舟渡国際法律事務所

職務質問で在留カードの提示を求められたら|携帯義務と提示義務

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職務質問で在留カードの提示を求められたら|携帯義務と提示義務

職務質問で在留カードの提示を求められたら|携帯義務と提示義務

2026/09/03

駅の改札を出たところで警察官に呼び止められ、在留カードを見せてくださいと言われる。持っていなかった、あるいは持っていたけれど鞄の中を全部出すよう求められた。そのとき断ってよいのか、断ると何が起きるのか。日本で暮らす外国人の方にとって、最も日常的で、最も情報が錯綜している場面です。

この記事は、その場で何が義務で何が任意なのかを分けることを目的にしています。在留カードの携帯義務と提示義務は同じではありません。職務質問と所持品検査も同じではありません。区別ができれば、落ち着いて対応でき、後の刑事処分や在留資格への影響も小さくできます。

携帯義務と提示義務は別々の義務

入管法23条は、中長期在留者に在留カードを常に携帯する義務と、求められたときに提示する義務の二つを定めています。二つは別の義務であり、違反したときの罰則も別々です。

携帯義務に違反した場合は、入管法75条の3により20万円以下の罰金です。これに対し、提示を拒んだ場合は入管法75条の2により1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金となります。提示の拒否のほうが重く、拘禁刑が定められている点が決定的な違いです。持っていなかったことより、持っているのに出さないことのほうが重く扱われる構造だと理解してください。

行為条文法定刑
在留カードを携帯していない入管法75条の320万円以下の罰金
提示を拒む入管法75条の21年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金

職務質問は任意、提示義務は法律上の義務

その場で最も混乱しやすいのは、職務質問そのものと在留カードの提示義務が別の話だという点です。職務質問は警察官職務執行法に基づく任意の措置であり、応じるかどうかに一定の自由があります。他方、在留カードの提示は入管法23条が定める法律上の義務です。

したがって、質問への回答をどこまでするかということと、カードを出すかどうかは切り分けて考える必要があります。カードの提示を拒むことには、上に述べたとおり罰則があります。実務的には、カードは提示し、それ以外の質問については落ち着いて対応するという整理が現実的です。

所持品検査は別の問題

鞄の中身を見せてほしいという求めは、在留カードの提示義務とは無関係の、任意の所持品検査です。承諾がなければ、原則として内容物を取り出して調べることはできません。逮捕や令状に基づく捜索とは根拠が異なります。

ここで注意すべきなのは、断ること自体は違法ではないものの、断り方によってはその場が長時間化するということです。実際にできる対応としては、次のような言い方が考えられます。

  • 在留カードはお見せします。所持品の中身については同意しません。
  • 今日は急いでいます。任意であればここまでにさせてください。
  • 日本語が十分ではありません。通訳を通してお話ししたいです。

いずれも、感情的にならず、義務のある部分は履行し、任意の部分については意思を明確に示すという構造です。所持品検査への同意は、後の手続の出発点になり得るため、意思表示を曖昧にしないことに意味があります。

在留カードそのものをめぐる別の罪

在留カードに関する事件で実際に重い扱いを受けるのは、不携帯より偽造在留カードの事案です。入管法73条の6と73条の7は、偽造在留カード等の所持、提供、収受を処罰しています。他人から渡されたものを持っていただけでも問題になり得ます。

警察庁の令和7年の統計では、入管法違反の検挙人員は3,349人でした。内訳は不法残留2,779人、偽造在留カード所持等191人、資格外活動等160人、旅券等の不携帯や提示拒否70人です。数字が示すのは、不携帯や提示拒否そのものの件数は多くない一方、その場での確認をきっかけに別の違反が明らかになる場面があるということです。

刑事処分が在留資格にどう跳ね返るか

在留カードの不携帯や提示拒否で直ちに退去強制になることはありませんが、素行の評価を通じて在留に影響します。退去強制事由である入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、しかも但書により刑の全部の執行を猶予された場合は除外されます。75条の2の法定刑は1年以下の拘禁刑ですから、この水準には届きません。

影響が出るのはその先です。在留期間の更新や在留資格の変更は法務大臣の裁量に委ねられ、素行は考慮要素になります。罰金であっても記録は残ります。また、その場の確認から資格外活動が明らかになれば、入管法24条4号イや、活動を行っていない状態が続いている場合の22条の4による在留資格の取消しが問題になります。ひとつの職務質問が、まったく別の手続の入口になることがあるということです。

よくある誤解

  • 在留カードを見せなければ身元は分からない。氏名や生年月日は他の方法でも確認され、提示拒否には拘禁刑の定めがあります。
  • 家に置いてきたと言えば済む。携帯義務違反は入管法75条の3の対象です。ただし提示拒否とは別の、より軽い罰則です。
  • 職務質問に答えないと逮捕される。職務質問自体は任意であり、答えないことが直ちに逮捕理由になるわけではありません。
  • 写真だけ撮ってスマートフォンに入れておけばよい。入管法23条が求めているのはカードの携帯です。
  • 罰金なら在留に影響しない。更新は裁量判断であり、素行は考慮されます。

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、ベトナム語を含むその他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。

在留カードに関する事件では、その場の一回の確認から捜査が広がることが少なくありません。執行猶予判決で足りるとは考えず、不起訴処分を最優先の目標として方針を組み立てます。刑事事件と入管手続は一体として設計します。取調べで作られた供述調書が、そのまま入管の違反審査や口頭審理の資料になるためです。退去強制事由に当たるかどうかについても、故意や過失の有無を含めて争う視点を持ちます。初回相談は無料で、微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

おわりに

路上での数分間に、その後の何か月かが左右されることがあります。義務のある提示には応じ、任意の部分については意思を明確にする。この二つを覚えておくだけで、対応の質は大きく変わります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099201/

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