刑期の途中で送還されることはあるのか|仮釈放・仮放免と退去強制
2026/09/03
刑の途中で本国に送り返されると聞いた、というご相談をいただくことがあります。結論から述べると、刑の執行中に退去強制令書によって送還されることは、原則としてありません。日本の刑事判決による刑の執行が先で、入管の手続はその後に続くという順序になっているからです。
ただし、これに近い結果をもたらす別の仕組みは存在します。仮釈放、仮放免、監理措置、そして国際受刑者移送。これらは名前が似ていても、根拠も目的もまったく異なります。混同したまま期待を持ってしまうと、判断を誤ります。
刑の執行中は入管手続が止まっているのか
刑の執行中に退去強制による送還は行われませんが、入管の側が何もしていないわけではありません。服役中に、退去強制事由に該当するかどうかの検討は進みます。捜査段階では、退去強制事由に該当すると思料される外国人について、刑事手続と入管手続の間で身柄を引き継ぐ仕組みが入管法65条に置かれています。刑の執行が終わる場面では、収容令書に基づいて入国警備官が身柄を収容するのが一般的な流れです。
つまり、服役期間は入管手続の空白ではなく、準備期間です。この期間に家族の側で何を整えたかが、後の判断材料になります。
仮釈放と退去強制はどう関係するのか
仮釈放は、刑期の満了前に一定の条件のもとで社会に戻る制度で、判断するのは地方更生保護委員会です。仮釈放されても刑の執行が終わったわけではなく、残りの期間は保護観察に付されます。
ここで外国人の方に固有の難しさが生じます。仮釈放の判断では、出所後にどこで誰と暮らすのかという帰住先と身元引受人が重視されますが、退去強制事由に該当している場合、日本国内での生活を前提とした社会復帰計画そのものが描きにくくなります。仮釈放されたとしても、それによって退去強制事由の該当性が消えるわけではありません。
仮放免と監理措置は入管の制度である
仮放免と監理措置は、刑事施設の話ではなく、入管の収容に関する制度です。刑の執行中の人が仮放免されることはありません。これらが問題になるのは、刑の執行が終わって入管に収容された後の段階です。
出入国在留管理庁の資料によれば、令和6年6月10日から同年末までの監理措置の決定は1,123件で、退去強制令書発付前が647件、発付後が476件、同じ期間の仮放免は127件でした。監理人の9割以上は親族や知人であり、この期間に所在不明となった者はいないとされています。監理措置は身柄の問題であると同時に、入管法50条2項により在留特別許可の申請権が認められる立場でもあります。
国際受刑者移送という別の枠組み
本国で刑の残りを服する仕組みとして、国際受刑者移送があります。これは退去強制による送還ではなく、刑の執行を本国に引き継ぐ制度で、日本では国際受刑者移送法が国内手続を定めています。
利用できるかどうかは、日本と当該国との間に条約上の枠組みがあるかどうかにかかっています。枠組みがない国の国籍であれば、この制度は使えません。枠組みがある場合でも、本人の同意、両国の同意、残刑期間などの条件があり、希望すれば当然に認められるものではありません。また、移送はあくまで刑の執行の継続であって、刑が消えるわけでも、日本の退去強制事由の該当性がなくなるわけでもありません。
刑の執行が終わった後に何が起きるか
刑の執行が終わると、退去強制事由の該当性が正面から問題になります。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を挙げますが、但書があり、全部執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除外されます。
薬物事犯は別扱いです。入管法24条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反で有罪の判決を受けた者を挙げ、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。24条4号の2は、強盗、不同意性交等、危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法2条・6条1項)等で拘禁刑に処せられた者のうち、別表第一の在留資格をもって在留する者を対象とします。
収容された後は、違反調査、違反審査、口頭審理、異議の申出という順で進み、在留特別許可の可否が判断されます。入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を考慮すると定め、50条3項は退去強制令書の発付後は申請できないと定めています。なお、入管法24条の3の出国命令は、4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことが要件のひとつであるため、薬物事犯の方は使えません。
出入国在留管理庁の統計によれば、令和7年の退去強制令書による送還は7,563人で、自費出国6,677人、護送官の同行のない国費送還505人、護送官が同行する国費送還318人でした。
ご家族が準備できること
- 本国と日本との間に受刑者移送の枠組みがあるかを、領事館を通じて確認する
- 領事関係に関するウィーン条約36条により、本国の領事機関への通報と領事との面会を求める
- 帰住先となる住居、身元引受人や監理人になり得る方の在留資格と連絡先を整える
- 配偶者や子の在留資格、子の在学状況、扶養の実態を記録として残す
- 刑法34条の2は、刑の執行を終えた者が一定の期間、罰金以上の刑に処せられなければ刑の言渡しが効力を失うと定めています
よくある誤解
第一に、入管に頼めば刑期の途中でも帰国させてもらえるという理解です。退去強制は刑の執行に優先しません。
第二に、仮放免を申請すれば刑務所から出られるという誤解です。仮放免は入管の収容に関する制度であり、刑の執行中の人には適用されません。
第三に、国際受刑者移送が認められれば日本に戻りやすくなるという理解です。移送は刑の執行を引き継ぐ制度であって、退去強制事由や上陸拒否の問題を解決するものではありません。薬物については入管法5条1項5号により、期間の定めのない上陸拒否となります。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。外国人事件については、中国語は外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配する体制です。
弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分であるという前提に立ち、不起訴処分を最優先の目標に据えます。服役が始まってしまうと、使える手段は制度の枠に限られるからです。捜査段階の供述調書は後の違反審査や口頭審理で入管が読む資料になるため、刑事事件と入管手続を一体として設計し、退去強制事由の該当性についても故意や過失を争う視点を持ちます。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
まとめ
刑期の途中で送還されるかという問いへの答えは、原則としてないというものです。しかし、その答えだけでは足りません。刑の執行が終わった日から始まる入管手続に向けて、仮釈放の条件を整えるのか、監理措置を目指すのか、在留特別許可を主張するのか。選ぶ道によって、服役中に準備すべきことが変わります。本記事は一般的な解説ですので、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099227/
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