舟渡国際法律事務所

知らないうちに不法就労になっている場面 在留資格の範囲と派遣・請負の実態

お問い合わせはこちら

知らないうちに不法就労になっている場面 在留資格の範囲と派遣・請負の実態

知らないうちに不法就労になっている場面 在留資格の範囲と派遣・請負の実態

2026/09/03

入管の実態調査で問題になるのは、在留カードを確認していなかった企業ばかりではありません。むしろ多いのは、カードは確認したうえで採用し、その後の配置や取引先での働かせ方が在留資格の範囲から外れていった、という類型です。営業として採用した社員が倉庫でのピッキングを続けていた、通訳として受け入れた人が接客と調理をしていた、といった形で表面化します。

本記事では、在留資格の範囲外の業務がなぜ不法就労になるのか、派遣や請負の形をとったときに誰が責任を負うのか、そして本人の在留にどう跳ね返るのかを、入管法の条文に沿って説明します。

不法就労は、無許可就労だけを指すわけではない

在留資格を持っていても、その在留資格に対応しない活動で報酬を得れば不法就労になります。技術・人文知識・国際業務であれば、学術上の素養を背景とする業務や外国文化に基盤を持つ思考を要する業務が想定されており、単純作業を反復する配置はこの枠から外れます。特定技能には分野と業務区分の定めがあり、同じ会社の中でも区分外の作業に回せば範囲外です。技能実習は認定を受けた計画の範囲でしか作業をさせられません。

いずれの場合も、判断されるのは契約書の肩書ではなく、日々行っている作業の実態です。採用時に適法であっても、配置転換や繁忙期の応援で範囲を超えることがあります。

派遣と請負では、実態がどちらを向いているかが決め手になる

派遣や請負の形をとると、責任の所在が曖昧になりがちですが、入管の見方は単純です。誰の指揮命令の下で、どの場所で、どのような作業をしていたかという実態を見ます。契約書が業務請負となっていても、発注先の社員が直接指示をしていれば、実質的には発注先での就労として評価されます。この場合、在留資格の範囲は発注先での実作業を基準に判断されます。

したがって、派遣元や請負元だけが確認していれば足りるという整理は成り立ちません。実際に人を使う側でも、その人がどの在留資格でどこまでの業務を行えるのかを把握しておく必要があります。

企業に生じる責任は、罰金では終わらない

範囲外の就労をさせた企業は、入管法73条の2の不法就労助長罪に問われる可能性があります。法定刑は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその併科です。同条2項は、在留資格や活動内容を知らなかったことを理由に処罰を免れるには、知らないことについて過失がなかったことを行為者の側で示さなければならない構造を採っています。

経営者や管理者が外国籍の場合には、入管法24条3号の4も問題になります。不法就労助長行為をした者は退去強制事由に該当し、この号は行為のみで足り、刑事処罰は要件になっていません。加えて、所属機関に関する届出は同法19条の16及び19条の17により14日以内に行う必要があります。

本人の在留資格には、より直接的に跳ね返る

働いていた本人の側では、影響はより早く現れます。専ら在留資格外の活動を行っていると明らかに認められる場合は入管法24条4号イに該当し、同法73条の罪により拘禁刑に処せられた場合は同法24条4号ヘに該当します。刑事事件にならない場合でも、入管法22条の4により、正当な理由がないのに3か月以上、当該在留資格に応じた活動を行わないで在留しているとして在留資格を取り消され得ます。

警察庁の令和7年の統計では、在留資格別の検挙人員は技能実習2,812人、留学1,521人、技術・人文知識・国際業務1,069人、特定技能626人で、特定技能は前年比36.7%の増加でした。制度の拡大に伴い、範囲外就労が表面化する場面も増えています。

採用時と配置転換時に、二度確認する

確認は採用時だけでは足りません。実務的には、採用時に在留カードの表裏を確認して写しを残し、担当させる業務が在留資格の範囲に収まるかを判断すること、そして配置転換や新規取引先への派遣のたびに同じ判断をやり直すことが必要です。判断に迷う場合には、就労資格証明書の交付を受けてもらえば、行おうとする活動が在留資格の範囲内であることを確認できます。

作業日報、指揮命令系統を示す資料、面談の記録は、後に過失がなかったことを説明する材料になります。逆に、これらがないまま実態だけが残ると、企業側の説明は通りにくくなります。

誤解されやすい三点

ひとつ目は、派遣元が確認しているのだから受入先は責任を負わない、という理解です。実態として指揮命令をしていれば、使う側の責任が問われます。ふたつ目は、短期間の応援なら問題ないという理解です。期間の長短は考慮要素にとどまり、範囲外であることは変わりません。三つ目は、本人が同意していれば足りるという理解です。在留資格の範囲は当事者の合意で動かせるものではありません。

当事務所の対応

当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語は外国人事件の専属通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。

弁護方針としては、執行猶予判決で足りるとは考えず、不起訴処分を最優先の目標とします。刑事事件と入管手続は一体として設計します。捜査段階の供述調書は違反審査や口頭審理の資料になるためです。退去強制事由への該当性についても、故意や過失の有無を争う視点をもって検討します。企業のご相談では、従業員本人の刑事弁護と企業としての対応を切り分けます。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

結びに

不法就労は、悪意のある企業だけの問題ではありません。人手が足りない現場で少しずつ業務が広がり、気づいたときには在留資格の範囲を越えていた、という経過が実際には多くを占めます。配置を変えるたびに範囲を確認するという地味な運用が、結果的に企業と従業員の双方を守ります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のインドネシア語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099281/

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京を中心に刑事事件の弁護

東京にて行政事件に関する対応

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。