不起訴処分の告知を受け取る方法|その後の入管対応と更新申請
2026/09/03
不起訴になったと聞いて安心したものの、それを証明する書面が手元にない、というご相談をいただきます。在留資格の更新申請で説明を求められ、そこで初めて書面がないことに気づく方も少なくありません。
不起訴処分は、確定判決のように公開の法廷で言い渡されるものではありません。だからこそ、書面をどう手に入れるか、そしてそれを入管手続でどう使うかを、あらかじめ知っておく価値があります。
不起訴処分は自動的に書面で知らされるわけではない
不起訴処分になっても、その旨を記載した書面が自動的に届くわけではありません。検察官は、被疑者から請求があったときに、公訴を提起しない処分をした旨を告げなければならないとされており、実務では、この請求に応じて不起訴処分告知書が交付されます。請求しなければ、書面は作られないのが原則です。
身柄が釈放されたこと自体は、不起訴の証明になりません。処分保留のまま釈放されている場合もあり、その段階では処分はまだ決まっていないからです。まず、事件がどの検察庁のどの部で扱われ、処分がいつ出たのかを確認するところから始まります。
不起訴処分告知書の交付を求める方法
交付を求める相手は、事件を処理した検察庁です。本人が請求するのが原則で、弁護人が選任されていれば弁護人を通じて請求できます。請求の際には、事件名、被疑者の氏名と生年月日、事件番号や処分の時期など、事件を特定できる情報が必要になります。
告知書には、事件名と不起訴とした旨が記載されるのが通例で、理由の区分まで記載されるとは限りません。日本語で作成されますので、入管に提出する際は、その内容を説明できる状態にしておく必要があります。
在留資格の更新申請に添付する意味
刑事事件があった事実は、更新や変更の審査で素行の評価に関わります。処分が出ていることを客観的に示せなければ、審査する側は事件が継続中なのか終わったのかを判断できません。不起訴処分告知書は、その点を書面で示す手段になります。
加えて、退去強制事由との関係でも意味があります。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を挙げ、但書により全部執行猶予が付された場合は除外されます。24条4号チは薬物に関する法令違反で有罪の判決を受けた者を挙げます。いずれも刑の言渡しを前提としており、不起訴であればこれらには該当しません。この違いを書面で示せることが、不起訴処分告知書の実質的な価値です。
不起訴でも入管側で残る論点がある
もっとも、不起訴になれば入管上の問題がすべて消えるわけではありません。刑事処罰を前提としない規定が存在するからです。
入管法24条3号の4は、不法就労助長行為をした者を退去強制事由としており、行為があれば足り、刑事処罰を受けたことは要件ではありません。刑事事件が不起訴で終わっても、入管の側で行為の有無が独立に判断されます。
入管法22条の4による在留資格の取消しも、刑事処罰とは別の制度です。3か月以上、当該在留資格に応じた活動を行わないで在留していること(正当な理由がある場合を除く)や、虚偽申請による取得、住居地の届出義務違反などが対象となります。出入国在留管理庁の統計によれば、令和7年の在留資格取消しは1,446件で、在留資格別では技能実習973件、留学343件でした。
届出義務にも注意が必要です。入管法19条の16と19条の17は、所属機関等に関する届出を14日以内に行うことを求め、19条の7から19条の10までは住居地の届出について定めています。逮捕や勾留の期間中に転職や退学があった場合、この届出が漏れたままになっていることがあります。
統計から見える位置づけ
不起訴を目標に据える理由は、統計にも表れています。令和7年版犯罪白書によれば、令和6年の来日外国人被疑事件の起訴率は44.28パーセントで、全体の40.38パーセントより高くなっています。分母は過失運転致死傷等及び道交違反を除く終局処理人員18,696人です。なお、来日外国人という区分は、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者、在留資格不明者を除く定義であることに注意が必要です。
外国人の事件のほうが起訴されやすいという傾向がある以上、不起訴を得ることの価値は相対的に大きくなります。
本人とご家族が取れる行動
- 処分が出た検察庁と事件番号を確認し、不起訴処分告知書の交付を請求する
- 交付された書面は原本を保管し、入管への提出用に写しを用意する
- 逮捕から釈放までの期間に、所属機関や住居地に変更がなかったかを確認し、必要な届出を行う
- 領事関係に関するウィーン条約36条により、本国の領事機関への通報と領事との面会を求めることができる
- 次回の更新申請までに、就労や学業の実態を示す資料を整えておく
よくある誤解
第一に、釈放されたのだから不起訴になったという理解です。処分保留での釈放もあり、その後に起訴されることもあります。
第二に、不起訴なら入管に説明する必要はないという誤解です。更新や変更の審査では素行が考慮されるため、事件が終わったことを示す書面があるほうが説明は明確になります。
第三に、不起訴なら在留資格は絶対に安全という理解です。入管法24条3号の4や22条の4のように、刑事処罰を前提としない規定があります。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。外国人事件については、中国語は専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配する体制です。ベトナム語の事案もこの方針で対応しています。
弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分であるという前提に立ち、不起訴処分を最優先の目標に据えます。不起訴は、刑事事件の終わりであると同時に、在留を維持するための出発点になるからです。処分後は、不起訴処分告知書の取得と、届出の点検、更新申請の準備までを一連の作業として扱います。捜査段階の供述調書は後の違反審査や口頭審理で入管が読む資料になるため、刑事事件と入管手続を一体として設計します。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに代えて
不起訴という結果は、それ自体では形が残りません。書面にして初めて、入管の窓口でも、将来の申請でも使える材料になります。請求できる立場にあるうちに手続をしておくことが、後の説明を大きく楽にします。本記事は一般的な解説ですので、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099229/
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