外国人従業員が逮捕された 会社が最初にすべきこと
2026/09/03
警察から会社に電話が入り、御社の従業員を逮捕しました、と告げられる。担当者はその場で何を聞けばよいのか分からず、電話を切ってから初めて、罪名も留置場所も聞いていなかったことに気づく。実際によくある場面です。
外国人従業員が逮捕されたとき、会社が直面する問題は刑事事件だけではありません。入管への届出、雇用契約の扱い、会社自身の刑事責任、そして取引先や報道への対応が同時に発生します。この記事では、初動で確認すべき事実から順に、会社の立場で必要な整理をしていきます。
最初に確認すべき事実は四つある
初動で確認すべきなのは、逮捕の事実、罪名、留置されている場所、そして被疑事実が業務と関係するかどうかです。
このうち最も重要なのは四つ目です。業務と無関係の私生活上の事件なのか、それとも職務の遂行に関わる事件なのかによって、会社が取るべき対応はまったく変わります。後者であれば、会社自身が捜査の対象となる可能性を織り込む必要があります。
本人から会社への連絡は、身体拘束中は基本的に期待できません。情報源は、家族、弁護人、そして捜査機関からの照会に限られます。
会社が本人と連絡を取れるか
刑事訴訟法39条1項が定める立会人なしの接見は、弁護人の権利であり、会社の担当者には及びません。
会社の担当者が行けるのは一般面会であり、平日の限られた時間帯に、職員の立会いのもとで行われます。人数や時間にも制限があります。さらに、裁判官が弁護人以外の者との面会を禁じる決定をしている場合には、面会自体ができません。この場合、本人の状況を知る経路は弁護人に限られます。
入管への届出をどう扱うか
中長期在留者は、契約機関や所属機関に関する変更が生じたときは、原則として14日以内に届け出なければならないとされています。入管法19条の16です。
また、同法19条の17は、所属機関等による届出について定めています。逮捕された時点で直ちに雇用契約が終了するわけではありませんから、届出の要否は、契約関係が実際にどうなったかによって判断されます。慌てて退職扱いの届出をしてしまうと、その後に不起訴となって復職する場合に、かえって整理が難しくなります。
なお、在留資格の取消しについては同法22条の4があり、正当な理由なく3か月以上その在留資格に応じた活動を行っていないことなどが取消事由とされています。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、在留資格の取消しは1,446件で、在留資格別では技能実習973件、留学343件となっています。身体拘束が長期化した場合、この論点が現実の問題になります。
逮捕を理由に解雇できるのか
逮捕された事実のみを理由とする解雇は、慎重な検討を要します。
逮捕は有罪の確定ではなく、不起訴となる場合もあります。就業規則に懲戒事由の定めがある場合でも、事実関係の確認を経ずに処分を行えば、後に争われる余地を残します。実務的には、まず出勤できない状態をどう扱うか、休職とするのか、無給の欠勤とするのかを整理し、刑事処分の結論を待って最終的な扱いを決めるという段取りが取られます。
会社側の刑事責任という論点
会社にとって最も重い論点は、不法就労助長罪です。
入管法73条の2は、不法就労させた者などを5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金に処すると定めています。重要なのは同条2項で、過失がなかったことの反証責任が事業者側に置かれている点です。知らなかったという主張だけでは足りず、在留カードの確認をどう行ったか、更新の管理をどうしていたかといった具体的な事実を示す必要があります。
さらに、同法24条3号の4は、不法就労助長行為をした者を退去強制事由としており、こちらは行為があれば足り、刑事処罰を要しません。外国籍の経営者や管理者にとっては、刑事責任と在留資格の双方が問題になります。警察庁の令和7年の統計では、不法就労助長罪の検挙件数は253件、検挙人員は308人となっています。
従業員の在留資格はどうなるか
刑事処分の内容によって、退去強制事由への該当性が判断されます。
入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、但書により刑の全部の執行猶予が付された場合は除かれます。同条4号チは、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤などの法令違反で有罪の判決を受けた者を対象とし、罰金でも執行猶予でも該当します。在留特別許可については同法50条があり、5項が考慮要素を法定しています。会社が作成する雇用継続の意思を示す書面は、この場面で意味を持つことがあります。
報道への対応
報道機関から問い合わせがあった場合、確認できていない事実を述べないことが原則です。
捜査中の事件について会社が推測を述べれば、本人の防御にも、会社自身の立場にも影響します。事実関係を確認中である旨を述べ、確認できた範囲で対応するという姿勢が基本になります。従業員の氏名や在留資格を第三者に伝えることについても、慎重な判断が必要です。
よくある誤解を整理する
逮捕されたのだからすぐに解雇し、入管に届け出るべきだ、という理解は正確ではありません。
逮捕は処分ではなく、不起訴となる可能性もあります。また、在留カードを確認していれば会社は責任を負わない、という理解も十分ではありません。73条の2第2項は、過失がなかったことの反証を求めています。さらに、従業員の刑事事件は会社と無関係だという理解も、業務に関係する事案では成り立ちません。
当事務所の対応
当事務所では、弁護士松村大介が接見と打合せに直接対応し、従業員本人の弁護と、会社側の対応の整理を状況に応じて切り分けて検討します。言語については、中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しています。その他の言語については、事案に応じて通訳人を手配します。
方針として、執行猶予判決を得ることをもって十分とは考えず、不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。刑事の供述調書が違反審査や口頭審理の資料になるため、刑事事件と入管手続を一体のものとして設計し、退去強制事由への該当性についても故意や過失の有無を含めて争う視点を持ちます。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 からもご連絡いただけます。
おわりに
初動でやるべきことは、処分を急ぐことではなく、事実を確定させることです。罪名、場所、業務との関係。この三点が分かるまでは、雇用も届出も報道対応も、確定的な判断を保留しておくほうが安全です。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099251/
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
----------------------------------------------------------------------