外国人従業員の身元引受人に会社はなれるか 保釈と監理措置の実際
2026/09/03
従業員が逮捕され、日本に家族がいないため、会社に身元引受人になってほしいと弁護人から連絡が来る。この場面で多くの企業が迷うのは、会社が引き受けてよいのか、引き受けたら何を負うのか、そして本当に効果があるのか、という三点です。
結論を先に述べると、身元引受人という法律上の資格は存在しません。しかし、会社が示す雇用継続の見通しは、身柄に関する判断や処分の判断において実際に意味を持ちます。本記事では、どの場面でどのように評価されるのか、入管手続における監理人とはどう違うのかを整理します。
身元引受人は資格ではなく、判断材料の一つである
刑事手続の中に、身元引受人という地位を定めた規定はありません。裁判所や検察官が見ているのは、逃亡のおそれと罪証隠滅のおそれがどの程度あるか、という点です。身元引受書はこの判断のための資料として提出されるものであり、書面があるから直ちに釈放されるという関係にはありません。
それでも会社の書面が重視されるのは、外国人の事件では帰住先と生活の基盤が問題になりやすいからです。住居があり、収入があり、監督する人がいるという状態を具体的に示せるかどうかが、判断の分かれ目になります。
会社の書面が意味を持つのは、三つの場面である
第一に、勾留の段階です。勾留の当否や、勾留理由開示の手続で主張する場面において、帰住先が確保されていることは重要な事情になります。刑事訴訟法82条以下は勾留理由の開示を請求できる旨を定めており、公開の法廷で身柄拘束の理由が示されます。
第二に、起訴後の保釈です。保釈の判断でも、住居と監督者の存在は逃亡のおそれの評価に直結します。第三に、処分そのものの判断です。示談や被害回復に加えて、社会内で監督を受けながら生活できる見通しがあることは、不起訴を求める活動の中で意味を持ちます。
外国人事件では、在留資格の見通しが判断に影響する
外国人の事件に特有の事情として、在留資格を失う見込みがあること自体が、逃亡のおそれの評価に影響します。したがって、刑事処分が在留資格にどう跳ね返るのかを、あらかじめ整理しておく必要があります。
入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部執行猶予が付された場合は除かれます。一部猶予の場合も実刑部分が1年以下であれば除かれます。これに対して薬物に関する法令違反は入管法24条4号チに該当し、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも退去強制事由となります。薬物事案では、雇用継続の書面をもって在留の問題まで解決できるわけではありません。この違いを説明しないまま会社に書面を求めるのは適切ではないと考えています。
入管の監理人は、刑事の身元引受人とは別の制度である
入管手続には監理措置という仕組みがあり、収容に代えて監理人の監督の下で生活することが認められる場合があります。出入国在留管理庁の統計では、令和6年6月10日から同年末までの監理措置の決定は1,123件(退去強制令書発付前647件、発付後476件)で、監理人の9割以上は親族や知人が務め、所在不明となった者はいなかったとされています。
ここから分かるのは、監理人には日常的に本人と接触できる関係が求められるということです。会社が監理人となることも考えられますが、刑事手続の身元引受人とは目的も手続も異なります。刑事で身元引受書を出したから入管手続でも自動的に評価される、という関係にはありません。
会社が引き受けるときに確認しておくこと
まず、雇用継続の見通しを誠実に書くことです。復職の可否が在留資格の内容と結びついている場合には、担当させる業務が在留資格の範囲に収まるかを併せて確認する必要があります。次に、身元引受書は法的な保証書ではないという点です。保釈保証金は本人や関係者が納めるものであり、身元引受人が当然に金銭的な責任を負う仕組みではありません。
また、退職や休職の扱いが決まった場合には、所属機関に関する届出が入管法19条の16及び19条の17により14日以内に必要になります。会社の側でも、雇用状況の届出の要否を確認しておくことが望まれます。
実際に多い三つの誤解
第一に、身元引受人になれば釈放されるという理解です。判断はあくまで逃亡と罪証隠滅のおそれの評価であり、書面は資料の一つです。第二に、身元引受人になると賠償責任を負うという理解です。示談や賠償は本人の問題であり、引受けによって当然に会社が責任を負うものではありません。第三に、刑事で身柄が解放されれば在留も安全だという理解です。刑事手続と入管手続は別に進み、退去強制事由の該当性は独自に判断されます。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接あたります。中国語は外国人事件の専属通訳が常駐しており、ベトナム語をはじめとするその他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
弁護方針としては、執行猶予判決で足りるとは考えず、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事事件と入管手続は一体として設計します。捜査段階の供述調書が違反審査や口頭審理の資料となるため、初期から入管手続を見据えて供述を整理する必要があるからです。退去強制事由への該当性についても、故意や過失の有無を争う視点をもって検討します。会社が身元引受人となる場合には、書面の内容と会社が負う範囲について事前にご説明します。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
最後にひとこと
身元引受けは、会社にとって義務ではありません。しかし、事実に基づいて雇用の見通しを示すことは、本人の身柄と処分の双方に影響し得ます。書けないことを書かず、書けることを具体的に書く。この姿勢が、結果としてもっとも説得力のある資料になります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099285/
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