舟渡国際法律事務所

会社の名義を貸してほしいと頼まれたら 名義貸しと不法就労助長のリスク

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会社の名義を貸してほしいと頼まれたら 名義貸しと不法就労助長のリスク

会社の名義を貸してほしいと頼まれたら 名義貸しと不法就労助長のリスク

2026/09/02

同郷の知人から、会社をつくるので代表者の名前だけ貸してほしいと言われた。すでに名前を貸してしまい、後になって警察や入管から連絡が来た。この二つの場面は、相談の入口としてはまったく違うようでいて、法律上の論点はほとんど同じところに集まります。

名義貸しは、頼む側からは形式的なお願いとして持ち込まれます。実際には、貸した名義の下で他人が働き、口座が使われ、申請書が出されていきます。その結果として問われるのは、名義を貸した本人です。

ここでは、名義貸しが具体的にどの条文に触れるのか、知らなかったという説明がなぜ通りにくい構造になっているのか、そして在留資格にどう跳ね返るのかを整理します。

名義貸しはどんな場面で問題になるか

名義貸しは、法人の代表者や役員としての名義、事業所や店舗の名義、雇用主としての名義、そして預貯金口座の名義という形で持ち込まれます。いずれも、その名義があることで他人の活動が可能になる、という点が共通しています。名義を貸した側は自分では何もしていないつもりでも、外形上はその活動の主体として扱われます。

不法就労助長は行為だけで退去強制事由になる

入管法24条3号の4は、不法就労助長行為をした者を退去強制事由と定めており、刑事処罰を受けていなくても該当します。ここが名義貸しの最も危険な点です。起訴されなかった、罰金で済んだ、という結論と、退去強制事由に当たるかどうかは別の判断だからです。刑事罰としては、入管法73条の2が不法就労助長罪を定め、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれらの併科としています。警察庁の令和7年の統計では、不法就労助長罪の検挙件数は253件、検挙人員は308人でした。

知らなかったでは済まない 73条の2第2項の構造

入管法73条の2第2項は、外国人が就労できない者であることを知らなかったことを理由に処罰を免れるためには、過失がなかったことを反証しなければならないと定めています。つまり、知らなかったと述べるだけでは足りず、在留カードを確認した、資格外活動の許可を確かめた、就労可能な範囲を照会したといった、確認を尽くした事実の側を示す必要があります。名義だけ貸して実務に関与していない場合、この確認の痕跡がまったく残らないため、かえって反証が難しくなります。

虚偽の申請で得た在留資格は取り消される

入管法22条の4は、虚偽の申請によって在留資格を取得した場合を取消事由としています。名義を貸した会社が、実体のない雇用契約を根拠に在留資格の申請をしていた場合、名義を借りた側の在留資格が取り消されるだけでなく、その申請に関与した名義人自身の素行が問われます。同条は、正当な理由なく3か月以上その在留資格に応じた活動を行っていない場合や、住居地の届出義務に90日以上違反した場合も取消事由としています。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、在留資格の取消しは1,446件でした。あわせて、入管法19条の16・19条の17は、所属機関等に関する届出を14日以内に行うことを求めています。

通帳や口座の名義貸しは別の法律の問題になる

預貯金通帳やキャッシュカードを他人に渡す行為は、犯罪による収益の移転防止に関する法律28条により、譲受け・譲渡し等として処罰の対象とされています。報酬を受け取っていなくても、相手が誰であるかを確かめずに渡した場合には問題になります。口座が特殊詐欺等に使われれば、より重い犯罪への関与を疑われることにもなります。

ブローカーが関与している場合の立ち位置

名義貸しは、多くの場合、仲介する第三者を介して持ち込まれます。ご本人としては被害に近い立場だと感じておられることも少なくありません。しかし、捜査機関の見方は、誰が名義を提供し、誰が対価を受け取ったかという外形から出発します。したがって、依頼を受けた経緯、報酬の有無と金額、やり取りの記録を早い段階で保全し、関与の限界を具体的に示すことが必要になります。記憶に頼った説明は、時間が経つほど弱くなります。

頼まれた段階と、立件された段階でできること

  • まだ名義を貸していない段階なら、断る。書面や送金の記録が残る前であれば、選択肢は最も広く残ります
  • すでに貸してしまった場合は、登記、契約書、口座の入出金、依頼者とのやり取りを保全する
  • 刑訴法39条1項により、逮捕された場合は立会人なしで弁護人と接見できます
  • 刑訴法198条2項により黙秘権が告知され、同条4項により供述調書の読み聞けと増減変更の申立てができます。関与の程度は、この段階の記載がその後を強く縛ります
  • 通訳を求める。刑訴法175条・178条、自由権規約14条3項(a)(f)が根拠となります

よくある誤解を整理する

名前を貸しただけで働かせたのは自分ではない、という説明は、3号の4が行為の有無で判断される以上、それだけでは足りません。報酬をもらっていないから犯罪にならない、という理解も、対価の有無は事情のひとつにすぎないという点で不正確です。相手が在留カードを持っていたから就労できると思った、という説明も、73条の2第2項の反証責任の下では、確認の内容を示せなければ通りにくくなります。そして、起訴されなければ在留は安全だという理解は、3号の4が刑事処罰を要しないという構造と正面から食い違います。

当事務所の対応

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接あたります。外国人事件について、中国語は専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。名義貸しの事案では、関与の範囲と認識の程度を裏づける客観資料を早期に固めることが要となるため、執行猶予判決を目標にせず、不起訴処分を最優先の目標に置いて方針を立てます。あわせて、刑事事件と入管手続を一体として設計し、退去強制事由への該当性そのものについても、故意や過失の有無を含めて争う視点を持ちます。初回相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。

おわりに

名義貸しの相談で共通しているのは、断りにくい関係の中で頼まれている、という点です。だからこそ、法律上どこまで自分の責任になるのかを先に知っておくことに意味があります。すでに貸してしまった場合でも、関与の限界を示す資料は必ず残っています。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099191/

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