日本語学校・大学が留学生の事件を知る経路と、学校が取るべき対応
2026/09/03
学校が留学生の事件を知る経路は、本人からの申告であることのほうがむしろ少数です。多くの場合、学校は事後に、しかも断片的な情報として事実に接します。そのため初動が遅れ、気づいたときには届出の期限が迫っているという事態が起こります。
警察庁の令和7年の統計では、在留資格別の検挙人員のうち留学は1,521人でした。また出入国在留管理庁の令和7年の統計によれば、在留資格の取消しは1,446件で、そのうち留学が343件を占めています。学生の身分と在留資格が直結する留学では、学校の対応がそのまま学生の在留に影響します。
この記事では、学校が事件を知る典型的な経路を整理し、知った時点での対応、出席管理と在留資格の関係、そして退学や除籍を決める場合に必要な手続を、条文に即して説明します。
学校が事件を知る四つの経路
実務上、経路はおおむね次の四つに分類できます。それぞれ、得られる情報の精度と、学校が取り得る対応が異なります。
- 本人または家族からの連絡。最も情報が早いが、内容が不正確なことがある。母国の家族から国際電話が入る例も少なくありません
- 友人・同級生からの伝聞。時期は早いが、罪名や身柄の状況が誤って伝わることが多い
- 無断欠席の継続。事件を直接知るわけではないが、連絡が取れない状態が続くことで異常を察知する。最も頻度が高い経路です
- 弁護人からの連絡。刑事訴訟法39条1項により弁護人には接見交通が認められており、本人の意向を受けて学校に事情を説明する場合があります。情報の精度は最も高くなります
捜査機関から学校へ連絡が入るとは限りません。学校側から警察に問い合わせても、捜査の秘密を理由に回答が得られない場合があります。したがって、無断欠席が続いた時点での確認手順を、あらかじめ内規として定めておくことが有効です。
事件を知った時点でやるべきこと、避けるべきこと
結論として、最初にすべきは事実の確定ではなく、確認の記録を残すことです。
やるべきことは三つです。第一に、いつ、誰から、どのような内容の情報を得たかを記録する。第二に、本人または弁護人との連絡経路を確保する。第三に、在籍の扱いと出席の扱いを暫定的に決め、最終決定は事実関係が判明するまで留保する。
避けるべきことも三つあります。まず、確認できていない段階で他の学生や外部に情報を共有すること。次に、出席記録を事後に修正すること。記録の改変は、それ自体が学校の信用を損ないます。そして、直ちに除籍を決定してしまうことです。不起訴となった場合の巻き戻しが困難になります。
出席管理は在留資格の管理そのものである
留学の在留資格は、教育機関で教育を受ける活動を前提としています。出席状況の悪化は、単なる学内の問題ではなく、在留資格の基礎が失われつつあることを意味します。
入管法22条の4は、当該在留資格に応じた活動を3か月以上行わないで在留していることを在留資格の取消し事由としています。正当な理由がある場合は除かれますが、判断は入管が個別に行います。長期の無断欠席が続けば、この要件に近づいていくことになります。
また、入管法24条4号イは、専ら在留資格外の活動を行っていると明らかに認められる者を退去強制事由としています。授業にほとんど出席せず、資格外活動許可の範囲を超えて就労している状態が続けば、この規定が問題となり得ます。学校の出席簿は、後にこの点を判断する客観資料として機能します。
退学・除籍を決める場合の届出
学校が退学や除籍を決定した場合、学校側に届出義務が生じます。入管法19条の17は、外国人が所属する機関に受入れに関する届出を求めており、同法19条の16は外国人本人の届出義務を定めています。期限は14日以内が基本です。退学の効力が生じた日を起算点として管理してください。
ここで注意すべきは、届出が学生に不利益を与えるための手続ではないという点です。届出をしなかった場合、学校側の管理体制が問われるだけでなく、学生の側でも実態と記録が食い違うことになり、その後の在留手続でかえって説明が困難になります。
あわせて、学生本人にも住居地や所属機関に関する届出義務があることを、退学時に案内しておくことが望まれます。
刑事処分が留学の在留資格に跳ね返る筋道
刑事処分の影響は、罪名と刑の重さによって大きく異なります。
入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書があり、刑の全部の執行を猶予された場合は除外されます。一部猶予の場合も実刑部分が1年以下であれば除外されます。他方、入管法24条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反により有罪の判決を受けた者を退去強制事由としており、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。薬物事犯は扱いが根本的に異なるということです。
また、退去強制事由に該当しない場合でも、刑事事件になった事実は次回の在留期間更新の審査において素行として考慮されます。刑事手続と入管手続は別々のルートで進みますが、刑事段階で作成された供述調書は違反審査や口頭審理の資料として用いられます。学校が把握している出席状況や生活状況も、在留特別許可の判断において意味を持つ場合があります。
学校側に多い誤解
第一に、逮捕された時点で自動的に在留資格が失われる、という理解です。逮捕は身柄の確保であって、在留資格の喪失事由ではありません。
第二に、除籍にすれば学校の責任は終わる、という整理です。除籍は届出事由であり、それまでの出席管理の状況は依然として説明の対象になります。
第三に、不起訴になったのだから何も報告しなくてよい、という理解です。不起訴と在籍状況の変動は別問題であり、退学や長期欠席があれば届出の要否は独立に判断されます。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見および打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
留学生ご本人やご家族からのご依頼では、執行猶予付き判決を得れば足りるとは考えず、不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。不起訴であれば、在籍の維持と在留資格の双方にとって最も良い出発点になるからです。刑事事件と入管手続は一体として設計し、退去強制事由への該当性についても故意や過失の有無を争う視点で方針を立てます。学校からのご相談では、届出の要否と在籍の扱いを並行して整理します。初回のご相談は無料です。微信IDは matsumura1119 です。
結びに
学校にとって最も重要な備えは、事件そのものへの対応能力ではなく、無断欠席が続いたときに誰がどう確認するかという内規です。その手順があるかどうかで、情報が届く速さも、届出が間に合うかどうかも変わります。なお本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099265/
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