雇用状況届出(ハローワーク)と入管への届出の違い 二本立ての制度を整理する
2026/09/03
外国人を採用したので、ハローワークに外国人雇用状況の届出を出した。これで手続は終わったと考えている会社は珍しくありません。しかし同じ採用という事実について、入管法にはもう一つ別の届出の仕組みがあります。
逆の誤解もあります。入管に届け出たのだからハローワークには出さなくてよい、というものです。二つの届出は、名宛人も目的も根拠法も違います。一方が他方を代替することはありません。
この記事では、労働施策総合推進法に基づく雇用状況の届出と、入管法に基づく所属機関の届出を並べて比較し、それぞれの期限の考え方と、怠った場合に生じる効果の違いを整理します。あわせて、外国人本人が行うべき届出との関係も確認します。
二つの届出は、そもそも目的が違う
結論として、雇用状況の届出は雇用対策のための制度であり、入管法上の届出は在留管理のための制度です。
労働施策総合推進法28条は、事業主に対し、外国人労働者の雇入れおよび離職の際に、その者の氏名、在留資格、在留期間などを厚生労働大臣に届け出ることを求めています。届出はハローワークを通じて行われ、外国人雇用対策や雇用管理の改善に関する行政の基礎資料となります。特別永住者などは対象外とされています。
他方、入管法19条の17は、本邦の公私の機関で法務省令に定めるものに対し、受入れの開始および終了その他の受入れの状況を地方出入国在留管理局に届け出るよう求めています。こちらの目的は、中長期在留者の在留状況を把握することにあります。
目的が違うため、届け出る内容も、届出先も、様式も異なります。二つを同時に満たす一つの手続は存在しません。
誰が、どこに、いつ届け出るのか
| 項目 | 雇用状況の届出 | 所属機関の届出 |
|---|---|---|
| 根拠 | 労働施策総合推進法28条 | 入管法19条の17 |
| 届出先 | ハローワーク(厚生労働大臣あて) | 地方出入国在留管理局 |
| 対象となる場面 | 外国人労働者の雇入れと離職 | 受入れの開始・終了その他の受入れの状況 |
| 期限の考え方 | 雇用保険の被保険者となるかどうかで様式と期限が異なる | 法務省令により14日以内 |
| 条文上の性質 | 届け出なければならないとされ、罰則の定めがある | 届け出るように努めなければならないとされる形式 |
実務では、雇用保険の被保険者となる従業員については資格取得届および資格喪失届の外国人に関する欄で届け出、被保険者とならない場合には別の様式で届け出るという整理になります。いずれの場合も、在留カードの記載どおりに氏名、在留資格、在留期間を転記することが前提です。読取アプリでICチップを確認しておけば、この転記の正確性も担保されます。
外国人本人が行う届出は、さらに別系統
会社側の二つの届出とは別に、外国人本人にも届出義務があります。入管法19条の16は、活動機関や契約機関に関する変更等を届け出るべきことを定めており、期限は事由が生じた日から14日以内が基本です。住居地については同法19条の7から19条の10までが定めています。
本人の届出と会社の届出は独立していますので、どちらか一方が行われていれば足りるという関係にはありません。退職時に本人へ届出の必要性を案内しておくことは、会社にとってもリスク低減になります。届出がなされていない状態が続くと、実態と入管の把握する情報が食い違い、後の在留手続で説明が難しくなるからです。
怠った場合の効果は、二つの制度で異なる
雇用状況の届出については、届出をせず、または虚偽の届出をした場合の罰則が法律上定められています。行政指導の対象にもなります。
入管法19条の17の届出は、条文の形式が努力義務であるため、直ちに罰則が科される構造にはなっていません。ただし、技能実習の実習実施者、特定技能の受入れ機関、留学生を受け入れる教育機関のように制度上の適正性審査を受ける立場にある場合には、届出の不履行が受入れの適正性に対する評価に影響します。
本人の側の不利益は、より直接的です。入管法22条の4は、住居地の届出義務に違反して90日以上住居地の届出をしない場合などを在留資格の取消し事由として定めており、虚偽の届出も同様に扱われます。会社が案内を怠ったことが、結果として従業員の在留資格を危うくすることもあり得ます。
離職や刑事事件が絡むときの実務
従業員が刑事事件の当事者となり、勾留が長期化して雇用契約が終了した場合、二つの届出がいずれも必要になります。離職として雇用状況の届出を行い、受入れの終了として入管法19条の17の届出を行う。起算点はどちらも雇用契約の終了日ですが、届出先も様式も異なりますので、担当者を分けている会社では特に漏れが生じやすい場面です。
本人の在留資格への影響も押さえておく必要があります。入管法24条4号リは無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された場合は除外されます。他方、入管法24条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反により有罪の判決を受けた者を退去強制事由とし、罰金でも執行猶予でも該当します。加えて、身柄拘束や失職によって当該在留資格に応じた活動を行わない状態が3か月以上続けば、入管法22条の4による取消しが問題になり得ます。
刑事手続と入管手続は別のルートで進みますが、刑事段階で作成された供述調書は違反審査や口頭審理の資料として用いられます。会社が届け出た内容と本人の供述が食い違えば、その不一致自体が説明を要する事情になります。
よくある誤解
第一に、ハローワークに出せば入管にも情報が回る、という理解です。制度上、二つの届出は別に管理されています。
第二に、短期間のアルバイトなので届出は不要だ、という発想です。雇用状況の届出は雇用形態や期間の長短で一律に免除されるものではありません。
第三に、在留カードのコピーを保管しているから届出内容は正確だ、という思い込みです。コピーが偽造カードのものであれば、転記した内容も誤ります。届出の正確性は、カードの真正性の確認とセットで考えるべきです。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見および打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
企業からのご相談では、どの届出が未了かを最初に確定し、遅れがある場合の説明の組み立てを含めて整理します。従業員ご本人からのご依頼では、執行猶予付き判決を得れば足りるとは考えず、不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。刑事事件と入管手続は一体として設計し、退去強制事由への該当性についても故意や過失の有無を争う視点で方針を立てます。初回のご相談は無料です。微信IDは matsumura1119 です。
おわりに
二本立ての制度は、覚えようとすると煩雑ですが、目的が違うと理解すれば整理は簡単です。雇用のための届出と、在留のための届出。採用時と離職時に、この二つを並べて確認する運用にしておけば、漏れはほぼ防げます。なお本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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