てることができるという点は、事前に伝えておく価値があります。一定の事件では同法301条の2により取調べの録音録画が行われます。また、刑事訴訟法175条及び178条は通訳と翻訳について定めており、裁判所法74条は裁判所では日本語を用いると定めています。
法務省の令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴率は44.28%で、全体の40.38%より高い水準です(過失運転致死傷等及び道交違反を除く終局処理人員が分母)。起訴されにくいという前提で構えるのは適切ではありません。
在留資格には、判決を待たずに影響が及ぶ
刑事処分の内容によって、在留への影響は変わります。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付された場合は除かれます。他方、薬物に関する法令違反は同法24条4号チに該当し、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも退去強制事由になります。
さらに、刑事事件にならなくても、入管法22条の4により、正当な理由がないのに3か月以上、当該在留資格に応じた活動を行わないで在留しているとして在留資格が取り消され得ます。身柄拘束が長引けば、この点も現実の問題になります。会社側では、所属機関に関する届出が入管法19条の16及び19条の17により14日以内に必要になる場面を確認しておく必要があります。
この場面で生じやすい誤解
第一に、全員でまとめて一人の弁護士に頼めばよいという理解です。会社と従業員、従業員相互の間で利益が対立し得るため、別々に依頼する必要があります。第二に、社内で説明をそろえておこうという発想です。これは口裏合わせと評価され、罪証隠滅のおそれを高めます。第三に、逮捕された以上どうにもならないという諦めです。捜査の初期は、処分の方向を左右できる時期でもあります。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接あたります。中国語は外国人事件の専属通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
弁護方針としては、執行猶予判決で足りるとは考えず、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事事件と入管手続は一体として設計します。捜査段階の供述調書が違反審査や口頭審理の資料となるため、初期から入管手続を見据えて供述を整理する必要があるからです。退去強制事由への該当性についても、故意や過失の有無を争う視点をもって検討します。会社と従業員は利益が対立し得るため、受任の範囲を明確にしたうえでご説明します。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
まとめ
捜索と一斉逮捕が同じ日に起きると、企業は事業と人の両方を同時に失いかねないという不安に襲われます。しかし、その日にできることは、記録を残すこと、資料を保全すること、そして早く接見にたどり着くことに絞られます。優先順位を決めて動くことが、結果として最も早い回復につながります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099287/
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