舟渡国際法律事務所

技能実習生が失踪したとき 監理団体・実習実施者がすべき届出と行政処分リスク

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技能実習生が失踪したとき 監理団体・実習実施者がすべき届出と行政処分リスク

技能実習生が失踪したとき 監理団体・実習実施者がすべき届出と行政処分リスク

2026/09/03

実習生が寮に戻っていない。携帯電話がつながらない。所持品の一部がなくなっている。この段階で監理団体や実習実施者の担当者が抱く疑問は、だいたい共通しています。いつ、どこに、何を届け出ればよいのか。届け出ると自社が不利になるのではないか。そもそも失踪ではなく一時的な不在かもしれないのに動いてよいのか。

出入国在留管理庁の令和7年速報値によれば、技能実習生の失踪者は3,950人で、うちベトナム国籍が2,593人(65.6%)を占めています。同庁の令和7年の統計では在留資格の取消しは1,446件、そのうち技能実習が973件でした。失踪は例外的な事故ではなく、受入れ側が手順をあらかじめ用意しておくべき事象です。

本稿では、失踪が疑われた時点からの届出の流れ、届出を怠った場合の行政処分と刑事リスク、そして失踪した本人の在留資格がどうなるのかを、順を追って説明します。

まず整理すべきは、届出先が二系統あること

結論として、技能実習生の失踪では、外国人技能実習機構への報告と、出入国在留管理庁への届出という二つの系統を同時に考える必要があります。

一つ目は技能実習の制度そのものに関する系統です。実習を予定どおり続けられなくなったときは、技能実習実施困難時届出書を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)へ提出します。団体監理型の場合、実習実施者は監理団体へ報告し、監理団体が機構へ届け出るという流れが基本です。届出書には、実習が困難となった事由、失踪が判明した経緯と日時、それまでの相談対応の状況、講じた措置などを記載します。

二つ目は入管法上の系統です。入管法19条の17は、外国人が所属している機関について、その機関の側にも受入れに関する届出を求める仕組みを定めており、19条の16は外国人本人の届出義務を定めています。実習生が受入れ機関から離脱したという事実は、機関側の届出事由として整理されます。届出期限は14日以内が基本ですので、失踪が確認された日を起算点として管理してください。

いつの時点から動くべきか

結論を先に述べると、失踪と断定できるまで待つ必要はありません。むしろ、連絡が取れないと判明した段階からの対応記録が、後の判断を左右します。

実務的には、次の順序で進めるのが無理がありません。

  • 本人の携帯電話・SNS・同室者・同郷の実習生への連絡を試み、日時と結果を記録する
  • 寮の状況(私物の有無、通帳や在留カードの持ち出し)を複数人で確認し、記録に残す
  • 監理団体へ第一報を入れる。実習実施者だけで判断しない
  • 事件性が疑われる場合は警察へ相談する。失踪と事件は初期には区別できない
  • 技能実習実施困難時届出書の作成に着手し、機構へ提出する
  • 入管への届出期限を確認し、期限内に届け出る

ここで重要なのは、記録が届出書の内容そのものになるという点です。連絡を試みた形跡がまったく残っていない場合、受入れ側が状況を放置していたという評価につながりかねません。

届出を怠るとどうなるか

届出の懈怠は、それ自体が受入れ体制の不備として評価されます。監理団体については許可の取消しや改善命令、実習実施者については実習計画の認定取消しといった行政処分の対象となり得ます。認定が取り消されれば、失踪した一人の問題にとどまらず、在籍している他の実習生の受入れ全体に影響します。

また、失踪した実習生が他社で就労していることを受入れ側が知りながら放置していたような場合には、話は行政処分では終わりません。入管法73条の2の不法就労助長罪は、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科を定めており、同条2項は、不法就労と知らなかったことについて過失がなかったことを行為者の側が示さなければならないという構造を採っています。知らなかったという主張だけでは足りないということです。

失踪した実習生本人の在留資格はどうなるか

本人の側から見ると、失踪は在留資格の喪失に直結します。入管法22条の4は、当該在留資格に応じた活動を3か月以上行わないで在留していることを在留資格取消しの事由としています。技能実習の在留資格を持ちながら実習先から離脱し、実習を行っていない状態が続けば、この要件に近づいていきます。正当な理由がある場合は除かれますが、正当な理由の有無は入管が個別に判断します。

在留資格が取り消され、または在留期間が満了すれば、入管法24条4号ロの不法残留に該当します。さらに、離脱後に他社で働けば資格外活動の問題が加わります。ここで見落とされがちなのが、刑事処分と在留資格が別のルートで進むという点です。仮に刑事で起訴猶予となっても、入管の違反審査は独立に進み、刑事段階で作成された供述調書は違反審査や口頭審理の資料として用いられます。実習先での賃金不払いやハラスメントが離脱の背景にあった場合、その事情を刑事の初期段階でどう記録に残すかが、後の在留特別許可の判断材料に影響します。

受入れ側が抱きやすい三つの誤解

第一に、届け出ると自社の評価が下がるので黙っていたほうがよい、という誤解です。実際には、届出をしていなかったことのほうが重く評価されます。失踪の発生そのものより、発生後の対応が見られます。

第二に、監理団体に伝えたので自社の義務は終わった、という理解です。団体監理型では監理団体が窓口となる場面が多いものの、実習実施者自身にも記録の作成と保存、事情説明の責任が残ります。

第三に、本人から辞めたいと言われて合意のうえで帰ったのだから失踪ではない、という整理です。合意退職であっても、実習が継続できなくなった事実に変わりはなく、届出が必要になります。合意の有無と届出義務の有無は別の問題です。

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見および打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ベトナム語をはじめとするその他の言語は、事案に応じて通訳人を手配します。

受入れ企業側の事案では、行政手続と刑事手続のどちらに軸足を置くべきかを早い段階で見極めます。刑事事件化する可能性がある場合には、執行猶予付き判決を得れば足りるとは考えず、不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。実習生本人からのご相談では、刑事事件と入管手続を一体として設計し、退去強制事由への該当性についても故意や過失の有無を争うという視点で方針を立てます。初回のご相談は無料です。微信IDは matsumura1119 です。

まとめに代えて

失踪の連絡を受けた日の対応は、数か月後に届出書と行政の判断のなかで再現されます。連絡を試みた記録、寮の確認記録、監理団体との共有記録。この三つを当日のうちに残すことが、受入れ側にとって最も現実的な備えです。なお本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099257/

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