技能実習の監理団体が受ける行政処分と欠格 実習生と役員に及ぶ影響
2026/09/03
実地検査で指摘を受けた監理団体や実習実施者の方から、この後どこまで事態が進むのか、改善命令と許可の取消しは何がどう違うのか、というご相談をいただくことがあります。処分の名称は知っていても、それが数年後の受入れ再開や役員個人にどこまで及ぶのかまでは整理されていない、という場面が少なくありません。
本記事では、監理団体と実習実施者に対する行政上の措置がどのような順序で進むのか、取消しに伴う欠格という考え方、そして役員個人の刑事責任と実習生本人の在留資格への影響を、入管法の条文に沿って整理します。
監理団体への措置は、報告徴収から許可の取消しまで段階を踏む
監理団体に対する行政上の措置は、いきなり許可の取消しから始まるのではなく、報告徴収や実地検査で事実関係を固めたうえで、改善命令を経て取消しへ進むのが通常の流れです。改善命令は事業の継続を前提に是正を求めるものですが、命じられた事実そのものが公表の対象となり、送出機関や実習実施者との関係にも影響します。許可の取消しは監理事業そのものを行えなくする措置であり、傘下の実習実施者は監理を受けられなくなります。
重要なのは、改善命令の段階で提出した報告や是正計画が、その後に取消しの当否を判断する際の資料になるという点です。初動で提出する書面の精度が、最終的な処分の重さを左右します。
実習実施者には、計画の認定の取消しという形で及ぶ
受入企業の側では、行政上の措置は技能実習計画の認定の取消しという形で現れます。認定が取り消されると、その計画を基礎として与えられていた在留の根拠が失われるため、実習生は在留の前提を欠くことになります。企業が受ける実際の打撃は、目の前の実習が止まることよりも、その後の受入れができなくなることの方が大きい場合が多いといえます。
取消しの重さは、将来の受入れを止める欠格に表れる
取消しの効果は処分の時点で終わりません。許可や認定を取り消された法人は、一定の期間、新たな許可や認定を受けられない扱いとなります。さらに、その法人の役員であった者が別の法人の役員である場合には、その別法人にも影響が及ぶ仕組みになっています。処分を争うか受け入れるかという判断は、目先の事業継続だけでなく、将来の受入れ可能性と役員個人の立場まで見渡して決める必要があります。
役員個人には、刑事責任と在留資格の問題が同時に生じる
行政処分と刑事責任は別の手続です。実習計画から外れた作業や、資格外の就労をさせていた実態があれば、入管法73条の2の不法就労助長罪が問題になります。法定刑は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその併科です。同条2項は、在留資格や活動内容を知らなかったことを理由に処罰を免れるには、知らないことについて過失がなかったことを行為者の側で示さなければならない構造を採っています。
役員や現場責任者が外国籍である場合には、さらに入管法24条3号の4があります。不法就労助長行為をした者は退去強制事由に該当し、この号は行為があれば足りる構造で、刑事処罰を受けたことは要件になっていません。刑事事件として立件されなかったから在留は安全だ、という理解は成り立ちません。
実習生本人は、取消しと不法残留の二つの危険にさらされる
実習生の側から見ると、危険は二段階で訪れます。まず、実習が止まった状態が続けば、入管法22条の4により、正当な理由がないのに3か月以上、当該在留資格に応じた活動を行わないで在留しているとして在留資格が取り消され得ます。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、在留資格の取消しは1,446件で、在留資格別では技能実習が973件と最も多くなっています。
次に、受入れ先の変更手続をとらないまま在留期間が過ぎれば、入管法24条4号ロの不法残留に至ります。同庁の令和7年の速報値では技能実習の失踪者は3,950人で、うちベトナムが2,593人(65.6%)を占めます。失踪という形をとると、後に自ら出頭しても選択肢は狭まります。入管法24条の3の出国命令は、速やかに出国する意思をもって自ら出頭したこと、不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと、過去に退去強制されたことや出国命令により出国したことがないことなどを要件としており、これらを満たせば上陸拒否期間は同法5条1項9号の2により1年にとどまります。
現場で聞く誤解を整理する
第一に、処分は団体や会社の問題であって実習生には関係がない、という誤解です。実際には、計画の認定が失われた時点で実習生の在留の基礎が揺らぎます。第二に、失踪者が出ても会社は届け出れば終わり、という誤解です。所属機関に関する届出は入管法19条の16及び19条の17により14日以内に行う必要があり、届出の有無やその後の対応は、次の受入れの審査で必ず見られます。第三に、行政処分を受け入れれば刑事事件は終わる、という誤解です。両者は別々に進みます。
当事務所の対応
当事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件の専属通訳が常駐しており、その他の言語は事案ごとに通訳人を手配します。
弁護方針として、執行猶予判決で足りるとは考えず、不起訴処分を最優先の目標に置きます。刑事事件と入管手続は連動しており、取調べで作成された供述調書は違反審査や口頭審理の資料として用いられます。そのため、供述の整理は刑事手続の初期段階から入管手続を見据えて行います。退去強制事由への該当性についても、故意や過失の有無を争う視点をもって検討します。法人側のご相談と、実習生本人のご相談は、利益が対立し得るため切り分けて対応します。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
まとめにかえて
監理団体や実習実施者に対する行政処分は、事業への打撃としてだけでなく、役員個人の刑事責任と実習生の在留という三つの層に同時に作用します。報告徴収の段階から、この三層を分けて考え、それぞれに必要な資料を残しておくことが後の分かれ目になります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099277/
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
----------------------------------------------------------------------