登録支援機関の責任範囲 特定技能外国人が事件を起こしたとき何をすべきか
2026/09/03
支援対象としている特定技能外国人が警察に逮捕された。受入れ機関から連絡が入り、登録支援機関の担当者としてまず考えるのは、自分たちはどこまで責任を負うのか、という一点でしょう。支援計画に基づいて生活相談には応じてきたが、私生活での行動まで管理していたわけではない。それでも登録に響くのか。届出は必要なのか。
警察庁の令和7年の統計によれば、在留資格別の検挙人員のうち特定技能は626人で、前年比36.7%の増加でした。制度の運用規模が拡大するにつれ、支援対象者が刑事事件の当事者となる場面も現実に増えています。
この記事では、登録支援機関の責任範囲の輪郭を条文と制度趣旨から確認したうえで、事件発生時に取るべき手順、支援対象者の在留資格への影響、そして登録支援機関自身が負い得るリスクの順に整理します。
登録支援機関の義務は支援の実施であって、私生活の監督ではない
出発点を確認すると、登録支援機関が法律上負っているのは、受入れ機関から委託された1号特定技能外国人支援計画を適正に実施する義務であって、支援対象者の私生活を監督し犯罪を防止する義務ではありません。
支援計画の内容は、入国前の生活ガイダンス、住居の確保、生活に必要な契約への同行、日本語学習の機会の提供、相談または苦情への対応、日本人との交流の促進、転職支援、定期的な面談などから構成されます。ここに列挙されているのは、いずれも支援の提供であり、行動管理ではありません。
したがって、支援対象者が業務時間外に犯罪に関与したという事実だけをもって、登録支援機関の登録が直ちに取り消されるという構造にはなっていません。問題になるのは、その事件の背景に支援の不履行があったと評価される場合、あるいは事件後の対応に不備があった場合です。
事件を知った時点で確認すべき三つのこと
連絡を受けた段階で確認すべき事項は、次の三つに整理できます。
- 事実関係の把握。逮捕の日時、罪名、勾留の有無、留置先。罪名は在留資格への影響を判断する出発点になります
- 支援の履行状況の点検。定期面談の記録、相談対応の記録、苦情の有無。事件前に本人から生活上の相談が寄せられていた場合、その対応記録がとりわけ重要です
- 受入れ機関との役割分担の確認。届出の主体は誰か、雇用契約をどう扱うか、報道対応をどうするか
ここで避けるべきなのは、支援記録を事後に整えようとすることです。記録の追記や作り直しは、それ自体が信用を失わせ、後の行政対応で最も不利に働きます。あるものをあるままに提出するという姿勢が結局は安全です。
届出は入管法19条の17を軸に考える
結論として、事件発生時の届出は、支援実施状況に関する定期の届出と、随時の届出の二つに分けて考える必要があります。
入管法19条の17は、外国人が所属する機関の側に受入れに関する届出を求める仕組みを定めており、同法19条の16は外国人本人の届出義務を定めています。届出期限は14日以内が基本です。雇用契約が終了した、あるいは支援の委託契約が終了したといった変動が生じた場合、その事由が生じた日を起算点として期限を管理してください。
あわせて、支援計画の実施状況については定期の届出が求められます。勾留により支援が事実上実施できない期間が生じた場合、それを記載せずに実施済みとして届け出ることは避けるべきです。実施できなかった事実と理由を正確に記載することが、後の説明の一貫性を保ちます。
刑事処分が特定技能の在留資格にどう跳ね返るか
支援対象者の側から見ると、影響は罪名と刑の重さによって大きく異なります。
まず、入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としていますが、同号には但書があり、刑の全部の執行を猶予された場合は除外されます。一部猶予の場合も、実刑部分が1年以下であれば除外されます。執行猶予が付けば必ず該当するという説明は誤りです。
次に、薬物事犯は扱いが根本的に異なります。入管法24条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反により有罪の判決を受けた者を退去強制事由としており、罰金でも、執行猶予でも、刑の免除でも該当します。さらに入管法5条1項5号は薬物関係の上陸拒否について期間の定めを置いておらず、再入国は同法12条1項の上陸特別許可によるほかありません。加えて、入管法24条の3の出国命令は、24条4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことを要件の一つとしているため、薬物該当者は出国命令を利用できません。
また、勾留が長期化して就労を行わない状態が3か月以上続いた場合、入管法22条の4による在留資格の取消しが問題になり得ます。正当な理由がある場合は除かれますが、その判断は入管が個別に行います。刑事事件と入管手続は別々のルートで進み、刑事段階で作成された供述調書は違反審査や口頭審理の資料として用いられます。
登録支援機関自身が負い得るリスクと、よくある誤解
登録支援機関自身が直接のリスクを負うのは、主として二つの場面です。一つは、支援計画を実施していなかったにもかかわらず実施したと届け出ていた場合など、届出や支援の適正性そのものに問題がある場合。もう一つは、就労資格のない者を働かせることに関与した場合です。後者については、入管法73条の2の不法就労助長罪が5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金またはその併科を定め、同条2項が、知らなかったことについて過失がなかったことを行為者の側が示すべき構造を採っています。支援機関の役職員が外国人である場合には、入管法24条3号の4により、不法就労助長行為があったこと自体で退去強制事由に該当し得ます。この号は刑事処罰を要件としていません。
よくある誤解を二つ挙げます。第一に、本人が起訴されなければ何も起きない、という理解です。起訴猶予でも入管の違反審査は独立に進み、在留資格の取消しや更新不許可の判断は別に行われます。第二に、支援を打ち切って契約を解除すれば責任は切れる、という理解です。契約終了は届出事由であり、終了までの支援の履行状況は依然として説明を求められます。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見および打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。
支援対象者ご本人の弁護では、執行猶予付き判決を得れば足りるとは考えず、不起訴処分の獲得を最優先の目標として活動します。刑事事件と入管手続は一体として設計し、退去強制事由への該当性についても故意や過失の有無を争う視点で方針を立てます。登録支援機関や受入れ機関からのご相談では、届出内容の整理と行政対応の方針づくりを支援します。初回のご相談は無料です。微信IDは matsumura1119 です。
おわりに
登録支援機関の責任は、事件を防げなかったことにではなく、支援を計画どおり実施していたか、事件後に正確に届け出たかに向けられます。日々の面談記録が、そのまま最良の防御資料になるという点を押さえておいてください。なお本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099259/
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