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証拠開示と弁護人の準備 外国語資料の翻訳をどうするか

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証拠開示と弁護人の準備 外国語資料の翻訳をどうするか

証拠開示と弁護人の準備 外国語資料の翻訳をどうするか

2026/09/03

刑事事件の記録は、すべて日本語で作られています。被告人が日本語を読めなくても、起訴状も、証拠の一覧も、供述調書も、日本語のまま法廷に出てきます。これは制度の欠陥ではなく、日本の裁判所が日本語を用いるという前提から出てくる当然の帰結です。

だからこそ、外国人の刑事事件では、証拠をどう入手し、どこまで翻訳し、何を争点として選ぶかという判断が、防御の質を大きく左右します。この記事では、証拠開示の仕組みと、外国語資料の翻訳という実務的な問題、そして開示された証拠が在留資格の争い方にどう関わるのかを説明します。

証拠開示は検察官の手元にある記録を見る手続である

証拠開示とは、検察官が保管している証拠のうち、一定のものを弁護人が閲覧・謄写できるようにする手続です。

起訴された段階で、検察官は取り調べを請求する証拠を弁護人に開示します。しかし、検察官の手元にある記録はそれだけではありません。捜査の過程で集められたが請求されなかった資料が多数存在します。そこに、被告人にとって有利な内容が含まれていることがあります。

類型証拠開示という仕組み

公判前整理手続に付された事件では、検察官が請求した証拠のほかに、一定の類型に当たる証拠について開示を請求することができます。

類型として想定されるのは、証拠物、実況見分調書などの記録、鑑定書、取調べの状況に関する記録、証人となる者の供述録取書といったものです。弁護人は、なぜその証拠が必要なのかを示して開示を求めます。さらに、被告人側の主張を明らかにした後には、その主張に関連する証拠の開示を求める段階が続きます。

外国人事件では、この段階で入手できる資料が決定的な意味を持つことがあります。取調べの録音録画がある場合には、刑事訴訟法301条の2の対象事件かどうかも含めて確認します。通訳を介した取調べであれば、実際にどのような訳がされたのかを検証できる材料になるからです。

開示された証拠は日本語である

開示を受けても、そこから先に翻訳という作業が待っています。

刑事訴訟法175条は国語に通じない者に通訳をさせることを、178条は外国語の書面の翻訳を定めています。裁判所法74条は裁判所では日本語を用いると定めています。もっとも、これらの規定は、日本語の記録を被告人の母語へ全文翻訳することを当然に保障するものではありません。実務では、争点に関わる部分を選んで訳し、その内容を接見の場で通訳を介して伝えるという方法が取られます。

最高裁判所の広報資料『あなたも法廷通訳を ごぞんじですか』令和7年1月版によれば、令和5年に通訳を必要とした事件の終局被告人は3,851人で、言語別では中国語が16.1パーセントを占め、ベトナム語に次ぐ第二位となっています。翻訳と通訳の質は、少数の例外的な問題ではありません。

逆方向の翻訳 外国語で作られた証拠をどう扱うか

証拠の中に外国語の資料が含まれている場合、それを日本語に訳したものが法廷に出ます。

携帯電話のメッセージ、送金の記録、契約書、本国の家族とのやり取り。これらは捜査機関側で翻訳され、その訳文が証拠として扱われます。訳が正確でなければ、そこから引き出される事実認定も歪みます。原文と訳文を突き合わせる作業は、弁護人の側でしかできません。

なお、通訳人が故意に虚偽の通訳をした場合には、刑法171条の虚偽通訳罪が問題となります。ただし実務上多いのは、故意の虚偽ではなく、法律用語の対応関係が取れていないことによるずれです。

翻訳の費用はどう考えるか

翻訳の費用は、弁護人の選任形態によって扱いが異なります。

国選弁護の場合、必要な翻訳や通訳に要する費用は所定の手続を経て支出されます。私選弁護の場合は、原則として依頼者側の負担となります。参考として、日本司法支援センター(法テラス)が定める接見通訳料は、30分以内が8,380円、以降10分ごとに1,047円とされています。全文を訳すのか、争点に関わる部分に絞るのかという判断は、費用の問題であると同時に、弁護方針の問題でもあります。

開示証拠は在留資格の争い方にも関わる

刑事手続で開示された証拠は、退去強制事由の該当性を争う場面でも意味を持ちます。

出入国管理及び難民認定法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、但書により刑の全部の執行猶予が付された場合は除かれます。同条4号チは薬物関係の法令違反で有罪の判決を受けた者を対象とし、罰金でも執行猶予でも該当します。同条3号の4の不法就労助長行為は、刑事処罰を要せず行為のみで該当します。これらの該当性を争うには、事実そのものを固める必要があり、その材料は刑事の記録の中にあります。

また、刑事の供述調書は違反審査や口頭審理の資料になります。在留特別許可については同法50条5項が考慮要素を法定しており、素行や、本邦に在留することとなった経緯が挙げられています。刑事段階で何を明らかにできたかが、後の説明の土台になります。

よくある誤解を整理する

証拠は全部見せてもらえるはずだ、という理解は正確ではありません。

開示には手続と範囲があり、請求しなければ出てこない資料があります。また、記録は全部母語に翻訳してもらえるという理解も実務とは異なります。翻訳の範囲は選択の問題です。さらに、不利な証拠が開示されたから争えない、という理解も早すぎます。開示された証拠の意味づけを争うことこそが弁護活動です。

当事務所の対応

当事務所では、弁護士松村大介が記録の検討と接見に直接対応し、どの部分を訳して本人に確認してもらうかを事案ごとに判断します。言語については、中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しています。その他の言語については、事案に応じて通訳人を手配します。

方針として、執行猶予判決を得ることをもって十分とは考えず、不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。刑事の記録が後の違反審査や口頭審理の資料になることを見据え、刑事事件と入管手続を一体のものとして設計し、退去強制事由への該当性についても故意や過失の有無を含めて争う視点を持ちます。初回のご相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 からもご連絡いただけます。

おわりに

翻訳は、事件の周辺にある事務作業ではありません。何を訳すかを決めることは、何を争うかを決めることとほとんど同じです。記録が読めないという状態のまま公判に進むことだけは避けたいところです。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099247/

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