所属機関に関する届出 企業側の14日ルールと届出を怠った場合の効果
2026/09/03
外国人を雇用する会社の担当者から寄せられる質問で、意外に多いのが届出の主体に関するものです。会社が届け出るのか、本人が届け出るのか、両方なのか。同じ事実について二重に届け出る必要はあるのか。
混乱の原因は、入管法が届出を二本立てで設計していることにあります。外国人本人が行う届出と、受入れ機関が行う届出は、根拠条文も、対象事項も、性質も異なります。この違いを押さえないまま運用すると、どちらもなされていないという空白が生じます。
出入国在留管理庁の令和7年末の統計では、在留外国人数は412万5,395人でした。届出は、この規模の在留管理を成り立たせるための基礎的な仕組みです。以下、二つの制度の違いから順に説明します。
二つの届出制度を混同しない
結論として、届出は本人が行うものと機関が行うものに分かれており、いずれか一方で足りるという関係にはありません。
| 項目 | 本人の届出 | 機関の届出 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 入管法19条の16(活動機関・契約機関等)、19条の7から19条の10まで(住居地) | 入管法19条の17(受入れの開始・終了その他の受入れの状況) |
| 対象 | 中長期在留者本人 | 本邦の公私の機関で法務省令に定めるもの |
| 期限 | 事由が生じた日から14日以内が基本 | 法務省令により14日以内 |
| 条文上の性質 | 届け出なければならないとされる義務 | 届け出るように努めなければならないとされる形式 |
条文上の性質が異なる点は、実務上しばしば誤解されます。ただし、機関側の届出が努力義務の形を採っているからといって、行わなくてよいという意味ではありません。受入れの実態と入管が把握している情報が食い違えば、その説明を求められるのは機関の側です。また、外国人雇用に関しては、ハローワークへの雇用状況の届出という別系統の制度もあり、そちらは義務として定められています。二つの系統を並行して管理する必要があります。
企業が届け出るべき事由と14日の起算点
機関の届出の対象は、受入れの開始と終了、その他の受入れの状況に関する事項です。実務上、次のような事由が典型です。
- 新たに中長期在留者の受入れを開始したとき
- 雇用契約や委託契約が終了し、受入れが終了したとき
- 本人が失踪し、事実上受入れが継続できなくなったとき
- 機関の名称や所在地が変更されたとき
期限管理で最も重要なのは、起算点を書面で確定することです。解雇であれば解雇の効力発生日、合意退職であれば退職日、失踪であれば受入れが継続できないと判断した日。この日付を記録に残さないまま日を数えると、後から説明ができなくなります。実務では、事由が生じた日、届出の準備を始めた日、実際に届け出た日の三つを台帳に記録しておくと安全です。
届出を怠るとどうなるか
効果は、機関の側と本人の側で異なります。
機関の側では、直ちに罰則が科されるという構造ではないものの、受入れ体制の適正性に対する評価に影響します。技能実習の実習実施者や特定技能の受入れ機関、留学生を受け入れる教育機関のように、制度上の適正性審査を受ける立場にある場合、届出の不履行は個別の処分や次回以降の受入れに影響し得ます。また、届出を怠っていた期間に本人が就労を続けていた場合、その就労が資格の範囲内であったかどうかが問われ、入管法73条の2の不法就労助長罪の検討に及ぶこともあります。同条は5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金またはその併科を定め、同条2項は知らなかったことについて過失がなかったことを行為者の側が示す構造を採っています。
本人の側の不利益はより直接的です。入管法22条の4は、住居地の届出義務に違反して90日以上住居地の届出をしない場合などを在留資格の取消し事由として定めています。虚偽の届出も同様に扱われます。加えて、届出を怠っていた事実は、在留期間更新や在留資格変更の審査において素行の評価に影響します。
刑事事件が起きたときの届出と在留資格
従業員が刑事事件の当事者となった場合、届出の観点では、事件そのものではなく、その結果として生じた受入れの変動が対象になります。逮捕された事実自体が届出事由になるわけではありませんが、勾留の長期化により雇用契約が終了すれば、そこから14日の期限が動き始めます。
本人の在留資格への影響は、刑の内容によって分かれます。入管法24条4号リは無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された場合は除外されます。他方、入管法24条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反により有罪の判決を受けた者を退去強制事由とし、罰金でも執行猶予でも該当します。さらに、身柄拘束や失職により当該在留資格に応じた活動を行わない状態が3か月以上続けば、入管法22条の4による取消しが問題となり得ます。
刑事手続と入管手続は別のルートで進みますが、刑事段階で作成された供述調書は違反審査や口頭審理の資料として用いられます。企業が提出した届出の内容と、本人が刑事手続で述べた内容が食い違えば、その不一致自体が説明を要する事情になります。
よくある誤解
第一に、本人が届け出るのだから会社は何もしなくてよい、という理解です。対象事項が異なり、機関の届出には機関にしか把握できない情報が含まれます。
第二に、期限を過ぎたらもう届け出ないほうがよい、という発想です。遅れてでも届け出たという記録があるかどうかで、評価は大きく変わります。遅延の理由を添えて提出することが実務上の対応です。
第三に、退職した従業員のことなので会社はもう関係ない、という整理です。受入れの終了こそが届出事由であり、終了したからこそ届け出る必要があります。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見および打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ベトナム語をはじめとするその他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
企業からのご相談では、届出の要否と期限を最初に確定し、そのうえで刑事・労務の各論点を整理します。従業員ご本人からのご依頼では、執行猶予付き判決を得れば足りるとは考えず、不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。刑事事件と入管手続は一体として設計し、退去強制事由への該当性についても故意や過失の有無を争う視点で方針を立てます。初回のご相談は無料です。微信IDは matsumura1119 です。
まとめ
届出の実務は、条文を暗記することよりも、起算点を書面に残す習慣を持つことに尽きます。事由が生じた日を確定できていれば、期限は自然に管理でき、遅れた場合の説明も可能になります。なお本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099269/
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東京を中心に刑事事件の弁護
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