詐欺で立件されたら|起訴率53.4%の罪名と送金型・投資型の争点
2026/09/02
数字から入ります。令和7年版犯罪白書に掲載された令和6年の統計では、詐欺の起訴率は来日外国人の被疑事件で53.35%、全体では51.42%でした。同じ資料で来日外国人被疑事件全体の起訴率は44.28%ですから、詐欺は平均を上回る罪名です。傷害の25.69%や住居侵入の27.36%と比べると、位置づけの違いは明らかです。
この数字が意味するのは、詐欺事件では起訴を避けるための働きかけを早期に始める必要がある、ということです。被害者が複数いる、被害額が大きい、共犯者がいるといった事情が重なりやすく、捜査も長期化します。ここでいう来日外国人とは、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者、在日米軍関係者、在留資格不明者を除いた定義です。
この記事では、送金型と投資型という二つの類型を手がかりに、何が争点になるのか、被害弁償にどのような意味があるのか、そして在留にどう跳ね返るのかを整理します。
詐欺罪の骨格は、欺く行為と処分行為のつながりです
刑法246条1項は、人を欺いて財物を交付させた者を処罰し、同条2項は、同じ方法で財産上不法の利益を得た者などを処罰します。成立には、欺く行為、それによる相手方の錯誤、錯誤に基づく処分行為、財産の移転という流れが必要と理解されています。
この構造を押さえると、争点の所在が見えてきます。どの発言が欺く行為とされているのか、相手方は何を誤信したとされているのか、そして自分がその流れのどこに関与していたのか。関与の位置が変われば、共同正犯なのか、幇助にとどまるのか、そもそも故意がなかったのかという評価も変わります。
送金型と投資型では、問われる事実が違います
送金型と呼ばれる事案では、資金の流れとその認識が中心的な争点になります。海外にいる者から指示を受けて口座を開設した、他人の名義の口座に振り込まれた金銭を引き出して送金した、といった経緯が典型です。ここでは、その金銭が犯罪によるものだと知っていたか、あるいは知り得たかという点が問われます。
投資型と呼ばれる事案では、勧誘時の説明内容が焦点になります。運用の実態があったのか、配当の原資は何だったのか、説明した見込みに合理的な根拠があったのか。単なる事業の失敗と、当初から返す意思も能力もなかったという評価との境目が争われます。
口座やカードを渡した行為は、それ自体が罪に問われます
ここで独立した問題があります。他人に自分名義の預貯金通帳やキャッシュカードを渡す行為は、詐欺の共犯とは別に、犯罪による収益の移転防止に関する法律28条により処罰の対象とされています。通帳等の譲受け、譲渡し、これらを勧誘・誘引する行為が規定されています。
帰国するので口座はもう使わない、友人に頼まれただけ、といった事情があっても、譲渡した事実自体が処罰の対象になり得ます。加えて、その口座が詐欺に使われれば、詐欺の共犯としての嫌疑にも発展します。
争点の中心は、多くの場合が故意です
弁護活動の中心は、認識の内容を具体的に説明することです。知らなかったという主張は、それだけでは通りません。誰から、どのような説明を受け、どのような報酬の約束があり、その説明を信じたことに不自然な点がなかったのかを、資料に基づいて示す必要があります。
取調べでは、刑事訴訟法198条2項により黙秘権が告知されます。供述調書は同法198条4項により読み聞かせを受け、事実と違えば増減変更を申し立てられます。通訳を介する場合は同法175条・178条により通訳と翻訳が予定されており、署名の前に全文の読み上げを求めてください。一定の事件では同法301条の2により取調べの録音録画が行われます。
被害弁償は、金額よりも設計が問われます
詐欺事件では、被害弁償と示談が処分に影響する重要な事情です。もっとも、被害者が複数いる場合、一部の被害者とだけ示談しても全体の評価は限定的になります。誰に、どの順序で、どこまで弁償するのかという設計が必要になります。
また、本人やご家族が直接被害者に連絡することは避けてください。証拠隠滅を疑われ、勾留が続く理由にされます。弁護人が検察官を通じて連絡先の開示を受け、謝罪と弁償を書面にまとめる手順を取ります。返還が難しい場合でも、返済計画を具体化し、家族による支援の内容を明らかにすることには意味があります。
刑事処分が在留資格に跳ね返る三つの経路
第一に、刑罰による経路です。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により刑の全部の執行猶予が付された場合は除外されます。一部猶予でも実際に服する部分が1年以下であれば同様です。詐欺は被害額によって実刑となる可能性があり、この基準が現実に問題となる類型です。
第二に、前科による経路です。罰金や執行猶予であっても前科は残り、在留期間の更新や永住許可の素行の評価、帰化の素行要件で考慮されます。
第三に、時間による経路です。身体拘束が続けば在留期間の更新申請ができず、満了日を過ぎれば同法24条4号ロの不法残留の問題が生じます。また同法22条の4は、当該在留資格に応じた活動を3か月以上行わないで在留していることを取消事由の一つとしています。退去強制事由に該当した場合には同法50条の在留特別許可を求める道があり、同条5項が在留を希望する理由、家族関係、素行、在留期間などを考慮要素として定めています。
よくある誤解
- お金を返せば事件は終わる。弁償は重要な事情ですが、詐欺は非親告罪であり、弁償だけで当然に不起訴になるわけではありません。
- 指示に従っただけだから責任は軽い。関与の程度と認識の内容によって評価が決まります。役割が限定的でも、認識があれば共同正犯とされることがあります。
- 口座を貸しただけなら犯罪ではない。犯罪による収益の移転防止に関する法律28条が対象としています。
- 執行猶予なら在留は安全だ。24条4号リには但書がありますが、身体拘束中の在留期間の満了や、22条の4による在留資格の取消しは別の問題として残ります。
今できること
- 契約書、送金記録、通信アプリの履歴、勧誘に用いられた資料を保全する。削除された記録の復元は容易ではありません
- 関与した経緯を時系列で整理する。記憶が新しいうちに書き出しておくことが後の説明を支えます
- 弁護人は刑事訴訟法39条1項により立会人なしで面会できます。勾留の理由に納得できなければ、同法82条以下の勾留理由開示を請求できます
- 領事関係に関するウィーン条約36条により、希望すれば本国領事館への通報と領事面会を求められます
- 在留期間の満了日を確認し、更新の時期を把握しておく
当事務所の対応
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見と打合せに直接対応します。中国語については外国人事件専属の通訳が常駐しており、その他の言語については事案に応じて通訳人を手配します。警察庁の令和7年確定値によれば、来日外国人の総検挙人員12,777人のうち中国国籍は2,062人で16.1%を占めています。
詐欺事件では、起訴率の高さを前提に、初期段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標として活動します。関与の程度と認識の内容を具体的に示すこと、被害弁償の設計を早期に立てることが中心です。あわせて、刑事事件と入管手続を一体として設計します。刑事の供述調書が違反審査や口頭審理の資料になるため、退去強制事由の該当性についても故意や過失を争う視点が必要になるからです。初回相談は無料です。微信(WeChat)ID matsumura1119 でもご連絡いただけます。
最後に一言
詐欺事件では、事実関係が金銭の流れとして記録に残っています。記録は不利にも有利にも働きますが、こちらから説明の枠組みを提示しなければ、捜査機関の描いた図面だけが残ります。何を、いつ、誰に伝えるかを設計することが、この類型の弁護の中身です。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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この記事の簡体字中国語版はこちらです:https://matsumura-lawoffice.jp/blog/detail/2026099177/
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