舟渡国際法律事務所

不法就労助長罪 知らなかったでは済まない過失の構造

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不法就労助長罪 知らなかったでは済まない過失の構造

不法就労助長罪 知らなかったでは済まない過失の構造

2026/09/03

知らなかったのだから仕方がない。多くの法律の場面では通用するこの説明が、不法就労助長罪については通用しにくい構造になっています。理由は、条文の作りにあります。

この記事では、入管法73条の2が定める不法就労助長罪について、同条2項が置いた反証責任の構造を中心に、どこまで確認していれば過失がなかったといえるのか、偽造在留カードが絡む場合はどうなるのか、そして刑事処罰がなくても退去強制事由に該当するという点を説明します。

不法就労助長罪はどのような罪か

入管法73条の2は、外国人に不法就労活動をさせた者などを、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定めています。

ここでいう不法就労活動には、在留資格を持たない者を働かせる場合だけでなく、在留期間を経過した者を働かせる場合、そして与えられた在留資格の範囲外の活動をさせる場合が含まれます。三つ目が見落とされやすいところです。適法に在留している人であっても、その在留資格で認められていない業務に従事させれば、この罪の問題が生じ得ます。

2項が置いた反証責任という構造

同条2項は、不法就労活動をさせた者について、その行為につき過失がなかったことを立証しなければ、処罰を免れないという趣旨の規定を置いています。

通常の刑事事件では、故意や過失の存在を検察官が立証します。ところがこの条文では、過失がなかったことを事業者側が示す構造になっています。したがって、知らなかったという主張は、それだけでは出発点にしかなりません。何をどう確認したのかという具体的な事実を、証拠とともに示す必要があります。

これは、悪意を罰する規定というより、確認を怠ったことを問題にする規定に近い性質を持っています。

どこまで確認すれば足りるのか

実務上重要なのは、在留カードを見たという事実ではなく、何を見て、どう記録したかです。

  • 在留カードの在留資格の欄と、実際に従事させる業務の内容が対応しているかを確認する。
  • 在留期間の満了日を確認し、更新の状況を管理する。期限を過ぎた時点で不法残留となり、入管法24条4号ロの問題になります。
  • 資格外活動許可の有無と、その範囲を確認する。許可がある場合でも、認められる時間や業務内容には制限があります。
  • 確認した内容を、日付とともに記録に残す。反証は記憶ではなく記録によって行われます。

なお、入管法23条は在留カードの携帯および提示の義務を定めており、携帯義務違反は同法75条の3により20万円以下の罰金、提示義務違反は同法75条の2により1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金とされています。

偽造在留カードが絡む場合

提示された在留カードが偽造だった場合でも、確認の内容が問われます。

入管法73条の6および73条の7は、偽造在留カード等の所持、提供、収受について定めています。偽造カードは年々精巧になっており、目視だけでは限界があります。出入国在留管理庁が提供する在留カード等番号失効情報照会の仕組みなど、券面以外の方法で確認する手段を併用しているかどうかは、過失の有無を判断するうえで意味を持ちます。

警察庁の令和7年の統計によれば、入管法違反の検挙人員は3,349人で、そのうち偽造在留カード所持等が191人となっています。

刑事処罰がなくても退去強制事由になる

不法就労助長行為については、刑事処罰を受けていなくても退去強制事由に該当します。

入管法24条3号の4は、不法就労助長行為をした者を退去強制事由としており、行為があれば足ります。有罪判決を前提とする同条4号リや4号チとは、構造が異なるのです。外国籍の経営者、管理者、あるいは仲介に関わった方にとっては、刑事事件が不起訴で終わっても在留資格の問題が残るということを意味します。

在留特別許可については同法50条があり、5項が考慮要素を法定しています。素行や、本邦に在留することとなった経緯が挙げられており、雇用管理の実態がここで評価されることになります。

数字が示す実態

警察庁の令和7年の統計では、不法就労助長罪の検挙件数は253件、検挙人員は308人となっています。

同じ統計では、雇用されていた不法就労外国人475人の国籍は、ベトナム169人、タイ69人、インドネシア63人の順となっています。摘発の対象は大企業に限られません。小規模な事業者や、実質的に採用の窓口となっていた個人も含まれます。

よくある誤解を整理する

在留カードのコピーを取っておけば足りる、という理解は正確ではありません。

問われるのは、在留資格と業務内容の対応、期限の管理、資格外活動許可の範囲という三点であり、コピーの保管はその結果を裏づける手段にすぎません。また、仲介業者に任せていたから責任はない、という理解も成り立ちにくいところです。反証責任は、実際に就労させた事業者側にあります。さらに、罰金で済めば在留資格には影響しない、という理解も誤りです。24条3号の4は刑事処罰を要件としていません。

当事務所の対応

当事務所では、弁護士松村大介が接見と打合せに直接対応し、確認の履歴をどう再構成して反証に用いるかを、事案ごとに検討します。言語については、中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しています。その他の言語については、事案に応じて通訳人を手配します。

方針として、執行猶予判決を得ることをもって十分とは考えず、不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。この類型では、刑事が不起訴でも退去強制事由が残り得るため、刑事事件と入管手続を一体のものとして設計し、退去強制事由への該当性についても故意や過失の有無を含めて争う視点を持ちます。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 からもご連絡いただけます。

おわりに

この罪の構造を一言でいえば、悪意を罰するのではなく、確認しなかったことを問う規定だということになります。だからこそ、事後に用意できるものは限られ、平時の記録がほとんどすべてになります。採用の時点で何を見たのかを、書面で残しておいてください。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099253/

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