満期釈放の日に入管へ引き継がれる|収容令書とその先の手続
2026/09/03
刑期が満了する日を、ご家族は再会の日として待ちます。しかし外国人の受刑者の場合、その日は別の手続の初日になることがあります。刑事施設の門を出たところで入国警備官が待っており、そのまま入管の収容施設へ移されるという流れです。
この引継ぎは突然決まるものではありません。服役している間に、退去強制事由に該当するかどうかの見立てが進んでいるからです。何が根拠で、その後どのような手続が続くのかを順に見ていきます。
満期釈放の日、門を出た先に何があるか
退去強制事由に該当する疑いがあると判断されている場合、満期釈放の日に身柄が入管へ引き継がれます。捜査段階では、退去強制事由に該当すると思料される外国人について、刑事手続と入管手続の間で身柄を引き継ぐ仕組みが入管法65条に置かれています。刑の執行が終わる場面では、収容令書に基づいて入国警備官が身柄を収容するのが一般的な流れです。
この日にご家族が現場で受け取れるのは、多くの場合、私物と若干の説明だけです。どの収容施設へ移されるのか、面会はいつからできるのかは、その場で確定しないこともあります。
どの条文に該当するのかを確認する
手続の出発点は、どの退去強制事由に該当するとされているのかという一点です。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を挙げますが、但書があり、全部執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除外されます。
薬物事犯は扱いが異なります。入管法24条4号チは、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令違反で有罪の判決を受けた者を挙げ、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。また24条4号の2は、強盗、不同意性交等、危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法2条・6条1項)等で拘禁刑に処せられた者のうち、別表第一の在留資格をもって在留する者を対象とします。どの号に当たるとされているかで、この後の選択肢が変わります。
違反調査から口頭審理までの流れ
収容後の手続は、入国警備官による違反調査、入国審査官による違反審査、特別審理官による口頭審理、法務大臣への異議の申出という順で進みます。各段階で言い分を述べる機会はありますが、そこで参照されるのは刑事事件で作られた供述調書や判決です。
ここが重要です。捜査段階で通訳を介して作成された調書は、刑事裁判が終わった後も入管手続の資料として生き続けます。刑事訴訟法198条4項が読み聞けと増減変更の申立ての機会を求めているのは、この段階を見越した意味も持ちます。
在留特別許可を申請できる立場かどうか
在留特別許可には、申請できる時期の制限があります。入管法50条2項は、収容令書により収容されている者と監理措置決定を受けた者に申請権を認めており、同条3項は、退去強制令書が発付された後は申請できないと定めています。つまり、満期釈放の直後に収容令書で収容されている段階は、申請権が認められている貴重な時期です。
入管法50条5項は、考慮要素として、在留を希望する理由、家族関係、素行、在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を挙げています。50条10項は、不許可の場合に理由を付記した書面を交付すべきことを定めています。なお、50条1項但書の加重要件の列挙に4号チは含まれていないため、薬物事犯であっても在留特別許可の道が閉ざされるわけではありません。運用の基準は2024年6月改定の在留特別許可ガイドラインです。
出国命令は使えるのか
出国命令は、自ら出頭して速やかに出国する意思がある人のための簡易な手続で、退去強制令書による送還よりも上陸拒否期間が短くなります。入管法5条1項9号の2により、出国命令で出国した場合の上陸拒否期間は1年です。
ただし、入管法24条の3は、要件のひとつとして4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことを求めています。したがって、薬物事犯で4号チに該当する方は出国命令を使えません。ほかにも、速やかに出国する意思をもって自ら出頭したこと、不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと、過去に退去強制されたことや出国命令により出国したことがないこと、速やかに出国することが確実と見込まれることが要件で、刑事事件を経て収容された場面では満たさないことが多くなります。
監理措置という選択肢
収容が続く場合でも、監理措置により身柄の解放を目指す道があります。出入国在留管理庁の資料によれば、令和6年6月10日から同年末までの監理措置の決定は1,123件で、その内訳は退去強制令書発付前が647件、発付後が476件でした。監理人の9割以上は親族や知人であり、この期間に所在不明となった者はいないとされています。
監理人になれるかどうかは、日本での生活基盤と連絡の確実性にかかっています。監理措置決定を受けた者にも在留特別許可の申請権が認められていますので、監理措置は身柄の問題であると同時に、在留を主張するための足場でもあります。
ご家族が満期の日までに準備できること
- 収容先の確認方法と面会の手順を、事前に弁護人と共有しておく
- 在留カード、旅券、住民票、賃貸借契約、雇用契約書を揃えておく
- 配偶者や子の在留資格、子の在学状況、扶養の実態を示す資料を作る
- 監理人になり得る方の在留資格、住所、連絡先、引受けの意思を確認しておく
- 領事関係に関するウィーン条約36条により、本国の領事機関への通報と領事との面会を求めることができる
よくある誤解
第一に、刑期を終えれば手続はすべて終わるという理解です。実際には、満期の日が入管手続の起点になることがあります。
第二に、収容されたらもう争えないという誤解です。収容令書による収容の段階は、入管法50条2項により在留特別許可の申請権が認められている時期であり、主張を組み立てる意味が最も大きい局面です。
第三に、とにかく早く帰国すれば次に来やすいという理解です。出国命令が使えるかどうかは入管法24条の3の要件次第であり、薬物事犯では使えません。しかも入管法5条1項5号により、薬物については期間の定めのない上陸拒否となります。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。外国人事件については、中国語は専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配する体制です。ベトナム語の事案もこの方針で対応しています。
弁護方針としては、執行猶予判決ではなお不十分であるという前提に立ち、不起訴処分を最優先の目標に据えます。満期釈放の日に入管へ引き継がれるという結末は、刑事手続の段階で既に方向づけられているためです。捜査段階の供述調書は後の違反審査や口頭審理で入管が読む資料になるため、刑事事件と入管手続を一体として設計します。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
本記事のまとめ
満期釈放の日は、刑事手続の終点であると同時に入管手続の起点になり得ます。どの号に該当するとされているのか、在留特別許可の申請権がいつまであるのか、出国命令が使えるのか、監理措置の見込みはあるのか。この四つを事前に整理しておくことが、その日の混乱を最小限にします。本記事は一般的な解説ですので、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099225/
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------