万引きで警察に呼ばれたら 窃盗罪の手続と在留資格への影響
2026/09/02
スーパーの出口で店員に呼び止められ、事務所で待たされたあと警察官が来た。その場は帰されたけれど、後日、警察署に来るように言われた。万引きのご相談は、この二つのどちらかから始まることがほとんどです。
被害金額が数百円ということも珍しくありません。金額の小ささから、注意されて終わる話だと受け止められる方も多いのですが、法律上の罪名は窃盗罪であり、金額によって罪名が変わるわけではありません。外国籍の方の場合は、そこからさらに在留資格の話につながります。
以下、手続の流れ、被害弁償の意味、在留への影響を条文に即して整理します。
万引きは金額の多寡にかかわらず窃盗罪である
店舗で商品を代金を支払わずに持ち出す行為は、窃盗罪として扱われます。被害額の小ささは量刑や処分で考慮されますが、罪名を変える要素ではありません。同じ店舗で繰り返している場合や、複数店舗にまたがる場合には、余罪として一括して立件されることがあります。
その場で帰されるか、逮捕されるか
結論として、身柄を拘束されるかどうかは金額ではなく、身元と再犯のおそれの評価で決まります。住居が定まっていて、身元引受人がいて、事実を認めている事案では、在宅のまま捜査が進むことが多くなります。逆に、住所が不安定である、同種の前歴がある、氏名や身分事項の確認に時間がかかる、といった事情があると、逮捕・勾留の可能性が上がります。外国籍であること自体が理由になるわけではありませんが、在留状況の確認に時間を要すると身柄が長引くことがあります。なお、被害が軽微で被害品が回復され、被害者が処罰を求めていない場合には、警察限りで処理される微罪処分となることもあります。
起訴率52.53%という数字と被害弁償
令和7年版犯罪白書(令和6年のデータ)によれば、来日外国人被疑事件のうち窃盗の起訴率は52.53%で、全体の44.84%を上回ります。来日外国人被疑事件全体の起訴率は44.28%(全体は40.38%)です。ここでいう来日外国人は、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者、在留資格不明者を除く定義であることに注意してください。
この類型では、被害弁償と謝罪、そして店舗との示談が、不起訴の判断に向けた最も具体的な材料になります。窃盗罪は個人の財産という法益を侵害する犯罪ですから、その侵害が回復され、被害者が宥恕の意思を示していることは、処分の判断に直接届きます。ただし、示談ができれば不起訴になると保証できるものではなく、前歴や態様によって結論は変わります。
在留資格にどこまで影響するか
入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により全部の執行猶予が付された場合は除外され、一部猶予でも実刑部分が1年以下であれば除外されます。また同法24条の2が定める重大犯罪の列挙は、強盗、不同意性交等、危険運転致死傷等であり、窃盗はここに含まれていません。したがって、初犯で被害額も小さい万引き事案が直ちに退去強制に結びつくとは限りません。
ただし、影響がないという意味ではありません。素行は入管法50条5項が在留特別許可の考慮要素として明示する事項であり、国籍法5条1項3号は帰化の素行要件を定めています。罰金であっても前科は残り、刑法34条の2は刑の言渡しが効力を失うまでに一定の期間を要することを定めています。在留期間の更新や永住許可、将来の帰化を視野に入れるなら、不起訴で終えることの価値は小さくありません。
留学生・技能実習生の場合に生じる別の問題
事件をきっかけに学校を除籍された、実習先を離れた、という展開になると、入管法22条の4の在留資格取消しが視野に入ります。同条は、正当な理由がないのに3か月以上、その在留資格に応じた活動を行わないで在留している場合等を取消事由としています。出入国在留管理庁の令和7年の統計では、在留資格の取消しは1,446件で、在留資格別では技能実習973件、留学343件でした。刑事処分そのものよりも、その後の身分の空白が問題になる、という構図です。なお入管法19条の16・19条の17は、所属機関等に関する届出を14日以内に行うことを求めています。
ご本人とご家族が取れる行動
- 店舗名、日時、商品、金額を正確に記録しておく。記憶が薄れる前に整理します
- 被害弁償と謝罪の申入れを、捜査機関を通じて行う。直接店舗に押しかけるのは避けます
- 刑訴法198条2項により黙秘権が告知されます。同条4項により、供述調書は読み聞けを受けて増減変更を申し立てられます
- 通訳を求める。刑訴法175条・178条、自由権規約14条3項(a)(f)が根拠になります
- 逮捕された場合は刑訴法39条1項により、立会人なしで弁護人と接見できます
- 在学証明、雇用契約、納税や社会保険の記録など、生活の安定を示す資料を集める
よくある誤解を整理する
金額が小さいから犯罪ではない、という理解は誤りです。商品を返したから終わり、という理解も、被害の回復は考慮事情ではあっても事件が消えるわけではないという点で不正確です。罰金なら在留に影響しない、という理解も、退去強制事由に当たらないことと素行の記録が残らないことは別だという点で不十分です。そして、認めているのだから弁護士は要らない、という判断は、認めている事案でこそ処分を左右する材料の準備が結果を分けるという実務の実態と合いません。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接あたります。外国人事件について、中国語は専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。万引き事案では、被害弁償と再発防止の体制づくりを早期に進め、執行猶予判決を目標にするのではなく、不起訴処分を最優先の目標に置きます。あわせて、学校や勤務先との関係、在留資格取消しのリスクを含めて、刑事事件と入管手続を一体として設計します。初回相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
万引きの事件は、刑事処分としては軽く収まることが多い一方で、在留の側では学校や職場との関係が切れることの方が重い結果を招くことがあります。刑事と生活基盤の双方を同時に立て直すことが、この類型の要点です。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事のポルトガル語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099189/
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