起訴された後の公判はどう進むのか|冒頭手続から判決まで
2026/09/03
起訴されたという通知は、多くの方にとって手続の終わりのように感じられます。実際には反対で、ここから公開の法廷での審理が始まります。何回法廷に行くのか、何を聞かれるのか、通訳はどこまで訳してくれるのか。事前に流れを知っているかどうかで、法廷での落ち着き方は大きく変わります。
この記事では、起訴された後の公判が、冒頭手続、証拠調べ、被告人質問、そして判決へとどのように進むのかを順に説明します。あわせて、通訳がどの場面でどう入るのか、判決が在留資格にどう跳ね返るのか、そしてご家族に何ができるのかを扱います。
起訴によって何が変わるか
起訴されると、立場は被疑者から被告人に変わり、手続の主戦場は捜査機関の取調室から公開の法廷に移ります。捜査段階では見えなかった証拠の内容が、弁護人を通じて確認できるようになります。
もうひとつの大きな変化は、保釈を請求できるようになることです。日本の保釈は起訴後の制度であり、起訴前には存在しません。したがって、起訴の通知は、身体拘束からの解放を検討できる段階に入ったことも意味します。
冒頭手続で行われること
最初の公判期日は、事件の枠組みを確定する冒頭手続から始まります。人違いでないかを確認する人定質問があり、次に検察官が起訴状を朗読します。ここで初めて、審理の対象となる事実が公開の場で読み上げられます。
続いて裁判所から黙秘権などの権利が告げられ、被告人と弁護人が起訴状の内容について意見を述べます。事実を認めるのか、争うのか、一部だけ争うのか。この場での応答が、その後の審理の進み方を決めます。争う点があるなら、ここで明確にしておく必要があります。
証拠調べ手続の進み方
冒頭手続の後、検察官が冒頭陳述で立証しようとする事実を述べ、証拠の取調べに入ります。ここで弁護人が行う実質的な作業は、検察官が請求した書証について、証拠とすることに同意するかどうかを判断することです。
同意すれば、その書面はそのまま証拠になります。不同意とすれば、作成者を法廷に呼んで尋問する必要が生じます。捜査段階で作られた供述調書の内容に納得がいかない場合、この判断が争いの分かれ目になります。取調べの録音録画については、刑訴法301条の2が一定の事件について記録を義務づけており、その媒体が証拠として問題になる場面もあります。
被告人質問から判決まで
証拠調べの終盤で、被告人自身が法廷で質問を受ける被告人質問が行われます。弁護人から尋ね、次に検察官が尋ね、裁判所が補充することが一般的です。黙秘権は公判でも失われませんので、答えないという選択も可能です。
その後、検察官が意見と求刑を述べ、弁護人が最終弁論を行い、被告人が最後に述べる機会を与えられます。判決は別の期日に言い渡されることが多く、主文と理由が読み上げられます。判決に不服がある場合は控訴を検討することになりますが、期間が限られているため、言渡しの日にその場で弁護人と方針を確認してください。
通訳はどのように入るのか
法廷での通訳は、手続そのものを日本語で行うことを前提に置かれた制度です。裁判所法74条は、裁判所では日本語を用いると定めています。そのうえで、刑訴法175条と178条が通訳と翻訳について定めています。国際的な保障としては、自由権規約14条3項(a)(f)が、罪の告知を理解できる言語で受ける権利と、通訳を無償で付される権利を定めています。
実務上知っておくべきなのは、通訳人は訳す役割であって、内容を補足したり有利に言い換えたりする立場ではないということです。刑法171条は虚偽通訳罪を定めていますが、通常の訳し漏れや理解の行き違いは、当事者が気づいて指摘しなければ修正されません。訳が追いついていないと感じたら、その場で止めてもらってかまいません。
最高裁判所『あなたも法廷通訳を ごぞんじですか』令和7年1月版によれば、令和5年の裁判員裁判の被告人807人のうち98人に通訳人が付きました。また、最高裁の通訳人候補者名簿には、平成29年4月時点で62言語3,823人が登録されています。通訳を伴う審理は、日本の法廷で日常的に行われています。
判決が在留資格に跳ね返る仕組み
判決の内容は、そのまま在留資格の問題に接続します。退去強制事由である入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された場合は除外されます。一部猶予でも、実際に服する部分が1年以下であれば除外されます。
他方、薬物犯罪については入管法24条4号チが、麻薬・大麻・あへん・覚醒剤等に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を対象とし、罰金でも執行猶予でも該当します。同じ執行猶予判決でも、罪名によって在留への意味は正反対になります。
退去強制手続に進んだ場合には、入管法50条の在留特別許可が検討されます。同条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間などを考慮要素として定めています。公判で述べた内容や情状証人の証言は、この段階の資料としても意味を持ちます。
ご家族にできること
- 公判は原則として公開です。傍聴に来ること自体が、被告人にとって支えになります。
- 情状証人として法廷で証言することができます。監督の具体性が問われます。
- 住居、就労先、生活費の見通しを書面にまとめておくと、保釈にも判決にも活きます。
- 被害弁償や示談の交渉は弁護人を通じて行ってください。
- 判決後の在留手続に必要な書類を、あらかじめ整理しておいてください。
よくある誤解
- 起訴されたら有罪が決まったのと同じだ。審理はこれから行われます。
- 公判は一日で終わる。争いのある事件では複数回の期日が入ります。
- 通訳がすべて正確に訳してくれる。訳し漏れは指摘しなければ直りません。
- 執行猶予がつけば在留は安全だ。薬物事件では入管法24条4号チに該当します。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ベトナム語を含むその他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。
公判に至った事件でも、私たちは執行猶予判決で足りるとは考えません。在留への影響を考えれば、可能な段階では不起訴処分を最優先の目標に置き、公判では認定される事実の範囲そのものを丁寧に検討します。刑事事件と入管手続は一体として設計します。刑事段階の供述調書や公判での供述が、後の違反審査や口頭審理の資料になるためです。退去強制事由に当たるかどうかについても、故意や過失の有無を含めて争う視点を持ちます。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
法廷は、知らない人にとっては不安な場所ですが、順序の決まった場所でもあります。次に何が起きるかが分かっていれば、伝えるべきことを伝えられます。流れを事前に共有することも、弁護人の仕事のひとつです。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099213/
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