不法入国・不法上陸で摘発されたら 偽造旅券が絡む場合の処分と上陸拒否期間
2026/09/02
入国審査で別室に案内され、そのまま帰されなかった。あるいは、他人名義の旅券を使って入国した事実が後日の捜査で明らかになり、逮捕された。不法入国・不法上陸のご相談は、こうした場面から始まることがほとんどです。
不法残留が在留期間の経過によって生じるのに対し、不法入国は入国したその瞬間に成立します。そして偽造旅券や他人名義の旅券が絡むと、入管法違反とは別に文書偽造の問題が重なり、刑事処分の見通しも、将来の再入国の見通しも大きく変わります。
この記事では、70条1項1号の罪の中身、旅券や在留カードの偽造で何が変わるのか、出国命令が使えない理由、上陸拒否期間の決まり方を整理します。
不法入国は入管法70条1項1号の犯罪である
有効な旅券を持たずに、あるいは入国審査官の上陸の許可等を受けずに本邦に入る行為は、入管法70条1項1号の罪にあたります。法定刑は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はこれらの併科で、同項5号の不法残留と同じ重さです。入国できてしまえば問題は消えるという理解は誤りです。
偽造旅券や他人名義の旅券が加わると何が変わるか
偽造・変造された旅券や他人名義の旅券を用いた場合、入管法違反に加えて文書偽造が問題となり、処分の見通しは明確に厳しくなります。令和7年版犯罪白書(令和6年のデータ)によれば、来日外国人被疑事件の文書偽造の起訴率は59.18%で、全体の33.72%を大きく上回ります。来日外国人被疑事件全体の起訴率44.28%(全体40.38%)と比べても高い水準です。ここでいう来日外国人は、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者、在留資格不明者を除いた定義である点に注意が必要です。
偽造在留カードの所持は別個の罪になる
偽造された在留カード等の所持・提供・収受は、入管法73条の6及び73条の7により、それ自体が処罰の対象です。警察庁の令和7年の統計では、入管法違反の検挙人員3,349人のうち偽造在留カード所持等が191人でした。あわせて、入管法23条は在留カード等の携帯と提示を義務づけており、携帯義務違反は75条の3で20万円以下の罰金、提示義務違反は75条の2で1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金とされています。
不法入国では出国命令を使えない
入管法24条の3の出国命令は、不法残留以外の退去強制事由に該当しないことを要件のひとつとしているため、不法入国・不法上陸で摘発された場合には利用できません。したがって、収容令書による収容を経て退去強制手続に進むのが原則になります。出国命令で出国した者の上陸拒否期間が5条1項9号の2により1年であるのに対し、退去強制の場合はより長い期間が適用されるという点でも、両者の差は小さくありません。
上陸拒否期間はどのように決まるか
退去強制を受けた場合の上陸拒否期間は入管法5条1項9号が定めており、イが1年、ロが5年、ハが10年です。過去に退去強制されたことがある者が再度退去強制されたときはハの10年が適用されます。これとは別に、同項4号は1年以上の拘禁刑に処せられた者を上陸拒否事由とし(政治犯を除く)、5号は薬物に関する法令違反について年限を定めずに上陸を拒否します。5号は罰金でも、外国の法令違反でも足ります。期間が経過していない段階での再入国は、12条1項の上陸特別許可によるほかありません。なお出入国在留管理庁の令和7年の統計では、上陸拒否期間の短縮決定が340件ありました。
在留を続けたい事情がある場合
日本に家族がいるなど在留を希望する事情がある場合には、入管法50条の在留特別許可を検討します。同条2項は収容令書により収容されている者及び監理措置決定を受けた者に申請権を認め、3項は退去強制令書の発付後の申請を認めていません。5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に在留することとなった経緯、在留期間その他の事情を考慮要素として掲げます。不法入国の事案では、入国の経緯をどう説明するかが素行と経緯の評価に直結します。
逮捕直後にご本人とご家族ができること
やるべきことの順序は、供述が固まる前に弁護人と接見し、入国の経緯について事実を正確に整理することです。
- 刑訴法39条1項の接見。立会人なしで打合せができます
- 刑訴法198条2項の黙秘権告知と、同条4項の供述調書の読み聞け・増減変更の申立て。ブローカーへの依頼の有無や認識の有無は、後から書き換えられません
- 通訳の確保。刑訴法175条・178条、自由権規約14条3項(a)(f)は、罪の告知を理解できる言語で受ける権利と無償の通訳を保障します
- 領事関係に関するウィーン条約36条による領事通報・領事接見
- 旅券取得の経緯を示す資料、送金記録、仲介者とのやり取りの保全
よくある誤解を整理する
ブローカーに任せたから自分は知らなかった、という説明だけでは足りません。認識の有無は争点になり得ますが、争うためには経緯を裏づける具体的な資料が要ります。偽造在留カードは持っていただけなら罪にならないというのも誤りで、73条の6・73条の7が所持自体を処罰します。早く帰国したいから出国命令を使いたいという希望も、不法入国では制度上かないません。そして、上陸拒否期間が過ぎれば当然に入国できるわけではなく、上陸拒否事由が複数ある場合や12条1項の判断が必要な場合があります。
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接あたります。外国人事件について、中国語は専属の通訳が常駐しており、その他の言語は事案に応じて通訳人を手配します。偽造文書が絡む事案では、認識と関与の程度をどう記録に残すかが刑事処分と入管手続の双方を左右するため、初期段階から不起訴処分を最優先の目標として方針を立てます。刑事事件と入管手続は一体として設計し、退去強制事由への該当性についても故意や過失を含めて検討します。初回相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
おわりに
不法入国の事案は、入国の経緯という一点をめぐって刑事処分と再入国の可否が同時に決まります。だからこそ、最初の取調べで語られた内容が長く影響します。落ち着いて事実を整理する時間を確保することが、何よりの防御になります。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事のベトナム語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099183/
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